「女の上方婚」は、志向ではなく現実である。
以前、独身の男女が結婚や独身に求めるメリットが相反するという事実をご紹介しました。女は「結婚とは経済的裕福を獲得できるメリット」を感じている一方で、逆に、男は「結婚すると経済的自由度が奪われるとデメリット」を感じています。つまり、結婚とは「金をよこせという女」と「金はやらんという男」との攻防戦であり、マッチングされないのも無理はないわけです。
その記事はこちらです。
この現象は、婚活市場の中で、女性が「年収いくら以上じゃないと論外」という条件を突き付けるような「女の上方婚・男の下方婚」志向とも通じるものです。女は自分より学歴や収入の高い男を望み、男は自分より学歴や収入の低い女を選びたがるという傾向を指します。
こういうことを言うと、「そんなことはない。今の夫婦は共働きが主流であり、昔のように、女性がそんな学歴や収入だけで相手を選んでいるわけではない」と反論する人がいるのですが、大変失礼ながら真っ向から否定させていただきます。あまりにも現実を知らな過ぎると言わざるを得ません。
実際に結婚した夫婦のそれぞれの年収形態はどうなっているか、ご存じでしょうか?
平均初婚年齢は男女とも約30歳ですから、30代の夫婦だけを抽出(夫婦のみ世帯と夫婦と子世帯)して、夫の年収を横軸に、夫と同等か、夫より年収が上か下か、という区分で夫婦の分布をグラフ化しました。収入ゼロという位置づけで無業者(専業主婦・主夫)の数もカウントしています。
これを見ると、夫の方が多く稼いでいる夫婦の比率が圧倒的に多く、夫の年収が100万円台の夫婦ですら、過半数の夫婦が「夫>妻」という状況でした。
いわゆる「男の結婚の壁」と呼ばれる「夫の年収300万円」では、84%が「夫>妻」であるということも驚きです。
そして案外、同額程度稼ぐ夫婦が極端に少ないことがわかります。
これを見ても、「女の上方婚、男の下方婚」というのは、結婚に対する「志向」ではなく、現実に結婚した夫婦の実情を表しているという証拠だと思います。
日本の夫婦のほぼ大多数が「夫>妻」という収入における「妻の上方婚」形態によって成立していることは、紛れもない事実なのです。
もちろん、これには配偶者控除という制度の影響もあります。いわゆる「103万円の壁」と言われるもので(2018年の改正により150万円まで引き上げ)、妻が思い切り働けなくなるというジレンマを生んでいます。さらには、30代夫婦と言えば、出産や子育ての影響もあり、離職や休職によって妻が無収入となる可能性も高いでしょう。
とはいえ、だからこそ夫婦が役割分担をして支え合えているとも言えるわけです。「夫が稼ぎ、妻が家の中のことをやる」というと、前近代的な夫婦像だと批判する人もいますが、夫婦が同じように働き、同じような額の収入を稼ぎ、家事も育児も同じようにやるということが、夫婦の本来の姿というわけではないし、理想の夫婦の姿とも言えないわけです。夫婦の役割分担はそれぞれの夫婦が決めればいい話であって、外野が口出しすることではありません。
メディアでは「共働き夫婦が圧倒的に増加」というニュースばかりが取り上げられますが、全国30代夫婦に限ってみても、専業主婦が結婚生活を支えている割合はまだまだ大きいのです。