拝啓 文化庁様、まちがった「公平性」と行きすぎた「性悪説」から生まれる制度と事務処理が、社会と文化を苦しめています。 〜ARTS for the Future体験記
お疲れさまです、uni'que若宮です。
今日はちょっと公的な制度への苦言を書きたいと思います。
拝啓 文化庁様、
(12/6 22:00追記:制度改善のための署名運動をしております。審査期間の問題、募集条件の問題についてお読みいただき、共感いただけましたら「賛同」を宜しくお願いいたします)
文化庁Arts for the Futureの問題点
来週から、渋谷でART THINKING WEEKというイベントを主催します。
このイベントは、コロナ禍で打撃を受けているアーティストに表現機会と収益機会をつくるために企画したものです。というのも昨年あった個人のアーティストからの補助金申請がなくなり、団体のみが申請できるように変更(改悪?)されたからです。
昨年もこうした状況があったようですが、
「申請してから3カ月連絡がなく、2月にいきなり申請取り下げを要求された」「公演を実施したが3月に不交付が決まり、約100万円の経費が個人負担になった」。吉良のもとには、支援金を心待ちにしていた人々からの声が多数寄せられていた。
それでも個人が申請でき、救われたアーティストは多かったように思います。しかしアーティストが個人では申請できない、となれば、団体がなにか「コトづくり」をして個人アーティストに補助金を回すしかない、ということで今年の5月からArt Managers Labさんと一緒に企画してきて、二次の募集に応募しました。(そもそも補助金の性質上、費用の補填なので予定通りできても弊社には利益は出ません。それどころか消費税は補填してくれないので基本的にやるだけで赤字です)
ところがです。Arts for the Future(以下AfF)と銘打たれた(団体onlyの)補助金、相当に問題があって苦境に立たされることになりました。AfFは2021年12月までににイベントを実施することを条件にアートイベントを開催する団体に600万〜2,500万円が補助されるというものなのですが、なんと来週11/23からイベントが始まってしまうのに今現在審査結果がでておりません。
AfFの問題点についてはイベントが終わったら改めて詳らかにし、なんらかアクションを起こそうと思いますが、審査で不採択になってからだと落ちた恨み節っぽく勘ぐられることもあると思うので、採択/不採択が出る前に書いておきます。
以下に問題点を簡単にまとめます。
1)募集開始の一方的な延期
AfFの一次募集は「2021年4月26日(月)~2021年5月31日(月):交付決定(予定)5月中旬~7月下旬」という条件で実施、当初「2次募集の期間発表:6月30日(水)~7月26日(月)予定」となっていました。しかし一次募集の審査の遅延により、二次募集開始は6月30日をすぎても何もアナウンスがないまま、やっと7月29日に「「2次募集」について実施することとなりました」とのみ情報が出ました。その後8月10日になってやっと「2021年9月6日(月)」に募集開始します、と発表。募集開始自体が、実に2ヶ月半一方的に延期となったわけです。このため、当初10月に企画し、会場QWSに仮押さえをしていたスケジュールを2度ほど見直し、再調整することになりました。
2)審査結果の大幅遅延
上記のような状況の中、5月から企画準備していた我々はすべて書類を揃え、何度も確認の上で、9/6を待ち構えました。10時に開始されると「10:02」に申請を完了。システムメールが来てそこには「申請受付日から1ヶ月を目処に結果のご連絡をさせていただきます。」と書かれていました。それならなんとか間に合う、とほっと安堵…。
ちなみに事務局からの9月21日のアナウンスでは「2次募集の審査は、主な分野に分類の上、申請順に開始しており、要件を満たし、かつ、書類不備のない案件については、順次交付決定予定です。不備のある案件は順次差し戻しをいたしますが、再提出された内容のチェックは、全ての申請を1度審査した後になり、事務局から再提出内容に関する連絡を差し上げるのは、10月下旬以降になることが想定されます。」とあります。
しかし、10:02に申請した我々のところにはじめて連絡がきたのは「10月19日(火) 19:37」。1ヶ月以上待った挙げ句「書類不備」というもので、そのやり取りもひどかった(後述)のですが、色々とやり取りをするうちに20日が経過し、11/8 20時に再申請(ちなみに再申請受付のメールは来ていません)しましたが、11月21日時点でまだ結果が出ておりません。
3)差し戻し内容がひどい
事務局からの「書類不備」の指摘は以下です。
「以下の内容について、システム上での追加提出お願いいたします。
・実績証明書 【再提出依頼】
添付していただいた、過去実績がアート体験オンラインパフォーマンスでしたので、今回申請される展示会とは異なるため展示会での実績証明書が求められます。そのため公演等の(主催の)実績については、申請する取組と同じ分野で、チケット料金または協賛が確認できる、有観客の(オンラインのみを除く)ものを提出お願いしております。」
というものでした。
ちょっと説明すると、今回申請する団体には過去にアート事業をした実績が求められます。要は「もともとアートに携わっていなかった人がアート補助金目当てで応募するなよ」ということですね。で、過去こんなイベントをやりました、という情報を出していたのですが、それが不備だと。
しかしこれ、単なる事務局の誤認なのです。「アート体験オンラインパフォーマンス」だからダメ、と言われていますが、このイベントは現地開催もした「有観客の(オンラインのみを除く)」しかも協賛つきのイベントでした。
また「展示会」の実績じゃないからダメ、というのも意味がわかりません。申請タイトルこそ「ビジネスパーソン向けのワークショップ付き展示会 Artthinking Week」としていましたが、そもそも今回の申請内容は「ワークショップ」「展覧会を含んだ公演」「ワークショップ付き展示会」として申請しています。
現代アートを多少なり知っている方ならわかるように、現代アートでは「展示」と「公演」の線引きや、ジャンルの特定はかなり難しい問題なわけですが、募集要項には補助対象について「(4)ジャンル複合・ 展覧会も含んだ公演、ギャラリー空間で⾏うパフォーマンス 等」とも名言されており、対象事業であるはずなのに「過去実績が展示会じゃないからだめ」とおっしゃる。
それに、そもそも、Arts for the Futureですよ?
新型コロナウィルスにより、文化芸術活動の自粛を余儀なくされた文化芸術関係団体において、感染対策を十分に実施した上で、積極的に公演等を開催し、文化芸術振興の幅広い担い手を巻き込みつつ、「新たな日常」ウイズコロナ時代における新しい文化芸術活動のイノベーションを図るとともに、活動の持続可能性の強化に資する取り組みを支援します。
「新たな日常」のための新しい取り組みをしてもらうのが主旨ですよね?これを「厳密に過去同じ実績があったことを証明せよ」って言ったら新しいこと出来なくないですか?Arts for the Pastですか?
この曖昧な打ち返しにここから長く悩まされることになるわけですが、我々としては当然これではよくわからないので翌日問合せました。しかしこの対応がまたひどかったのです。
4)問合せの回答がひどい
「書類不備」とされているけれども何が不備なのかがよくわからないので、翌日10/20、電話とさらに重ねてメールでも質問をまとめ問合せました。こちらとしては実績が対象のものであるという主張をしつつ、「「不備」だというならどこが不備に当たるのか、不足する必要書類を教えて下さい。言ってもらえればすぐ出します!」と。ところがこの回答が本当にひどかったのです。まず、10/20に問合せたのですが、待てどくらせど回答が来ません。(この時点でイベントまで一ヶ月しかなかったわけで事業者としてはもう崖っぷちです)
ただ待ってるわけにもいかず電話も毎日のように掛けるわけですが、問い合わせでつながるのは事務局本体ではなく、ただのコールセンター。驚くことにコールセンターのスタッフは「申請内容すら見られない」のだそうで、「私たち何も答えられません。文化庁の事務局に伝えておきます」というので「すみません、もう時期が時期なのでいつ頃回答もらえそうか目処だけでも教えてください」と何度も懇願したのですが、「確認しますね」からしばらく待たされて「いつ答えられるかもわかりません」というきれいな定型文が判で押したように返ってきます。本当にありがとうございました。
結果的に8日後の「10/28 10:50」に返事がきたのですが、その内容がこちら。
「今回申請される展示会と同様の実績証明書が求められます。
実績証明書として有効なのは、中核者の出店もしくは主催か団体の主催の実績が必要です。
申請事業詳細ページに添付していただきました、補足資料1の詳細でございます。
【実績1】裏参道フェス(jisseki1_A.pdf)
資料確認したところ、有料のアート展は確認が取れませんでした。
主催に団体名が記載されておりませんでした。
【実績2】アートシンキングの学校(jisseki2_c.pdf)
アートシンキングの展覧会ではなく、アート展示会の実績が確認したいです。
主催が団体名と異なっております。
【実績3】jisseki3.pdf
アート展示会の実績とは異なります。
チケット料金が確認出来ませんでした。
…いや、話聞いてるかな?
「主催や実績が確認できないとおっしゃるなら何を追加で出せば…」と聞いている質問に対しこの回答。さすがに僕の拙い国語力ではわからないので、即日10/28に再度問い合わせしました。その後も何度も電話問い合わせをしても何が不備なのかについて明確な回答が得られないまま、10日ほど経った11月7日(日) 9:59にこんなメールが来ます。
何度もメール頂きましたが頂戴しましたご質問事項につきまして、下記のとおり回答させていただきます。
各事業者様、団体様へは、本補助金事業の募集要項や申請の手引き等を参考に事務局にて丁寧に確認しました結果をお伝えしています。
その内容については具体的な修正・変更の指示は致しません。
各事業者様、団体様へは今後も公平性を保つためにも募集要項や申請の手引きなどを良くご確認頂き申請してください。
とお伝えします。また個別のご対応は致しかねます。
本件におきましてはこのメールを最後に対応を終了させて頂きます事、ご了承願います。
はい、長いので要約しますね。「何も答えないのでマニュアル確認してください。もう連絡してこないでね」。わあ、ご回答ありがとうございます。ていうかこんな回答、10日もかからずすぐできませんかね?そしてこうした回答ならチャットボットでいいのではないでしょうか。りんなちゃんのほうがよっぽど気が利いたことをいってくれそうです。こんな回答のためにわざわざ問い合わせ窓口に人を張っているコスト(これもどこかが受託したのでしょうが)を補助金に回していただくほうが有意義だと思います。そして、「マニュアル確認してください」と言ってきてますがマニュアルにはちゃんと則っているのです。これがまた困ったもので…
5)マニュアルが杜撰
これだけマニュアルを読め、といってくるのですから、我々が適当に申請をしていて不注意で不備をしたと思われますでしょう?しかし、事務局の指摘である「主催」の明記や「協賛」の確認についてはそもそもマニュアルには載ってないのですよ。
実績証明書(主催公演等の実績)は申請者あるいは中核者の(主催)クレジットの表記などが確認できるチラシ、ポスター、Webサイト、プレスリリース、チケット、パンフレット等を提出してください。
※公演等の(主催の)実績については、申請する取組と同じ分野のものを提出してください。また、申請する取組が複数の分野にわたる場合は、それに対応した分野の実績を提出してください(太字は引用者)
これしか書かれていないのですよね。「クレジットの表記」については「(主催)」とわざわざ主催にカッコがつけられていて、「主催表記必須」とはされていません。協賛やチケットについても明記はありません。こうした雑なマニュアルにも関わらず、あとから「主催の明記がない」とか「協賛が確認できない」とか「取組と実績がちがう」などと言ってくるのはもう完全な後出しジャンケンです。だから「じゃあ何が足りないのでしょうか?」と丁重に聞いているわけですが「マニュアルを見ろ」と返してくる。この往復のやりとりと、そのたびに一週間も10日もかかることにいったいどんな意味があるのでしょうか?
我々は何も、「審査内容」について問い合わせているのではありません。応募書類に不備がある、と言われ、マニュアルも指摘も曖昧なので「足りないのはなんですか?」と聞いているだけです。それに対し、「その内容については具体的な修正・変更の指示は致しません。各事業者様、団体様へは今後も公平性を保つためにも募集要項や申請の手引きなどを良くご確認頂き申請してください。」と返ってきて「本件におきましてはこのメールを最後に対応を終了させて頂きます」と問い合わせが打ち切られる。丁寧なカスタマーサクセスをありがとうございます。
上記のように、1)2)時期を一方的に遅延させ、3)判然としない不備の指摘をし、4)その問い合わせにはまともに対応せず、しかもそれらがそもそも 5)マニュアルの杜撰さ起因するものなのです。どうでしょうこれ…。しかも相手は中小の団体なわけで、これだけ事前の条件も時期も曖昧でじゃんじゃん変更されるって「下請法」ならアウトなんじゃないですかね?公ですし補助なのでそういうの関係ないのかもしれませんが!
どれだけの「見えない不利益」が生じているか考えてほしい
コロナ禍で困っているアーティストや文化に対し、税金から補助をしよう、と予算をとっていただいたことには感謝しています。私見では(せっかく昨年ベースで補助金の知見がたまったのだから昨年と同じ制度で個人からも受付け、さらに洗練させたほうが良かったんじゃ…)とは思いますが、とはいえ機会をつくっていただいただけでも感謝です。
しかし、しかしです。
「for the Future」と銘打たれたこの補助金の制度のせいで、どれくらいの団体やその先にいるアーティストが苦境に立たされているか、考えてほしいのです。こちらが現状ですが、いまだ「年内実施」という条件で準備をしてきた2,500団体ほどが結果も出ないままに待っているのです。(↓AfF事務局発表をもとに進捗を追っていました)
我々もそうでしたが、そもそも2次の募集開始がずるずる延期されたために、会期含めていったんすべて企画をし直しています。
ほとんど内容のない問い合わせの返答をまち、毎日電話をかけている稼働だけでも相当なものですが、そうして日々返答が来ない中、日々メンバーで集まってバックアッププランやアーティストや会場への遅延の説明・お詫びなど、めちゃくちゃ裏で稼働がかかっているのですよ。
こんなに時間をかけて企画・調整しても結果が出ないので致し方なく開催を中止した団体の話も聞きます。開催が中止になれば、企画者にもアーティストも一銭も得られません。すべてが「ただ働き」になるのです。コロナ禍で打撃を受けているアーティストに、時間を押さえ身体を空けておいてもらった上で、打ち合わせもしてもらって「一銭にもならない仕事」という徒労を押しつけているのです。まあなんてブルシット・ジョブなんでしょう!
ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。(wikipediaより)
我々も審査結果が出ないため、アーティストや会場にも「すみません、、まだやれるかわかりません…」と謝りながら10月いっぱい待っていたのですが、コロナ禍でたたでさえ辛いなか、事前準備やその日を空けてくれているアーティストにそのしわ寄せを押し付けることだけはしてはならない、と、11月に入った時点で審査結果を待たずに実施する腹を決めました。
我々は最も少ない金額の「600万円」で申請していますが、仮に実施決定しすべてを動かしたあとで「不採択」という結果がくればそれはすべて赤字となります。エクイティで資金調達もしてない中小ベンチャーにとって、600万の赤字は死活問題です。つらあ。しかし、そもそも個人申請がなくなったアーティストへの補助の機会のために企画したプロジェクトである以上、このしわ寄せをさらに小さく弱い存在のアーティスト個人に負わせることだけはできません。
なので11月に入り、腹を決めました。とりあえず実施する。不採択になった時のリスクは受け止め、あとは協賛とか資金繰りを出来る限り頑張る。
facebookでも呼びかけたところ、100以上のシェアをいただき、半月の短い期間にも関わらず現時点でどうにか500万円近い協賛・ご支援をいただけました。(赤字が100万まで減った…)本当にありがたいですし、一銭の得にもならないのに多くの方にこうして文化を応援いただけて涙が出ます…(苦境ですがこうした感謝やご縁の機会をいただけたことはありがたく思います)
(「不採択」が出ればやはり赤字ながら)なんとかイベントは開催できそうです。ぜひ一人でも多くの方に来ていただきたいです!
繰り返しになりますが、僕は「審査の結果」に恨み節を言いたいのではありません。予算は限られていますし、すべての団体が補助金を受けることはできませんから、審査の結果が出れば甘んじて受け止めます。それは仕方ないですし、そこに感謝はあれど文句はありません。
問題は制度の不毛さなのです。必須の書類があるなら募集時点でマニュアルに明記されていればこうした何度もの手間が省けます。とはいえマニュアルは全ケースを網羅することもできないでしょうから、マニュアルで曖昧な部分は「これとこれが足りないよ」と事後的に端的に教えてくれればよいのではないでしょうか。やり取りは一往復で終わり、審査結果を待てます。それを「(杜撰な)マニュアル読んで自分で考えなね!」というから、何度も問い合わせが来て、申請側も審査側も無駄な仕事が増え、どんどん遅れていくのです。
ああこの壮大な無駄よ!!!!!!!!!
諸悪の根源は「いきすぎた性悪説」
拝啓 文化庁様、
「各事業者様、団体様へは今後も公平性を保つためにも募集要項や申請の手引きなどを良くご確認頂き申請してください。」
とおっしゃいますが、質問に答えないことが「公平」でしょうか?
わかりにくいルールについての質問に回答することはそんなに不公平ですか??
少し前に、こんな記事がありました。僕は胸をえぐられる想いで読みました。
けれどある時、行政から来た片親家庭に対する給付金の案内の手紙を読んでいて、雷に打たれたようになった。唐突に気がついたのだ。こうした書類は基本的に、一面びっしりと漢字で書かれてあることに。
「そうか。読めないんだ…」
日本の福祉制度は、書類を読みこなし、自ら申請の手続きをしなければ利用できない。難解な漢字と文章の読解力がないと、支援の網からこぼれてしまう。
今回の補助金についても調べてみたところ、「募集要項」は26,000字、「手引き」は34,000字ありました。すごーい、本が出せるよ!主要なマニュアルだけでこれです。ちなみに全部ではこんなにファイルがあるよ!
そもそもこのマニュアルを読み込み、事務処理をこなせないと応募すらできないのです。いくらアーティストがコロナ禍で仕事が減っているとはいえ、慣れない事務処理にこれだけの時間を割くのは大変です。(お金になるかもわからないのに!!)で、ちょっと不備があった時にサポートしてもらえるのでなく「公平性」から何も答えないのが問い合わせ対応なのです。なにか間違ってません…?
僕は大企業経験もありますし事務処理はくっそ嫌いですが、一応一通りのことが出来ます。だからこそこうして拒絶に対し何度も問い合わせて食い下がることもできます(たとえ意味のある回答がこなくとも!)。しかし、それができない人はどうなるのでしょうか。黙って泣き寝入りして、死んでいくしかないのですか?
というかそもそも、なんでこんなに文字や事務処理が多いのでしょう?
それは「性悪説」に立って制度が設計されているからだというのが僕の見解です。入管法に関するこの動画もわかりやすいのでぜひ観てほしいのですが、
難民認定もおんなじようなことになっています。みてくださいこの難民認定率。0.4%ですよ??
動画をみていただくとわかるのですが、日本のこの認定率の低さは、「偽装ではないということの証拠」をどこまでも求められるせいなのです。そもそも難民なぐらいですから、着の身着のままに来ていて証拠など準備できていません。結果として救われるべき人が救われず、強制送還されたり、あるいは入管で十分な治療も受けられず亡くなったりしている。これ、、、なんですかね???
ほんの少しの悪意を通さないために、無駄な事務処理が増え、審査が厳しくなり、救われるべき人が救われないどころか余計な負担を背負わされる。
これがほんとに「公平性」ですか…?
(余談ですが、こうした「フェア」という感覚や個人への補助打ち切りは、現文化庁長官の「実力主義」のスタンスを反映したものな気がしています)
中請する方があまり煩雑にならないような仕組みで、詰まりを起こさずうまくいき
始めている感覚はある。イベントのトップにお金が行けばドンと下に降り、個人にも届く。照明や音響などの個人営業者が、自分たちで申請する手間がいらなくなったわけだから。(中略)平時にあまり稼げていない人が給付金で突然線げるのはまずい。文化芸術は、やはり実力が基本。実力のある人だちが困窮していることが問題であり、フェアな状況を作ってあげたいと思う。
といっても僕は霞が関や行政だけを批判したいわけではありません。どうして行政がそんな仕組みになっているか、というと誰かズルをした時に一人も許さずに袋叩きにする、僕たち国民の声を反映していると思うからです。(生活保護なんかも不正受給があると袋叩きにしたり、ホームレスはそもそも救う必要がない自己責任、なんて発言もありましたよね)
そうした国民性を反映して、この国の制度はどんどんどんどん無駄なチェックが増え、事務処理が積み上がってきてしまいました。行政に限らず、大企業でも「セキュリティチェックリスト」が使いづらいエクセル12シートくらいになっていて、結局チェックがザルになる、みたいなこともよくありますよねー(思い出)
内部的にはリスクが防げているようでも、それは単に実施側のアリバイづくりやリスクヘッジでしかないのです。そして今回述べてきたように、とくに申請者や弱者の側にそのしわ寄せとして「見えない膨大なムダ作業と心理的負担」が課せられているのです。これ、トータルで社会価値を考えたら、圧倒的にマイナスです。
今回の協賛についても、大企業ではだいたい決裁のスケジュールが長く無理という結果で、中小企業の皆さんが即決で協賛をしてくださいました。お金が潤沢にある人たちではなく、です。企業の決裁のプロセスも「性悪説」でどんどん長くなっていってるんですよね。
もし今回の補助金が(後で嘘だった場合には賠償になりますよ、というような罰則規定付きで)とりあえず予算の範囲内で支払われたとしたら、どれだけの事務処理が省かれ、どれだけ多くの人たちが救われ、どれだけ多くの未来に向かうプロジェクトが実施されたことでしょう。(そう思って準備されてきた「未来」がたくさん、社会に出ることもなく死んでいった)
事務処理に手間がかからず、審査結果さえ早く出てくれれば。仮に不採択になったとしても、それなら協賛を募ったり、企画を変えるとかやり方を早く判断できます。一部の悪意を通さない「公平性」のために、結果が出ないことがもっとも無駄な稼働を生み、傷を大きくしています。
来週から多くの不採択通知が「いまさら」送りつけられていくことでしょう。コロナ禍でそもそも打撃をうけていたアーティストや小さな団体が、ずるずると引っ張られ振り回され、多くの「一銭にもならない稼働」を涙とともに飲み込むのです。はたして無事に歳を越えられるんでしょうか。
拝啓 文化庁様、そして省庁のみなさん、自治体の皆さんほか制度をつくるみなさん。
みなさんはおそらく優秀な学歴をおもちで、難しい文章やエクセルに謎のマクロを仕込めるくらいスキルフルなはずです。その能力をぜひ「社会全体の可能性が少しでも多く救われる方向」に使っていただけませんでしょうか。ここでまたふたたび、オリンピックの時のmikikoさんの言葉を引用します。
〈私以外のコアに関わっていたスタッフは延期の報告以降、何の情報もなくただ一時停止していて再開を待っている状況です。「1年の猶予を頂けたと思って前向きに捉えましょう」という気持ちのまま止まっています。〉
〈去年の6月に執行責任を任命され、全ての責任を負う覚悟でやってきました。/どんな理不尽なことがあっても、言い訳をしないでやってきました。それを一番近くで見てきたみなさんはどのような気持ちでこの進め方をされているのでしょうか?/(略)でも、またこのやり方を繰り返していることの怖さを私は訴えていかないと本当に日本は終わってしまうと思い、書きました〉(強調引用者)
僕も同じく今日、「またこのやり方を繰り返していることの怖さを私は訴えていかないと本当に日本は終わってしまうと思い、書きました」
--くっそ長いのに最後までお読みいただいたみなさまにお願い3つ--
*1 AfFの件については、のちほど全て詳細にまとめ意見書なりなんらかのアクションを起こそうと思っています(来週弁護士相談予定)。共感いただける方、その際はぜひ一緒に声をあげてほしいです。
*2 アート系メディアのみなさん。ブロックバスターの展示会や著名なアーティストの記事もよいですが、こうした問題についてメディアからもぜひ提起していただきたいです。アーティストは個人主義で声の小さい存在です。その声を救うアートメディアのジャーナリズムをぜひ宜しくお願いいたします!
*3 イベント「ART THINKING WEEK Shibuya」は来週23日よりの開催です。引き続きチケット販売中です。ご参加、シェアによる応援、(そしてまだ赤字なので寄付応援も…)大歓迎です!宜しくお願いします!