モヤッとする翌日、東京オリンピック2020開会式が露呈したもの、僕たちはそれらを噛み締めて前を向いていかないといけない
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モヤッとする翌日、東京オリンピック2020開会式が露呈したもの、僕たちはそれらを噛み締めて前を向いていかないといけない

「とにかく始まったんだから、純粋にアスリートのパフォーマンスを楽しんで勇気をもらおうよ」「現場で汗をかいて頑張って開催にこぎつけた人達を今批判してどうするの?」

その気持ちは、僕の中にもあり、書く手が止まる。ネット情報も錯綜する中、オリンピックや政権批判を書く事に、炎上や偉い人を怒らせるリスクこそあれ、何のメリットもない。

でも、今ここで、今回の一連のオリンピック大会準備が露呈したことを総括しておくことは、大切なことだと思う。今日しかかけない、競技が本格的に始まる前に、今日日本人に読んでもらうべきことを書こうと思う。それは、

今回の開会式が世界に発信した「日本」とは一体なんだったのだろうか。

ということだ。

ビジョンがない、世界へのメッセージがない日本

2016年夏のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式の演出映像は、クールで新しい日本と東京を感じさせるものだった。是非まず改めて見て欲しい。

「日本はもう一度立ち上がれるかも知れない」と思わせてくれた映像だった。

そして、昨晩の開会式の多くの人の感想は、どうだろう。

「メッセージがなかった」

日本は、これからどういう国になっていきたいのか、そして世界をどう変えていきたいのか、がない。

MISIAの国家斉唱は新しい形の「君が代」を確立した。数々のゲーム音楽に鳥肌が立った今は中年の元子ども達もいると思う。年老いたON(オーエヌ、巨人軍の往年の王貞治と長嶋茂雄)が聖火を持って歩いている姿を見て感動した高齢者もいるかもしれない。

ただ「安全安心」「コロナに打ち勝った証」のような空疎な言葉しかない菅総理の言葉を象徴するように、「多様性と調和」というキーワードを表層的になぞった感動と驚きのない個別のコンテンツが続く。11時過ぎてもたくさんの子供達がパフォーマンスしていて大丈夫かと思う。

天皇陛下の宣言が始まっても、疲れ切った顔でボサッと座っていた菅総理の様子は「やはり立ち上がれない日本」として世界に配信された。

気候変動、ウイルス、低成長と経済格差、高齢化、全ての国が共通に抱える危機に日本はどう立ち向かうのか、ビジョンを再構築できていない今の日本を、端的に表すものとなってしまっていた

気心の知れた偉いおじさん仲間で仕事を回す

開会式の演出チームは、解散辞任が続き混乱が続いた。

組織委員会の体質に愛想を尽かして辞めていった人は多い。エンブレム問題の処理にあたり、改革チームを率いていた豊田章男氏が、根深い組織委員会の体質に見切りをつけたのは5年以上前だ。

現場の組織委員会関係者も認める、様々な「天の声」による現場への介入。

真相は、もちろんわからない。

昨年の6月に開会式演出チームの3人目の執行責任者としてアサインされたMIKIKO氏が、同年の秋ごろから本人の意向確認なしに静かに外された。後からその事実を知った本人が抗議の上、11月に辞任をしている。

社命を背負っている高田は、次第に、現場を管理・監督するようになり、MIKIKOを排除し、佐々木を全面に出していく。昨年11月、彼女は辞表を提出することになるのだが、その前の10月16日に、自らに降りかかった出来事を克明に記したメールを電通幹部に送っていたそうだ。そこには、「高田さんより、『今までの労いと共に、佐々木さん体制の報告を会長の口から受ける』と伺ってトリトンに出向く」とある。そこで森会長はこう告げたという。「引き続き、オリ開会式はMIKIKOさんにお願いしたい」。佐々木体制への変更を覆すような発言をしたというのである。同席していた高田は、訝る彼女を別室に連れて行って驚くべき発言をした。「森会長はボケているから、今の話は事実と違うから」と、佐々木体制で行くと念押しされたそうだ。電通幹部の説明だと、森会長はMIKIKOの能力そのものは買っていた。だが高田は、佐々木ならば意のままに動かせるし、電通の利益にも適うから、森発言をなかったことにする必要があったというのである。
〈去年の6月に執行責任を任命され、全ての責任を負う覚悟でやってきました。/どんな理不尽なことがあっても、言い訳をしないでやってきました。それを一番近くで見てきたみなさんはどのような気持ちでこの進め方をされているのでしょうか?/(略)でも、またこのやり方を繰り返していることの怖さを私は訴えていかないと本当に日本は終わってしまうと思い、書きました〉(MIKIKO氏 電通関係者10名へのメール)

このやり方、というのは、おそらく現場不在で、一部の上層部の意向でコンテンツを作っていくやり方、そして怖さとは心あり才能あるクリエイターが、忸怩たる思いで、去っていく状況を指すと思われる。

「もし時間が巻き戻せるなら、このコロナ禍のセレモニーで、何を伝えるのか、何が出来るのかを全員で話したかった」オリンピック・パラリンピックのプロジェクトをサポートして下さっていたある尊敬するスタッフの方の言葉です。(MIKIKO 3/26 ツイッター)

MIKIKO氏の演出で「新しい世代の日本の世界観」を出し切ったほうが、グローバルには共感を生んだはず。

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電通佐々木氏も不幸な役回りだ。本人も認める通り大規模国際イベントの演出と企業CMの広告は異なる。

「五輪のセレモニーで広告の人間に声がかかるという話は聞いたことがない。だから最初は驚きました。でも、組織委員会から『このセレモニーは2020年の東京大会の予告編なんです』と言われて。予告編=広告ということでお声掛けいただいたのだと理解できました。予告編なら、普段はCMをつくっている自分にも何かできるかもしれないと」(「宣伝会議」ブレーン2016年12月号)

それが森総理と同じマンションで家族ぐるみの付き合いの入社同期の電通代表取締役副社長に頼まれ、延期後急遽「緊急チーム」の責任者として登用される。もうほとんど予算は一部設備まで作り始めていたMIKIKO案で使った後なので予算はほとんどない。MIKIKO氏の世界観はIOCには共感を呼び伝わっていた。2020/7/23のコーツ委員長来日時の1年前プレゼンでIOCはMIKIKO案を絶賛している。「MIKIKOさんのプレゼンされた企画書の絵を使い、縮小したりしながらIOCに提案」(佐々木氏)しても、MIKIKO氏の「世界観」を理解していない佐々木案は、IOCには7/23からの劣化版にしかみえず反応しない。クリエイターにとっては、部分の「絵」よりも全体の「世界観とメッセージ」が全てだという事は、佐々木氏もクリエイターなら理解できたはずだ。佐々木氏は、自らのオリジナル提案を次々と否定するIOCの反応にショックを受けたようだ。なぜ、リオの閉会式の国民と東京の開会式のIOCの共感を呼んだ「執行責任者」を黙って外すというような対応しかできなかったのか。

(公平性の観点からも、佐々木氏からの見方を下記に添付する。特に「追記」において、延期で予算がないなか各方面の調整に苦慮する佐々木氏の気持ちが伺える)

強力な人材を集めようにも若手の優秀なクリエイターは、電通と組織委員会とMIKIKO氏の一件は聞いているから、全力で泥舟から身を引いたのかもしれない。

また日本よりも海外市場を中心に展開している企業は、日本のムラ社会の論理よりも、グローバル世論の反応を注視する。

リオの閉会式の安倍マリオで「日本=スーパーマリオ=任天堂」というくらいフィーチャーしていた任天堂も、キャラクター、楽曲含めて開会式に一切出てこない不自然さも様々な憶測を呼んでいる。

トヨタは世界で配信しているCMも配信せず、開会式参加も見送り。

結果、電通佐々木氏が声かけられる古くからの付き合いの「昭和の日本のおじさん達」でやりきるしかない。小林賢太郎氏が手掛けるコント集団「カジャラ」に所属している関係から「なたぎ武」が参加した寸劇。残念だが、TVレポータと局ディレクターとの掛け合いは内幕受けにしかみえず、笑うところがわからなかった。

この状況で、身辺調査等やっている余裕はなかった、のだと思う。大昔の事で一部ネットで炎上しているからなんだと。

だが、その後「昭和おじさん達」のチームは、佐々木氏本人も含めて、完膚なきまでに燃え上がっていく。

まず本人、

70億人に自分の曲を披露する立場から、5日で人生が一変した小山田圭吾氏

絵本作家のぶみ氏

そして、20年以上まえのコントの10秒のセリフで開会式前日に解任が決まった小林賢太郎氏

カオスでしかない。

人権、多様性への認識、弱者への配慮、国際感覚が欠如する日本

個人的には、SNSが生んだあまりに寛容でない「著名等の特定対象の発言・行動を糾弾し排除しようとする動き」(キャンセル・カルチャー)と、ポピュリズム政治の過剰反応の組み合わせには思うところがある。

何十年前の過去のビデオの内容などについて、匿名情報に大臣が反応し海外機関に事実確認も調整もせずに連絡し、国家的イベントの責任者が数時間後に解任されるというのは異常だ。

但し、炎上の言葉をみると共通点がある。

佐々木氏は、豚にかけて「オリンピッグ」などと書き、豚の絵文字まで使って渡辺が豚に変身する演出案を送っていたが、チーム内の批判を浴び、撤回に追い込まれた。

 そもそも佐々木氏の提案に対し、真っ先に〈容姿のことをその様に例えるのが気分よくないです〉と反対意見を述べたのは、グループでただ1人の女性、MIKIKO氏だった。彼女の発言が、侮辱演出案を未然に防いだのは間違いない。(週間文春 電子版)

小山田氏は、小学生時代の行為そのものより暴行犯罪に近い虐待の「企画をしていた事」をメディアで自慢げに喧伝していた人間性が深く疑われている。

のぶみ氏も、遊びにも目もくれず、献身的に子育している母親を賛美する歌詞や教師へのいじめ体験、等が過去にもネットで炎上していた。

小林氏も「言葉選び」の間違いを認めて謝罪しているが、歴史のグローバル化のなかで、ホロコースト、アパルトヘイト等、人種差別や民族差別は許容されないのが国際合意だ。「タブーを笑いに変える芸風」のお笑いネタとはいえ、発覚したらこのテーマは擁護できない。

90年代の日本の特に芸能界、放送業界はこういう風潮が許されたという話だし、今問題にしなくてもという話かもしれない。

非公開のLINEグループでのやり取りで直ぐに撤回したアイデア、過去の一つのブラックユーモアネタの一部の10秒、マイナー雑誌のインタビューの一言、それらがここまで炎上する理由は、

その迂闊な一言を冗談でも発してしまう人物の人間性への生理的な嫌悪、そしてこれまでは許されてきたことでも今後は許さないという強い国民感情があると思う。SNSは単なる加速増幅装置であり、根底にある感情抜きには炎上しない。

日本のおじさん社会における「社会的弱者に対する眼差しの致命的な欠如」これらが嫌悪の根底にある。

やはり問題なのは、五輪という平和式典の主要クリエーター陣に「五輪憲章」理解していない?おじさん達しかアサインできなかった、ということが炎上、辞任、解任騒動の本質だろう。

前を向いて「こうなるはずの日本」に変えていかないといけない

上記の関係者以外にも猪瀬元都知事、デザイナーの佐野研二郎氏、竹田恒和JOC前会長、舛添前都知事、森元総理全組織委員会会長、安倍前総理、関わった多くの人が退任に追い込まれた呪われた東京オリンピックだが、このような事は過去のオリンピックにあったのだろうか。

但し橋本聖子組織委員会委員長は、当初はセクハラ疑惑が懸念されたものの、バランス感覚、判断力、胆力を発揮して仕事をこなしていると思う。IOCと政府の板挟みのポジションでの交渉と調整、次々と起きる不祥事への対応と厳しい釈明会見、森元総理(84)や口の軽い川淵氏(84)で対応できたのだろうかと、思う場面も多かった。

おそらく3月に組織委員会の会長を引き受けた時、気持ちが日本の政治家から切り替わり、過去7回出場したオリンピアンとしてオリンピックを開催、成功させることだけを祈ってブレなかったからだと思う。

また、日本での活躍より世界での活躍が眩しい大坂なおみ選手が、最終の聖火の点火者で納得した人も多いと思う。

グローバルな存在でブレない女性はかっこいい。

国威高揚と自国のテレビアピールはもう古い、ダサい。

團十郎の襲名だ、相撲だ白鳳だ、火消しと木遣りと江戸の伝統文化の世界発信だという政治から要望は多くあったらしい。

が、自分の国の国威高揚とその「モノ」を映像でアピールする政治家とテレビ局の発想はもう古い。

大切な「コト」は、共感を生むコンセプト。

それさえあれば、観た人が勝手に検索して映像情報を探し、仲間にシェアし広がっていくのだ。

今や、世界は一つになろうとしている

コロナ禍、気候変動、格差社会、危機の時代が来ることを認識して、若者世代を中心に世界は再び一つになろうとしているのだ。一つにならないと、地球は世界は壊れてしまう、そのメッセージを日本が出す、最大のチャンスだった。

唯一の被爆国、戦争から立ち上がった平和外交の日本、温暖化で世界中で増え続ける洪水等の自然災害に立ち向かう日本、そしてコロナを人々の自粛行動で感染者と死者を最小限に抑えている日本、危機に立ち向かう日本として、世界が共感するメッセージはたくさんあったはず。

相撲、歌舞伎、フジヤマ、ゲイシャという海外のオールドステレオタイプの日本という要素を削ぎ落とし、ゲーム、アニメ、ダンス、という世界中の次世代を興奮させる共通文化に、クールにジャパンという見えない要素を入れ込み、未来志向の日本をさりげなく表現する。それが、MIKIKO氏の開会式の案ではなかったか。

MIKIKOさんも「伝統と現代性は二律背反ではない」と話す。「外国の方がPerfumeに惹かれるのも、彼女たちの一糸乱れぬダンスの規律性と調和に“目に見えない”日本らしさを感じるようなんです。今回は歌舞伎の早替えを入れたり、現代的な表現に伝統の技を掛け合わせる手法を用いたいと考えました」

一夜明けて、並行世界を夢想する私達(特に若い世代)の中には、「こうなるはずだった」開会式…と思っている人は少なくないと思う。

開会式の準備と当日に現れた古い日本の苦々しい部分を噛み締めて、前を向いて「こうなるはずだった開会式」のように「こうなるはずの日本」に変えていかないといけない。

これからの2週間に繰り広げられるであろう、数々のアスリートのプレイに感動する前に、書いておきたかったこと。

P.S. 政府会見、メディアの報道等を鵜呑みにせず、自分で必要な情報を判断する知的生産の方法について。ご参考まで。


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投資家、Great Journey LLC代表(https://www.greatjourney.ltd/) Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官等