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内と外とを分けるのは無意識のバイアスだ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

※ 本記事は日経朝刊 投稿募集企画「#外国人社員に何を期待しますか」への寄稿です。

わたしは40歳にして初めて米国本社のグローバル企業で働くことになりました。それまでは海外留学も在住も経験がなく、日系企業で東京で働き、国外にはたまに出張にいく程度でした。

それから3年半が経ちました。この期間は毎日が人生初の経験の連続で、多くの学びがありました。

■ 外国人ってなんだろう?

一番の意識の変化は「外国人」という認識がなくなったことでしょう。と、同時に、外国人(foreigner)という言葉自体を使うことがほぼなくなりました。なぜかというと、それぞれが異なるバックグラウンドを持っており、何をもって「外国人」なのかがよくわからなくなったというのが正直なところです。

いまわたしが働いている日本オフィスでは60人ほどの社員がいますが、国籍で言えば10カ国以上、言語で言えば英語が母国語の人、英語・日本語どちらも母国語ではない人、日本国籍だけど海外にいた期間のほうが長い人など様々です。日本以外の同僚の場合はもっと多様で、働くためその国に引っ越してきた人、永住権を持っている人、両親が移民でその2世の人など、他にも多様な理由によりその場所で働いています。

もちろん、国籍や永住権の有無を持って「内国人か外国人か」を判断するのであれば可能かもしれません。しかし、日常業務においてそれを意識することはありませんし、それによって何かが変わることもありません。あるとすれば、世間話の中で「どこ出身なの?」と話すくらいでしょう。なので、一言で「foreigner」とタグ付けすることは不適切と感じるようになり、そのような表現が求められる局面では「He/She is from XXX」のように言うようになりました。

■ 外国人は英語が話せる?

同じような話では、日本人でない人=英語話者というバイアスもあります。グローバル企業で働いていると、実は英語ネイティブの人は多数派ではないことがわかります。あまりに多様なので共通言語を英語にしているというだけです。当然発音に関しても多種多様ですので、初めは会議についていくのが本当に大変でした。日本の英語教育はアメリカ英語を中心としているため、わたしもイギリス英語に馴染みがありませんでした。

入社してすぐの同僚のひとりが、イタリア出身でロンドン・オーストラリア勤務経験の長い方だったのですが、彼はイギリス訛りかつオーストラリア訛りのある(私からすると)独特の英語でした。会話の中でいつも「ヘア、ヘア」というので「なんでこの人は髪の話をしているんだろう。ロン毛が珍しいのかな(ちなみに彼はスキンヘッド)」と思っていたら、「Here」と言っているだけだったという冗談のようなことがありました。終始そんな感じです、グローバル英語。

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話を少し戻しましょう。国立国語研究所の調査によると、日本に定住している国外から来た方が理解できる言語として、日本語は62.6%、英語は44%という結果があります。つまり、外人=英語が話せるというのは正しい認識ではないことがわかります。

世界には、137の国・地域において、約365万人の方々が日本語を学習しています(国際交流基金 2015年度「海外日本語教育機関調査」)。
また、定住外国人が理解できる言語として、「日本語」は62.6%、「英語」は44%という調査結果が国立国語研究所より示されています。日本に定住する外国人は、約230万人(2016年法務省統計)で、訪日外国人と共に増加傾向です。

道であまり上手とは言えない日本語で話しかけられた場合に、どうするか。いきなり英語で返すのは得策とは言えません。第二外国語を勉強する苦労はわたしたちもよく知っているはずです。まずはそのことに敬意を払う意味でも「やさしい日本語」で返すことを心がけたいですね。

感覚としては小学校高学年くらいの教科書を意識する感じでしょうか。NHKのWebサイトには、やさしい日本語でニュースを伝えるページがありますので参考にしてみるのもよいでしょう。

■ 自身にある「無意識の思い込み」に気づく

これまでお話したことをまとめると、人はなんらかのバイアス=無意識の思い込みを持っている、ということです。「あのひとは外人だから」「外人なのに英語が話せないの?」など、少し落ち着いて考えればこのような例は一部の例を極端に一般化しているに過ぎないことがわかるでしょう。

この記事のテーマである「#外国人社員に何を期待しますか」に応えるとすれば、日本人だけの職場に多様性が足されることで、自身の中にある無意識の思い込みに向き合うきっかけになるだろうと思います。

それと同時に、外国人社員に対しても「#日本人社員に何を期待しますか」という問いを投げかけたいと思います。きっと「日本人だけで集まって日本語の会議をしないでほしい」とか「自分にどのような成果を期待しているかをしっかり言ってほしい」など、たくさんの意見がもらえることでしょう。

このような思い込みは、適切なトレーニングを受けた上で日々意識することでかなり減らすことができます。以下にeラーニングのコースをリンクしておきますので、ぜひ多くの方に視聴してほしいと思います。

■ ダイバーシティは経営の本丸に

ジェンダーのみならず、ダイバーシティ&インクルージョンが注目されるようになって久しいです。わたしはD&Iこそがいまの日本企業に大きく不足しているものの1つであり、経営者自らが深くコミットして取り組むべき課題だと考えています。

今週末からプライドウィークですが、それを前にしたインタビューを受けましたので紹介させてください。多くの経営者の方が、思いやりをもって行動に移してくれることを願っています。

──企業のD&Iが進むと、経営目線では何が変わりますか。
経営としては意思決定の質が確実に変わります。
日本の人口比率は、男女ほぼ半々。それなのに現在の日本企業の意思決定層の9割以上が男性です。
これで質の高い意思決定ができるはずがありません。
現実世界でビジネスをするのなら、まず企業の意思決定層も現実世界の多様性に合わせるべきです。
多様なバックグラウンドを持つ人が意思決定のプロセスに入れば、その質は確実に向上します。
意思決定の質が上がれば、業績も上がる。業績が上がれば、社員の給料だって上がります。
企業がダイバーシティを経営のど真ん中に据えるべき理由は、実はとてもシンプルだと思いませんか。

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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #外国人社員に何を期待しますか

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