消費しないで貯蓄ばかりの「気持ちの景色」を変えないと
消費支出の低迷が続く。
とはいえ当然で、そもそも実質賃金もマイナス。
賃上げだのなんだのと言っても、物価高に追いついていないし、その賃上げとて、大企業勤務などの上位層はウハウハかもしれないが、中間層以下にどれほど恩恵があるのか。
キャベツ1個500円以上なども話題になったように、とにかく食品の物価高が止まらないので、そら節約というか消費支出は減るでしょう、と。
消費支出全体に占める食費の割合をエンゲル係数というが、これが高くなるということはそれだけ国民が貧しくなっていることを示す。食費は最後まで削れないから。
当然、エンゲル係数は上昇しているのだが、収入が減ったから上昇しているのではなく、収入はむしろあがっているが、それ以上に食品の物価があがっているので、同じ量だけ買ってもエンゲル係数はあがってしまう。なんなら今起きているのは物価が高いから食費を節約しているのにもかかわらずエンゲル係数は上昇している。
そして、そうした節約せざるをえない不安な心理が増せば、皮肉なことに、貯蓄が増えてしまう。不安がゆえにお金を使えなくなるからだ。
エンゲル係数の上昇と貯蓄率とは完全に一致する。
使うのは食費だけ、あとは貯金。経済としてはこれは最悪で、いくら金貯めたって使わなければ経済は回らないし終わるんだがねえ。あの世にまでお金は持っていけないんだから。
たとえば、旅行とか衣服とか遊びとか、食費以外のこれらの消費が減るということは簡単に言えばこれらの業種で仕事している人の給料があがらないということ。するとその人たちもまた消費しなくなる。悪循環の完成。
経済というのは誰かの消費が誰かの給料になるということであり、不景気というのは消費が減ることに尽きる。
消費が減るのはかなり気分による。金を持っていても不安なら消費しなくなる。逆に、今手元に金がなくても将来の不安がなければローンやクレジットで人は消費する。
恋愛も結婚も出産ももはや生産活動ではなく消費活動の一種として取り込まれているので、婚姻や出生が増えないのも心の不安の問題。
勘違いしちゃいけないのは「じゃあ結局心の持ちようじゃん」てことではない。そんな精神論なんかじゃどうにもならない。心の余裕の前提が経済の安定だから。それがなきゃ何も始まらない。
大事なのは、その不安(人によって不安を抱くのはバラバラなので金額の絶対値ではないが)を感じないレベルの今と将来の経済環境を整えること。そのためにも、「今までずっと手取り減ってきたけど増やすよ」という声は大事。
そういうことはずっと言い続けているので、私のフォロワーさんにしてみれば耳タコの話かもしれないが、まだまだ知らない人も多いので、初めて読んでもわかるようにわかりやすくまとめて書いた記事が以下である。
おかげさまで沢山読まれて反響も大きいのだが、(僭越ながら)これだけかみ砕いて説明してもわからない奴にはわからないようで、相変わらずクソリプも来る。
それはいいのだが、根本的に何言ってんだ?みたいなのがあって呆れる。
それの最たるものが「手取りを増やすと社会保障の質が下がる。それは将来の貯えのない下位層がより苦しむ」とかいう理屈。
もう一度いうが「何言ってんだ?」
社会保障の財源は一部が税金や保険料から供給されている。それはその通り。だが、手取りを増やすこと則ち社会保障費の削減などという直接的な因果関係になるわけではない。
国民の社会保険料の負担を軽減しつつ、税収を他の方法で確保する政策も考えられるわけで、政治の役割はまさにそこにあるわけ。減税と同時に、社会保障制度の効率化や、不必要な支出の見直しにより、手取りを増やしつつ社会保障の質を保つことは可能なのよ。どっちかしかできないわけじゃない。
たとえばこども家庭庁の予算とかあんなに本当に必要なのかという議論はすべきであり、電通とかなんちゃら総研とか変なNPOに沢山の中抜き金が流れてるだけじゃないのというチェックも必要だし、他にも潰れそうな大学への補助金とか、単なる官僚の天下りの確保であって不要なんじゃないのとか、私立の無償化なんて不要では?とかいろいろある。
そんなすぐにでもできる無駄の削減を政府がなんでやらないかっていうと、もうガチガチのズブズブの政治家と官僚の利権構造になっているからなんだけどさ。
但し、旧民主党のような事業仕分けみたいなことを言いたいのではない。無駄な支出のチェックは本筋じゃなく、本質的には、前半にも書いた通り、経済の活性化が一番。だから減税なんですよ。
岸田さんの時のようなたった1回の減税では意味はない。恒久的に減税がされることで、その分毎月確保されるわけだからそこでやっと消費に回す心の余裕が出てくる。消費が増えれば当たり前だが経済は成長する。GDPの6割は消費なんだから。
消費が増えれば巡り巡って税収が増え、企業の利益も増え、給料もさらに増え、また消費が増えるという好循環になる。
逆に言えば、消費が増えなきゃ税収も増えないし、社会保障を支える経済基盤が先に崩壊する。だから手取り増は今は正しいのよ。
但しあくまで今はね。経済は緊縮ばかりやってたってしょーがない。時に積極、時に緊縮のバランスが大事なのに、政府はずーっと緊縮ばかり。
消費もひとつの行動だから、行動が増えることは一人一人の意欲も増すということ。多くの人がそれぞれの生活、それぞれ使える範囲内で消費することで全体の気持ちがあがる。それが景気(気持ちの景色)が良いってことなのです。
そうなれば、若者の恋愛や結婚への行動も喚起されるかもしれない。
少子化も人口減も不可避な中で、将来の社会保障を持続的なものにするためにも、今は消費喚起こそが必要。