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変化への適応力のなさは、日本の経済衰退の始まりか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

「失われた20年」。日本において1990年代初頭にバブル崩壊して以降、20年以上にわたって経済の停滞が続いたことを指す言葉です。そこからさらに10年が追加され「失われた30年」、つまり平成という時代は実質的に経済成長を経験しなかった元号となりました。

このままの状況が続くと最も楽観的なシナリオでも、労働人口やこれまでのストックの減少により2030年にはマイナス成長。2050年代には「先進国ではなくなる」という予測もあります(他の国々が経済成長を果たすため相対的に順位が落ちる)。

この1年はコロナ禍における科学的エビデンスを軽視した施策や、DXの遅れによる給付金などの対応の遅れ。ワクチン接種をめぐるオペレーションの混乱等々、刻々と変化する状況への対応の不備が目立ちました。旧来の仕組みを改善することなく、なぁなぁで済ませてきたツケが有事の際に噴出したとみるべきでしょう。

そして本日、またそれを象徴するようなできごとがありました。

夫婦同姓を定めた民法などの規定について、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は23日、「合憲」とする判断を示した。大法廷の合憲判断は2015年以来で2例目。夫婦がそれぞれ望む姓を使える「選択的夫婦別姓」を求める声は高まっているが、最高裁は再び、別姓を認めない司法判断をした。国会の議論などに与える影響が注目される。

内閣府が2017年に行った世論調査では選択的夫婦別姓の容認派が42.5%となり「必要ない」を上回りました。昨今では共働き世帯が多数派となり、キャリアを継続したい女性が多くなったことも一因でしょう。男女共同参画白書によれば、1997年に専業主婦世帯より共働き世帯の方が上回って以降、直近では共働き世帯は専業主婦世帯の2倍弱となっています。

このように時代の変化は早くなり、またこの20年ほどで世帯の中にも大きな変化が起こっています。それなのにルールだけが古いままでは、制度が足かせになり無用な不利益が生じてくるのは無理もありません。

夫婦別姓については、私自身が当事者であることから度々COMEMOでも触れています(記事はなるべく中立的客観的視点を心がけていますが、構造として当事者バイアスがかかっていることをここで注意喚起しておきます)。

今回の最高裁の審理は全15人で行われ、11人が合憲、4人が違憲とする意見を表明しました。違憲判断を出した4人のコメントを紹介します。

宮崎裕子裁判官、宇賀克也裁判官は「夫婦同姓を受け入れない限り婚姻の意思決定を法的に認めない制約を課し、合理性があるとはいえない。不当な国家介入だ」と批判。

草野耕一裁判官は「選択的夫婦別姓の導入で向上する国民の福利は、導入で減少する福利よりはるかに大きい。導入しないことはあまりにも個人の尊厳をないがしろにする行いだ」と意見し、全体として国民の福利がはるかに向上するという新しい視点を提供しました。

三浦守裁判官は「婚姻の自由を不合理に制約している」と指摘しました。

今回注目すべきは、合憲判断を出した裁判官のうち深山卓也裁判官ら3人が出した共同補足意見です。そこには「法制度の合理性に関わる事情の変化いかんでは(夫婦同姓を定めた民法750条など)各規定が立法裁量の範囲を超えると評価されることもあり得る」とし、国会に対してさらなる議論や行動を勧告していることです。

そもそも、法務省の法制審議会が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申したのが、1996年。同要綱においては,選択的夫婦別氏制度の導入が提言されています(法務省の説明はこちら)。そこから四半世紀の間、国連からも日本民法の夫婦同氏が同条約に抵触する差別的な規定であるとして、2003/2009/2016年と度々改善を勧告されてきていながらも、変化することができませんでした。これは国会の不作為であり、またそれを間接的に追認し続けてきた我々国民の責任でもあります。

この25年の間に米国の名目GDPは2倍超となりましたが、日本はほぼフラット。大卒1年目の年額基本給は、アメリカ629万円、スイス902万円で、日本は262万円と、スイスとは3倍以上の開きが出ています。

ニーチェの有名な言葉に「脱皮しない蛇は死ぬ」というものがあります。実はこれは一部分を抜き出したものであり、センテンスとしては以下のようなものです。

The snake which cannot cast its skin has to die. As well the minds which are prevented from changing their opinions; they cease to be mind.

意見を変えることができないものは、滅びゆくだろうということです。

私は、選択肢が増えることでより多くの人が自分らしく幸せを感じる社会になることを期待しています。ダイバーシティについて議論されることが多くなりましたが、実のところダイバーシティはすでに社会に存在しているものです。夫婦別姓の議論以外にも例えば離婚、同性パートナーシップを含む事実婚や婚外子の方々はいらっしゃり、それぞれの立場で社会的な不利益を被ってきていると思います。ある偏見に基づく「普通」の裏に隠されてきた事実を直視し、すでに存在している多様性を認めることで、結果として社会の幸せの総量が増えることを切に願っています。

6月はプライド月間でもありますので、同性婚を認める法案に対して素晴らしいスピーチをしたニュージーランドの議員の動画を紹介します。ダイバーシティを考える際に大切なことがつまっています。

今年の秋頃には衆議院議員総選挙。そして、このときには最高裁判所裁判官の国民審査も行われます。今回の判断に対して、直接自身の意見を表明できる数少ない機会です。ぜひみなさん投票に行き、ご自身の意見を国政に反映させましょう!

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タイトル画像提供:kurosuke / PIXTA(ピクスタ)

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