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アイドルやアニメ市場、インスタ映えを支えるエモ消費とは?

昨今ニュースなどでよく「若者の〇〇離れ」が取沙汰されますが、そもそも若年層の給与所得が90年代以降右肩下がりであり、少子化の影響で人口も減っているわけですから、市場規模が縮小するのは当たり前です。

「俺たちが若い頃はこんなんじゃなかった」とマウンティングしたがるおじさんの気持ちもわかりますが、基本的に消費行動というものはその時代の社会環境に大きく影響を受けるもので、同列に語ること時代が不毛なのです。

なぜならば、お金や時間をかける対象とその価値観が大きく変化しているからです。

アイドル市場は2015年実績で約1600億円(矢野経済研究所より)、アニメ市場も約2600億円(メディア開発綜研より)と双方とも以前に比べて大きく伸長しています。スマホゲーム市場に至っては、9200億円を超えています。チョコ市場が5000億円ですからその規模の大きさがわかると思います。昨日今日と実施されたニコニコ超会議も過去最高の入場者数を記録したとか。


http://news.nicovideo.jp/watch/nw3472263

お金と時間をかける対象が変化したのであって、決して消費力が減退したわけではないのです。

かつての高度経済成長期は、大量生産・大量消費の時代でした。統一性・標準性がある商品を大衆みんなが所有することそれ自体に価値があったのです。いわゆる「モノ消費」の時代です。所有することに価値があったと言えます。ブランド品を持ち、いいクルマに乗るのは、ある意味ひとつの自己表現でもありました。

それが1990年代後半以降、携帯電話やネットの普及に伴って、自己表現的な消費から徐々にコミュニケーションのための消費という形へ変化していきます。いわゆる「コト消費」と言われる体験価値の時代です。体験価値というと、旅行やテーマパークなどの非日常体験をイメージされる方も多いですが、決してそうではなく、消費の目的がモノの所有から、その使用によって得られる体験価値へとシフトしていったという意味です。勘違いも多いのですが、「モノ消費からコト消費へ」というのは決して新しい概念ではなく、20年近く前の2000年頃から言われていました。

そして今、社会学者バウマンの予言通り、社会の個人化が進行しています。地域や職場といったかつての安定的な共同体の崩壊、未婚率の上昇、単身世帯の増加、結婚しても子を産まない夫婦の増加、子を産んでも「夫婦と子」という最小単位でしか頼れない社会へ。

消費の世界においても個人化は顕著です。

かつての価値だった「所有」や「体験」はもはや手段と化して、そうした行動の大本にある「精神的な安定や充足」が目的化されるようになってきているのです。所有価値でもなければ、体験価値でもない、それらはパーツにすぎず、それを通じて得られる「精神価値」に重心が移行していくのです。それが拙著『超ソロ社会』で私が名付けた「エモ消費」であり、群から個の消費の比重が高まるソロ社会化において重要な視点となります。

「エモ」とは「エモーショナル」の略ですが、その説明はwikiにも出ていますのでそちらを参照してください。


一言だけ言うと、「エモい」とは「感動した」というような浅いものではないです。落合陽一さん曰く、ロジカルの対極にあるもので「もののあはれ」に近い感情のことを指します。

お金や時間をかけるべき対象としての興味関心について、ソロと家族とを比較した調査結果があります。ソロ男女と家族のそれぞれに「お金と時間をかける対象として興味関心が高いモノ・コトは何か?」について聞きました。

家族は「家族で過ごす時間」や「旅行」のほか、「衣食住」など日常的なものに関心が高いのに対して、ソロ男女は、「自分の趣味」「自分のための教養・勉強」「スポーツや筋トレ」「ネットワークや人脈作り」など自己実現や自己啓発関連に対する意識が高いことがわかります。オンラインサロンの隆盛はまさに彼らに支えられているようなものです。

© ソロもんラボ

つまり、家族が現状に満足し、それを維持する「状態維持消費」傾向があるのに対して、ソロは現状を打破する「自己変革消費」傾向があるということです。

以前こちらの記事で家族と未婚とでは幸福度に格差があるというデータをご紹介しました。

https://comemo.io/entries/6968

家族は現状幸福度が高い。だからこそ現在の状態を維持したいという消費をします。逆に、幸福度の低いソロは、現状を打破するためにお金と時間を費やしたいのです。ソロたちには子どもも配偶者もいません。既婚者が得る「家族によってもたらされる日常的な幸せ」は物理的に感じようがないのです。同時に、潜在的な結婚規範によって、ソロは「結婚していない状態の自分」に欠落感を感じがちです。そうした欠落感を払拭するための代償行為が「自己変革」につながる消費行動を生むのです。

これこそがソロたちの「エモ消費」の原動力なのです。「エモ消費」とは彼らの幸せに直結する行動でもあり、その行動を通じて彼らは「承認と達成感」を得られるのです。それは、彼らなりの「幸せのマイレージを貯める行動」と呼べます。

何もアイドルやアニメだけが「エモ消費」ではありません。インスタ映えのために旅行やレストランに行くことそうです。写真をあげて「いいね」をもらいたいという単純な承認欲求だけではなく、自身の達成感であり、幸せ感の確認でもあるのです。音楽CDは買わないが、音楽フェスには行くのも、ハロウィンで大騒ぎするのも同じです。それは幸せの感情をそこの場にいる人間と共有することで、コミュニティ帰属意識を確認したいからです。

これは、堀江貴文さんの言う「感情のシェア」が幸せにつながるというのとも通じますし、「エモ消費」の「精神価値」とは、感情の共有によって「その瞬間通じ合えたコミュニティ」に創造することで自分の居場所を確認する行為に近いと思います。

お金や時間をかける対象は、もはやモノやコトではありません。だからといってモノやコトが不要になったわけではないのです。モノやコトを完成品として提示して買ってもらう時代が終わったということです。

「エモ消費」は消費者の関与によって完成するからこそ「エモい」のです。ニコニコ超会議やコミケが盛り上がるのはそういうことです。だからこそ、作り手・売り手の意識も変わらなければならないと思います。


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荒川和久@「ソロエコノミーの襲来」著者

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