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【後編】これからの教育のために、「社会との結び目」を増やす3つの方法

お疲れ様です。uni'que若宮です。

今日は昨日の前編につづいて、教育と「社会との結び目」について、後編です。(前編をまだ読んでない方は、↓をどうぞ)


結び目②:色々なコミュニティとのつながりを増やす

教育と「社会との結び目」を増やす方法の二つ目として、学校外のコミュニティとのつながりを増やすことが改めて大事になってくると考えます。

子供たちにとっては学校や塾が主要なコミュニティですが、これらだけに留まらず、さまざまなコミュニティに参加できるようになるといいと思ってます。

そう思うのにはpassiveな理由とactiveな理由があるのですが、まずpassiveな方でいうと、例えばいじめなど、学校で生きづらさを感じた時、ひとつしかコミュニティがないと出口がなくなってしまうからです。

複業などの働き方やコミュニティに関連して、熊谷晋一郎さんの「自立とは依存先を増やすこと」をご紹介することが多いのですが、

依存先が少ないほど、一つの対象に全体重を預けることになり、そこの論理に我慢してでも合わせざるを得ません。しかし依存先が増えれば、頼る先が分散されて一つが切れても大丈夫です。学校ではさまざまな人間関係があり、上手くいかないこともあります。そんな時、そこが全てであれば「もう人生詰んだ」と思ってしまうでしょう。

複数のコミュニティに属していれば、学校で問題があっても居場所のone of themでしかありません。「詰んだ」と言ってもほとんどの場合、視野狭窄になっているだけです。大人になって振り返って、世界は広いのにどうしてあの時はそれが全てだと思いこんでいたんだろう、と思った経験がある方は多いでしょう。


また、よりactiveに考えれば、学校以外のコミュニティに参加することは新しい才能を発見するきっかけにもなります。学校教育では(現在の仕組み上)どうしても最大公約数的な評価軸になってしまいます。そしてそれ以外の才能は「観測不可能」になってしまうのです。才能があってもそれが学校の指標で点数化できない場合、単なる「落ちこぼれ」としか認識されないことがあります。

しかし、実は「学校の最大公約数的指標では評価できない才能」こそユニークな才能であることが多く、別の場所で花開けばものすごい才能に育つポテンシャルを秘めています。


こうした学外のコミュニティをつくる機会は、実は探せば無償でもけっこうあります。おすすめは学外の人と一緒になにかを成し遂げるプロジェクト型のものです。例えば、Waffleさんがやっている『Technovation Girls』では、中高生が学校や学年を超えてチームを組み、ビジネスとノーコードですがアプリの開発までを行います。

こうしたコミュニティでは、同年代のつながりだけではなく、社会を変えようと活動をしている「面白い大人」とつながれることもメリットだと思います。学校の先生や親は近すぎて逸脱や脱線をあまりさせてくれなかったりするので(それはそれで子供のためを思っているとしても)、日常の利害を離れた場所で、ちがう観点の大人と接することも、視野を広げてくれるでしょう。

複数のコミュニティに属することで「社会とは今目の前にあるものだけではない」と知ることができるのです。

そんなこと言ったって子どもは学校と塾の時間だけで忙しくて、他のコミュニティに参加する余裕なんてないよ!というお宅もあるかもしれません。個人的には、もしそうなっているとしたら「時間の固定費」を見直した方がいいと思ってます。余白がないとどうしても閉塞的になり、ますます社会と隔絶していくからです。

あるいは、学校のプログラム内でも、他校や地域の人々と触れ合う機会をもっと増やすことができるはずです。他校と合同で探求の授業をしたり、学区の親の中には研究者や芸術家、起業家もいるかもしれませんし、そうした大人が出前授業をする手もあります。オンラインや学外の手を借りれば先生はむしろ仕事が今より楽になるかもしれません。ところがそれを考える「余白」すらないので悪循環が続いている。


先日、こんなイベントに登壇したのですが、日本の「サラリーマン」はまさにそうした余白のない生活をしています。

とにかく詰め込み、「戦士」と思い込みながら、しかし何と闘っているのかはわからなくなっている。でも足を止めたり脱線するのは怖くて止められない。もしかすると、親である自分がそういう生活をしてしまっていると、教育や子育てでも無意識にそれを再生産してしまうかもしれません。

子どもたちは(「サラリーマン」のように)テストや受験のため「だけ」にかつかつになったほうが本当にいいでしょうか?いや、将来の自由度を増やすために今はまず我慢してそれに注力するんだ、と思うかも知れませんが、余白のない生き方を刷り込まれてしまうと、将来の自由度もなくしてしまうかもしれません。


ミヒャエル・エンデ『モモ』の「時間節約家」の逆説を思い出しましょう。

きみの生活をゆたかにするために時間を節約しよう!
けれども、 現実はこれとはまるっきりちがいました。たしかに時間貯蓄家たちは、あの円形劇場あとのちかくに住む人たちより、いい服装はしていました。お金もよけいにかせぎましたし、つかうのもよけいです。けれども、ふきげんな、くたびれた、おこりっぽい顔をして、とげとげしい目つきでした。

時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。じぶんたちの生活が日ごとにまずしくなり、日ごとに画一的になり、日ごとに冷たくなっていることを、だれひとりみとめようとはしませんでした。

生活をゆたかにするために時間を節約したはずが、豊かさを失わせてしまうのです。そして『モモ』ではこう続きます。

でも、それをはっきり感じはじめていたのは、子どもたちでした。というのは、子どもにかまってくれる時間のあるおとなが、もうひとりもいなくなってしまったからです。
けれど時間とは、生きるということ、そのものなのです。 そして人のいのちは心を住みかとしているのです。
人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。

果たしていま日本の子どもたちは、どう感じているでしょうか?


結び目③ 「働いて稼ぐ」の体験機会を増やす

最後に三点目として、「働いて稼ぐ」体験を増やしたほうがいいのではと思っています。

日本では、学生がお金を稼ぐことに対して否定的な見方がされがちです。しかし、働いて稼ぐことは、生きていくために不可欠であり、社会に価値を提供することです。拝金主義になってはいけませんが、価値を提供しそのお礼としてお金をいただく、「稼ぐ」とは本来、社会と交流することです。価値の循環であり、決して汚い行為ではありません。

少なくとも資本主義社会において、「働いて稼ぐ」というのは生きていくために必須で、もっとも基本的なスキルと言っていいと思います。なのにその経験が全くないまま社会に出る。そして「新卒」で社会に入ってからやっと練習を始める。それって試合の本番で初めてボールの蹴り方を習うようなものですし、隔絶した環境に慣れきっているとそもそも適応しづらくなってしまっていたりする。

「学生の本分は勉強」という考えも理解できないわけではないですが、個人的にはアルバイトであっても自分で稼ぐ経験をするのはプラスだと考えます。賛否あるかもしれませんが、学校行事の手伝いをして報酬を得る、みたいなのもいいと思うんですよね。そうすれば先生も楽になるでしょうし。

「働いて稼ぐ」ことで生きていかなければならないこの社会において、教育の現場において「働いて稼ぐ」体験をすることも、社会との結び目を増やす上で有益だと思っています。



①自分たちで解やルールをつくること、②学校以外の様々なコミュニティとのつながること、そして③「働いて稼ぐ」経験を増やすこと。

いまの学校では、それぞれの機会があまりに少ないように思います。


そしてこうした機会を増やすことを考え実現するには、そもそもの時間の余白がもう少し必要だとおもいます。
「学習指導要領」もあるし教えるノルマを果たすだけで精一杯なんじゃ!とか、そんなことやってる暇があるなら受験勉強させてよ!と大人は思うかも知れません。

しかし詰め込み型の学習の本当に全てが必要なのかはけっこう疑問です。僕自身、最近やっと歴史に興味が出てきましたが、当時社会科で丸暗記したことはほとんどすべて忘れてしまいました。英語教育を10年も受けていてもテストだけで終わって使う機会がなければ身になりません。そこに注ぎ込まれた時間は果たして有効だったのでしょうか?社会とつながらなければ教育は意味がないのではないでしょうか


また、これからの時代、学びたくなったときが学び時だという気もします。学びたくないものを無理に詰め込むよりは、興味があるときに集中して学ぶ方が効果的です。無理やり口に詰め込まれるより、空腹の時に食べる食事の方がおいしい。僕自身、2回大学にいって、それを痛感しました。

そういう意味では、人生100年時代となった今、中高大の進学スピードが一律である必要すらなく、学びはもっと個々のペースでもよいのではないでしょうか。(自分の経験からいけば、30歳までに基本的な知識を身につける程度で良いのではという気がしてます)


詰め込み型で余白がない教育を続けるより、「固定費」を減らしてもっと社会との結び目を増やしていくことが、これからの教育には必要ではないかなと思っています。

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