経団連が電力システムの再構築に向けた提言を正式に発表したと日経新聞が伝えている。「日本は電源の8割を二酸化炭素を排出する火力発電に頼り、国際的にみると電気料金も高い。温暖化ガスを削減する政府目標の達成に向け、再生可能エネルギーを伸ばすための送電網の整備や、原子力発電所の再稼働を提言の柱に据えた」とある。

エネルギー問題は日本にとって最重要課題の一つである。資源がないのに、電力消費を減らすことが難しい生活スタイルにある以上、電源を確保しなければならない。一方で、ESGやSDGsの観点からCO2の排出が続く火力に依存することは、世界の投資マネーの潮流から見てもそぐわないことも確かである。

原子力より再生エネルギーを推進するべきかどうか、再生エネルギーのほうが安全だとしても支払う料金とのバランスは取れるのかどうか、原子力の安全性はいかに担保するのか。現在のように原子力発電所やそれに携わる人々を生煮えの状態に放置していることは、宝の持ち腐れでこそあれ、何も生み出さない。

エネルギー政策を見ると2030年時点で再生エネルギーの電源構成比率22-24%だが、原子力も同20-22%である。2050年時点の電源構成比率は示されていないが、温室効果ガスを80%削減するという目標の中、脱炭素化は命題としている。すなわち、火力から他電源へのシフトが必要、ということは決まっているのである。

その割には火力依存が現実であることには矛盾を孕む。この矛盾に対してしかしながら声をあげることが難しいのがエネルギーでもある。原子力推進はどうしても世論の賛成が得難い面があり、地方統一選挙や7月の参院選を考えると政治家も推進し難いのが現実である。メディアのトーンもこれに同一と言える。経団連の発言はその意味で、重要な一石を投じている。

資源のない日本にとって、どういうエネルギー政策を持つべきなのか。原子力を選ばないのも一つの戦略だが、その場合いくらの資金が追加で必要になるのか。安全と経済合理性を考慮した上で日本国として電源シフトをどう行っていくのか。エネルギー政策を掲げる以上、具体的な道筋としての施策を、国は示す必要がある。

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