変わりゆく日常をどう乗り越えるか。テクノロジー・アートの祭典「Media Ambition Tokyo 2021」が東京シティビューで開催
最先端のテクノロジーカルチャーを実験的なアプローチで都市実装するショーケース「Media Amibiton Tokyo 2021」が、今年も開催。
緊急事態宣言の影響により一時期は開催が危ぶまれましたが、急遽2021年5月12日(水)〜 6月8日(火)で展示再開が決定。
東京・六本木ヒルズを中心に各所で開催され、筆者(市原えつこ)も昨年に引き続き参加しています。
落合陽一《物化する地平線》
今年のMATはリアルとデジタルを掛け合わせた”ハイブリット芸術祭”として展開。展示に先立ち、展示作品のほか、制作秘話に迫る作家インタビューやトークセッションなど、豪華オンラインコンテンツを配信。いや豪華すぎるやろ……。
一般公開は5/12からですが、先日プレス内覧会は予定通りに実施されたため、先んじて内容をレポートしたいと思います。
サーバー神輿/祝祭のデジタルツイン
2020年に引き続き、仮想通貨の着金に全力でインタラクションする神輿「サーバー神輿」を召喚いただき、東京タワーを一望できるベスポジに神輿を展示させて頂けることになりました。ロケーションが超豪華…!
Photo: Nakaya(xorium)
今回、祝祭が失われていく日常に対応する形で「祝祭のデジタルツイン」という新プロジェクトの試作版をMATにあわせ初披露します。
フォトグラメトリ技術でバーチャル化した神輿&ゴーストの担ぎ手たちがゔバーチャル世界で祝祭を繰り広げており、神輿に投げ銭するとフィジカル/バーチャルワールドの神輿がそれぞれ高揚。
3DCGなど色々とアップデートを仕込んだため、必要機材も増えてピンチだったのですが、話題になった「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE」のテクニカルディレクターも務められていた、汎株式会社 - PAN.co.,ltd 代表の 堀宏行様に超ハイスペックPCを機材提供いただき、無事に事なきを得ました……!
また、お笑いAI開発スタートアップ「株式会社わたしは」様が独自開発した「煽り音声合成モデル」を技術提供いただき、神輿が煽りAIボイスで自ら営業したり、新型コロナ疫病浄化祈願したりと様々な機能追加がされました。音声合成の精度が本当に素晴らしいです。
なお会期中は私が不定期にサーバー神輿に憑依・降臨する予定です。突然に神の声のようなものが聞こえてきたらすみません。
高精度の計算から生まれた影の魔術、《Fragment shadow》
プレビューでも高い評価を集めていた笠原俊一 × Kezzardrix × 比嘉 了さん「Fragment shadow」は「複数のプロジェクター映像が合成する巨大な投影空間において、幾何と色彩を高精度に計算することで、影として投射される身体表現を物理的に変化させる」インスタレーション作品。
体験してみるとわかりますが、自分の影が影でなく動くグラフィックとしてまったく遅延なく再構築され、かなり異質な体験ができます。
ビジュアルシステムを担当されたKezzadrixさんも比嘉了さんも、クリエイティブコーディングの世界では伝説的なプレイヤーなのですが、本当にキャリブレーション精度がエグくて流石でした。これはぜひ現場で体験してほしい作品です。
データビジュアライズで生み出された崇拝と儀式性
慶應義塾大学SFC学部長でもある、データビジュアライズを駆使するアーティスト・脇田玲さんの「Holiness」。神聖さを感じさせる世界中の建築に着目し、そこでの光の反射や屈折のパターンを再構築し生み出されたもの。
こちらの作品、以前に清春芸術村の教会で拝見していたのですが、今回の展示空間は普通のブラックボックスで、教会でもないのに荘厳さを感じてしまう……。間近で眺めると、データビジュアライズで生成されたとは思えない繊細な光の描画で驚きました。「人はなぜ神聖さを感じるのか」を考えながら鑑賞したい作品。
クラブカルチャーと芸術表現を融合し続ける「MES」新作
2020年に六本木の「ANB Tokyo」での大型展示も注目を集めた現代美術ユニット「MES」もMATに初参加。緻密にマッピングしたレーザー光線で物体を溶かすマッドな手法で作品を展開しているユニットですが、今回はこれまでの作品と比べるとグッとミニマルなインスタレーションを展開。
アメリカの家庭料理と、原子炉のウラン燃料をつくるのに用いられる粉末という全く異なるふたつの意味を持つ「イエローケーキ」をモチーフに、安全神話について考察する作品。
奥のワックス板がゆっくりとレーザー光線で溶かされ、何かの文字が徐々に浮かび上がってきています。内覧会の時点ではそれが何なのか謎に包まれていましたが、会期が終わる頃には読み取れるようになっているはず……。
MESのお二人(左)と記念撮影
「共感覚体験装置」という異次元体験
会場に入ってすぐに巨大な神殿のような不思議な建造物があるのですが、その中に鎮座するのがシナスタジアラボ feat. evala (See by Your Ears)による「シナスタジアX1 - 2.44 波象(Hazo)」という大作。
「共感覚体験装置」という見たこともない異様な椅子のようなデバイス、大量の振動子が組み込まれており「身体が音になる」異様な体験ができるそう。
意識が研ぎ澄まされフロー状態になり、体験した人からは「解脱体験装置」とも、様々な異名が付いているようです。内覧会で元・嵐メンバーの松潤さんも体験されていたのですが、「ヒューーーッッ!!!最高!!!」と絶叫。中で何が起きているのかめちゃくちゃ気になる……。
こちらは設営中の様子なのですが、現場でどんどん開発・機能追加・実験・ブラッシュアップしまくっていく制作関係者の方々の熱量が凄まじかったです。
日経クロステックで体験の様子がレポートされています。
WIREDでも作者である水口哲也さん×evalaさんの対談が掲載。気になる方はぜひ。
MAT、錚々たる方々が全力で実験に取り組む「大人の青春」という感じが非常に楽しい現場です。
個々の作品の力が強くてすごく良い展覧会になってるので、はやくお客様をお迎えできるのを願ってます……!
Media Ambition Tokyo 2021 メッセージ
2021年春。
今この瞬間の状況を誰が想像できていたのだろう。
身体性を伴う世界の新しい秩序。
分断され抑制された日常の到来。
戦後、高度成長期を経てたどり着いた不透明な時代。
これまでの常識が非常識に変わっていく瞬間を突きつけられたとき、9年前を思い出した。
MATが産声を上げた2013年。
二度目のオリンピックが決まる半年前の春、目指した世界は新たなテクノロジーを都市実装することだった。
美しい感性が育むアートとテクノロジーを抽出、この東京へ都市実装し、人々に実体験してもらうことを目標とした。
2018年の冬に二度目の万国博覧会が決定。
21世紀の日本は1960年代の再来がごとく息づき胎動していた。
高度成長オマージュ。
拡張し膨張することで目指した肥沃な地。
MATもまた高度成長期を迎えていた。
しかし世界は変わった。
地球が選択した変化の前で、
これまで絶対を信じた人智はまるで砂上の楼閣であった。
ルールは変容し、意識は分断され、都市機能もフリーズした。
半世紀以上に渡り磨き上げたコンセンサスは、軽々と覆された。
いまだ人類が経験したことのない状況は、いつの間にか都市を未開の地へと変容させたのである。
これまでの地図には描かれていないサバイバルなニューフロンティア。
風が吹いたのだ。
この瞬間を、次の時代へ橋渡すために
僕らは意識を通わせ、想像し、新たな羅針盤を創ろうと思う。
Co-imagination
and Co-creation.
見たことない辺境の地で
共に想像し、響き合い、創造する。
つなぎあわせ、言葉を交わし、新しい地図を描く。
Media Ambition Tokyoは挑戦する。
暗中模索の創造こそが、次へのバトンとなるように。
昭和の先達が言っていた「ピンチはチャンス」を、僕らのスタイルでオマージュする。
丸まった角をいま一度尖らせ、僕らは狼煙をあげるのだ。
Media Ambition Tokyo 谷川じゅんじ
Media Ambition Tokyo 2021 開催概要
[ 日時 ] 2021.5.12WED– 6.8TUE
[ 会場 ] 東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)[六本木]and more…
[ 主催 ]
一般社団法人 Media Ambition Tokyo
( JTQ Inc. / Panoramatiks / Mori Building Co., Ltd. / Enhance Experience Inc. / Mistletoe, Inc. )
Media Partners:Art Sticker / WIRED JAPAN
PR Partners : HiRAO INC / Getty Images Japan K.K.
Special Cooperation : NEWVIEW AWARD / 3Dファントム