商用車の改造EVは日本らしいEVシフトのあり方かもしれない
中古車を改造して宅配EVに
EVシフトの話題はとてもセンシティブだ。ニュースに上がるたびに、賛否両論が沸き上がる。特にビジネス系雑誌では、EVシフトで困難に直面したという海外のニュースを見つけると「それみたことか!」と鬼の首を取ったような記事を掲載する。しかし、嫌だろうがなんだろうが、EVシフトは来てしまう現実だ。
まず言っておくと、私個人の趣味としては内燃機関が大好きだ。好き好んで10km/L程度しか走らない、1.6リッターNAハイオク車なんてものをカスタムしながら乗るくらいには内燃機関が好きだ。自動車メーカー勤務時代に買った整備士ツナギを着て、休日は車いじりをするくらいには、昔いたメーカーの製品も愛している。
しかし、世の中はEVシフトしてしまうので、ビジネスとしては社会変化に適応しないといけない。だが、日本の悲しい性か、大きな変化が起こるときには反対勢力が強く、なかなか変革が進まない。気が付いた時には、世界標準から周回遅れというパターンを、この30年ほど繰り返してきた。
それでは、急進派と慎重派が激論を交わすEVシフトのなかで、企業はどのように立ち振る舞うべきか。グローバル企業であれば、国内がどうあろうと、国際標準に合わせるという選択肢も取れるだろう。しかし、国内で主に事業を展開している企業はそういかない。加えて、なんだかんだで日本国内のEV関連インフラの整備も十分とは言い難い。
そうすると、多くの企業にとってできることは「スモール・スタート」になる。つまり、失敗しても大きな損失とならない範囲で、取り組みやすいところから実験的に試行錯誤を繰り返すということだ。
日経新聞の記事で紹介されているように、配送業者が中古車を改造して、宅配EVを運用するという実験は好事例だ。加えて、固定式バッテリーではなく、交換式バッテリーも実験的に取り組んでいるところもポイントが高い。議論が長々と続き、試行錯誤のために十分な工数がとれなくなるのは日本企業のミスの典型だ。やれるところから、どんどん実験して、経験から学ぶことが不確定な未来への適応では重要だ。
繰り返すが、EVシフトはほとんど確定した未来だ。実現には多くの障害が依然として残っているし、本当にバッテリー駆動だけで世の中が進むのかもわからない。だが、世界はEVシフトに大きく舵を切ろうと圧力を強めている。
その理由は単純だ。内燃機関を主動力とした現状のビジネスゲームでは、日本とドイツに他国が逆立ちしたって勝てないのだ。
特に、米・中・仏・伊は、EVでゲームチェンジすることに賭けている節がある。ただ、中国と違って、米・仏・伊は一枚岩ではないので一筋縄ではいかないところもあるだろう。
また、インドの動向もあなどれない。10年前までは日本のお家芸と呼ばれていたオートバイ市場だが、気が付けばインドのメーカーにかなりのシェアを奪われている。そして、インドのメーカーは電動バイクの開発にも意欲的だ。モータリゼーションの理屈で言えば、このままいけば、インドのメーカーが第2のホンダとなってもおかしくはない。
不確実性が高いからこそ、変化に対して臆病になるべきではない。各企業が変化に適応するために備えを怠らないことが肝要だ。
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