モノを売らないキャンペーンが届ける「らしさ」の重要性
先月とてもユニークなキャンペーンを"よなよなエール"をはじめとするクラフトビールが人気のヤッホーブルーイングが発表しました。
そのキャンペーンとは10年後・20年後に発売するビールの予約ができるという内容になっています。
通常であればキャンペーンはより多く商品を売るために実施されます。ビールメーカーであれば、缶ビールに付いているシールを集めて応募するとお皿やグッズなどがもらえるキャンペーンなどを目にする機会が多いのではないでしょうか。実際私もたくさんビールを飲んでシールを集め応募したこともあります。
しかし、ヤッホーブルーイングが今回実施した"約束のよなよなエール"キャンペーンでは現時点での売り上げを上げることが目的になっていません。とてもユニークなキャンペーンだと言えます。
今回は、この"約束のよなよなエール""約束のよなよなエール"キャンペーンについて考察したいと思います。
モノを売らない"約束のよなよなエール"キャンペーン
キャンペーンページを見てみると予約方法として下記のメッセージが書かれています。
予約方法は
大切な人と未来の
約束をすること
わたしたちは約束が未来を楽しみにすると信じています。
その約束が叶った時に乾杯できるように
10年後と20年後のビールを限定発売することにしました。
そしてその後に下記のメッセージが続きます。
「約束のよなよなエール」
このビールは、ECサイトで予約はできません。
「大切な誰かと未来の約束をすること」が予約になります。
そうなのです。このキャンペーンは10年後、20年後のビールを「予約」するという内容なのです。
そしてその10年後・20年後の「約束」を保存するために、手紙を入れることのできるタイムカプセル缶を応募者2,000名にプレゼントしました。
大きな反響
こちらのキャンペーン、ヤッホーブルーイングの公式Twitterを見ると応募を開始したのが、8月18日の午前8:18でした。そして、この発表からわずか4時間弱後の午後2:06には申し込みが2,000名に達したとTweetしています。
これはおそらくヤッホーブルーイングとしても予想以上の反響だったのではないでしょうか。
そして熱量が冷めやらぬその日の夜中には抽選で1,000セット分の申し込みを再開したのは流石の対応でした。
キャンペーン成功の要因
このキャンペーンはある意味10年、20年と続いていくわけですが、スタート時点としては大成功だったと言えるでしょう。ではなぜこの「売らない」キャンペーンは多くの人々の心に響くキャンペーンとなったのでしょうか。
日頃からのファンづくり
ヤッホーブルーイングは以前よりファンとのつながりを大切にする活動を続けています。
先日放送されたテレビ東京のカンブリア宮殿という番組でヤッホーブルーイング が特集されていましたが、その中で井出社長はこのように仰っていました。
ヤッホーブルーイングはお客様、製品のファンとの関係づくりをとても大切にしてきました。ヤッホーブルーイング コンシューマー事業部門 事業統括
望月卓郎さんはネットショップ担当者フォーラム 2021の中で下記のように語っています。
ヤッホーブルーイングは2015年からファンイベント「超宴」を開催しています。最初は500人規模(それでも十分すごいですが!)だったイベントは数年で5,000人規模にまで増えたと言います。超宴の最大の特徴は、ヤッホーブルーイングのスタッフとファンがフラットにコミュニケーションを取れることにあると思います。コミュニケーションを通じてファンのエンゲージメントは高まり、ファンが友人に口コミで製品やブランドを広めていく原動力になっているのです。
コロナ禍に入ってからもオンラインを活用し「おうち超宴」を開催しファンとのコミュニケーションを継続しました。また、現在では「よなよな月の道楽座」というビールについて学びつつ交流も生まれる完全配信型セミナーを無料で提供しています。
「らしさ」の重要性
今回の「約束のよなよなエール」のキャンペーンを知った時、私は最初に「これはヤッホーさんらしい!」と感じました。
この「らしい」という感情を生めるかどうかはサービスや商品のブランディングにおいてとても重要な要素となります。「らしい」と感じてもらえるということは、そのサービスや商品がどのようなことを大切にし、お客様に伝えたいことを丁寧に伝えてきたこと、そしてそれをお客様が受け取ってくれていることを示します。
この「らしさ」が伝わっている状態だからこそ今回の「約束のよなよなエール」のキャンペーンはファンにしっかりと届きました。そして、ファンが口コミで広げていくことで、ヤッホーブルーイングの「らしさ」が新たなファン候補にも伝わっていったのです。
今回のキャンペーンの最大の成功は「ヤッホーブルーイングらしさ」がファン以外の多くの人に伝わったことではないかと考えています。
日頃からファンコミュニティやビジネスコミュニティの醸成を通じて、自分たちが大切にしていることをお客様に伝えていくことが、ファンのエンゲージメントを高め、サービスや商品の「らしさ」を形成していきます。「らしさ」を意識し、伝えていくことがサービス、商品のコアバリューになっていくのです。
まとめ
ヤッホーブルイング の日頃からのファンとのコミュニケーション、交流を大切にし、ファンコミュニティを丁寧に形成してきたこと、その姿勢こそがヤッホーブルーイング「らしさ」であり、新たな施策を展開した時に、広がりを生む重要な原動力となっています。
モノを売らないキャンペーンが今回人々に届けたコトは、人と人のつながりの大切さであり、ヤッホーブルーイングがこれまで築いてきた「らしさ」、つまりブランドなのです。
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