クラウン、カローラをコネクティッドカーにする、トヨタの本気
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32247590W8A620C1000000/?n_cid=NMAIL007
先日、トヨタを代表する2車種「クラウン」と「カローラ」の新型が発表された。驚きだったのは、新車発表では珍しく豊田章男社長が姿を見せたこと、そして伝統的な2車種を主要戦略である「コネクティッドカー」搭載車としたことだ。
日本や米国、中国では多目的スポーツ車(SUV)の人気が高まり、乗用車は逆風だ。さらにコネクテッドカーは通信機のコスト、4年目以降はサービス利用料が消費者の負担になる。それでも伝統的な2車種を「初代コネクテッドカー」として投入した背景には「車をつくる会社から、世界中の移動にかかわるあらゆるサービスを提供するモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」(豊田社長)という長期戦略がある。クラウン、カローラの伝統的な2車種の刷新に合わせたイベントは、顧客との接点や新サービスを生み出す源泉になるデータにこだわる姿勢を映す。
このことは、トヨタとして本気で取り組むという覚悟を表明することに他ならない。世界的に見るとカーシェアリングやUBER・Grabといったスマートモビリティが伸びており、自動車を所有することの利点が以前より低下している。特に、都市部・若年層においてはその傾向が顕著であると思われる。自動車メーカーに逆風が吹く中でどのような価値を提供していけるのかが問われている。
コネクテッドカーはGMや独BMWが販売を拡大し、グーグルやアップルはスマホを車載システムと連携し、個人の好みのアプリを車内で体験できるサービスに力を入れる。走行データや運転手の行動も把握できるのが自動車メーカーの強みだが、スウェーデンのボルボはグーグルとコネクテッドカー技術の開発で連携する。中国の電子商取引大手アリババ集団も米フォード・モーターと同分野で提携するなど競争は激しい。
コネクティッドカーは広義には「IoT」の一種であろう。つまり「スマホ化する自動車」である。従来の電話とスマートフォンで何が違うかというと、1つに「インターネットへの常時接続性」。もう1つが「利用者自身がアプリケーションを選択しカスタマイズできる」ことだ。OS(基本ソフト)自体も継続してバージョンアップされ、購入後も機能が増えたりする。事業者側から見るとこのような継続的な接点を消費者と築けることが革新的であり、売り切りに最適化された商品開発・販売の仕組みを大きく変革する必要がある。まさに、トップダウンでのイニシアチブが必要不可欠である。
IoTにより世の中はどのように変化していくのであろうか。キーとなるのは「データ」である。
AIや機械学習によりこれまでになかったような革新的なサービスが生まれ始めている。これは、インターネットの普及により効率的に大量の学習データを得られるようになり、また十分なコンピューティングパワーとアルゴリズムがそれを支えることで可能になった。ぎゃくせつ的にいうと、現状では「データになっていないものにはAIは適用できない」とも言える。
IoTの普及により、莫大のセンサー類があらゆる場所に設置され、これまで得られなかったようなデータが取得できるようになる。部屋の気温の24時間の推移であったり、移動の様子、運転時の加速、減速の具合、、、等々。生み出されたデータを機械学習にかけることで、新しいサービスが生み出されていく。
まだ始まりに過ぎない消費者向けIoTサービスであるが、コネクティッドカーをめぐる新サービスにはこれまでにない価値をもったものが出てくるだろう。それらが我々の世の中をどう豊かにしてくれるのか、近い将来体験できる日が待ち遠しい。