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不景気だから消費が失われるのではない。消費が失われるから不景気になる。

4月の家計調査(2人以上の世帯)が発表されました。

00年に調査対象の世帯の範囲を変えたため単純比較できないが、総務省によると「確認できる1986年まで遡ってもここまでの落ち込みはない」。

とのこと。実際にグラフ化してみるとそのすさまじさがわかります。

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バブル崩壊期よりも、リーマンショック期よりも、2011年3月の東日本大震災の時よりも、この35年間で最大の減少です。

総務省統計局が出した追加参考図表「新型コロナウイルスの感染拡大により消費行動に大きな影響が見られた主な品目など」 を見ると、コロナ禍において壊滅的なダメージを受けている業態が一目瞭然です。

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パック旅行費97%減、宿泊料も95%減、遊園地入場・乗り物代も98%減、映画・演劇等入場料も93%減。ほぼ100%なくなったといってもいいくらいの落ち込みです。

さらに、自粛要請などで追い込まれた居酒屋などの飲酒代は90%減、レストランなどの食事代も63%減。

旅行や出張の自粛により、航空は95%、鉄道は90%、バスは72%、タクシーは70%とこちらも軒並み大幅な減少。

「コロナが収束すれば元に戻る」などという楽観的な意見を言う人もいるが、収束する前にこれらの人達は力尽き、倒れてしまいます。

さらに、表にはないですが、病院の診察料などの保健医療サービスも14.8%減している。これはコロナのために他の疾病などで病院を訪れることをやめたり、手術が延期になったりしているからでしょう。この状態が続けば、病院ですら存続できなくなります。

日本のコロナ死亡者は累計903人である(6/4現在wordmetersより)。勿論、人の死を数に換算することはできないが、それにしても、コロナ自粛によって、これほど多くの業態の消費が減っているということは、イコールそこで働く人達の雇用を危うくすることに直結します。

すでに、コロナによる休職者は600万人を超えている。このままいけば、完全失業者もバブル崩壊期を超える350万人以上になるでしょう。これは現在生活保護を受給している人数の1.7倍にも匹敵します。

失業率と男性の自殺率とは強い正の相関があり、350万人の失業者が出るということは、もしかしたら過去最高の初の3万5千人の大台を超える自殺者を発生させるかもしれません。

失業まで至らなくても給料が減る人も激増します。国税庁の民間給与実態調査によれば、リーマンショック後の2009年の男性の平均給与は、前年の5325千円から4997千円へと6%以上減りました。6%というとたいした額に見えないかもしれませんが、グラフにある通り、500万円以上の男性が全体で166万人も減少したということを意味します。166万というのは、全男性給与雇用者の約9%に相当します。

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このままいけば、このリーマンショック時以上の事態がやってくるでしょう。2018年の平均給与は5450千円でしたが、下手すればまた400万円台に逆戻りする可能性もあります。

 給料がなぜ減るか?それは消費が減るからです。大きな認識違いをしている人が多くいますが、消費というのは、モノやサービスを手に入れるということではありません。誰かの消費というのは、誰かの給料を払っているのと同義なのです。結果として、誰かの消費が雇用を支えるのです。

先行きが不安になると、「節約しよう」「貯金しよう」などと考える人が多いかもしれません。その気持ちはよくわかります。が、貯金なんかをして消費に回さないとかえって経済全体が死にます。そして、それが不景気を生むんです。消費しなければそれだけどこかで雇用が失われるからです。すると益々経済的不安に苛まれ、お金を使わなくなります。悪循環です。

不景気だから消費が失われるのではない。逆です。消費が失われるから不景気になるんです。そうしてみんなが消費しなくなると、経済そのものが死にます。全体が死んでしまって後では、節約も貯金ももう意味をなしません。

「僕はコロナに影響受けない業態だから大丈夫」なんて考えも通用しません。すべての商売は誰かの消費によって作られます。消費をする人がいなくなれば、どんな業態であれ滅びます。

自分の消費は自分のためでもあるのです。

こういうことを書くと「コロナで外出自粛するのは誰かにうつしてしまわないためだ。他人を思いやる心がないのか」というお叱りのなんやかやを頂くことが多々あります。他人を思いやるとか、どうでもいい利他論も結構ですが、「何もしない」という無行動は結局現実の誰ひとり救うことにはなりません。別に「誰かのために」なんか考える必要もないです。消費をする。その行動だけで、結果として誰かかが救われます。現実に。

消費も外出もしたくない人に強要するつもりは一切ありませんが、お願いだから、邪魔だけはしないでくれ。


ちなみに、首相在位期間の家計調査同月前年比の平均を比較して、国民の消費意欲を減退させてしまう「ドケチ首相」は誰だったのか?というのを遊びで作ってみた。1位は麻生さん。2位は小泉さん、3位森さん。バブル崩壊後は誰一人在位期間中平均1%増にも達していない。

平成以降の「失われた30年」といわれる不景気だが、これは「失われた消費行動」ということなのです。  

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。