“良い会社”に共通する6つの要素。成長し続ける上で欠かせない条件は「良いスパイラルを生み出す」こと。
皆さん、こんにちは。今回はこちらのお題企画、「#良い会社の条件」について書かせていただきます。
「良い会社」とは何かと聞かれた時に、その判断材料となるのは、「業績」「仕事内容」「会社の規模や知名度」「社会からの評価や信頼性」「給与」「オフィス環境」「働き方」「労働時間」「人間関係」「福利厚生」「会社の雰囲気」などを想起する人が多いと思います。
そもそも何を持って“良い”と定義するかは人によって異なることは前提として、企業の在り方や社員への向き合い方がこれまで以上に問われている今の時代において、「良い会社」とはどのようなもので、どのような環境や風土があると良い会社と言われるのかについて考えていきたいと思います。
■良い会社の条件とは
こちらの記事には、転職経験者が考える良い会社の条件として、
会社が変化できること
多様性があること
心理的安全性があること
社員を尊重する雰囲気があること
ビジョンやミッションが浸透していること
などの意見がありました。複数の会社を見てきた人ならではの視点や気づきもあるのかもしれません。
私自身は転職の経験が一度もありませんが、それでも外から見るだけでも「この会社は素晴らしい会社だな」と思うポイントとして以下のような共通項があるように思います。
業績が安定的に伸びている
収益性や成長性が高い
事業が長く継続している
経営陣が社員を大切にしている(社員の満足度が高まる工夫をしている)
会社も社員も成長できる環境がある
社員の強みや個性が適切に生かされている
人材育成を通じて仕事の質が向上し、より高いレベルの価値を提供できる環境がある
社員のモラルが高く、働きがいのある組織になっている
コミュニケーションが活性化していて、何でも言い合える環境がある
社員の意志が尊重され、自律的なキャリア形成を推奨・支援されている
組織が向かう方向性が明確で、組織の目標と個人の目標がリンクしている
トップダウン型のマネジメントではなく、現場支援型のマネジメントが意識されている
会社が何のために存在し、社会においてどのような役割を果たしているのかが明文化されている
短期的な利益の追求よりも、長期的な経営戦略の実践に比重を置いている
社員が高い意欲を持ってイキイキと仕事に取り組むと、業務が改善・進化し、良いプロダクトやサービスが生まれます。そして売上や利益が伸び、業績が向上すると社員が成長を実感しやすくなります。さらに顧客の満足度が上がり、会社の社会からの信頼も高まっていくと、職場に良い雰囲気が醸成されていきます。そうなると、結果的に社員の会社に対する信頼感も高まり、働きがいや成長意欲がますます高くなっていくという良いスパイラルが生まれます。
つまり、良い会社の条件を一言で表現するのであれば、「良いスパイラルを生み出し、悪いスパイラルを回避させる」会社ではないかと思います。
それでは、悪いスパイラルを回避できない会社にはどのような特徴があるのでしょうか。
■悪いスパイラルを断ち切れない会社の特徴
先ほど述べた通り、良い会社は、社員が働きがいを感じて業績が上がり、待遇も良くなり、さらに社員がやる気になるという良いスパイラルを生み出します。一方でそのスパイラルを作り出せない会社は、社員の表情は暗く、やる気を持てず、結果的に業績もどんどん悪化していくという、真逆の現象が起こります。
悪いスパイラルに陥りやすい会社の特徴としては、
会社の求心力が「経営理念の実現」ではなく、「売上や利益」などの「お金」に置き換わっている。
社員を労働力としか見ていない。
自社のやり方が正しいと過信している。
意思決定が遅く、問題を先送りにする体質がある。
トラブルを含めた会社の経営に関する問題を隠蔽したり、私利私欲で会社を私物化しようとする。
というような点が挙げられます。極端に言うと、「どんな手段を使っても儲ければ良い」という考え方が会社の中心になってしまうと、不祥事を起こしやすいような体質の会社へと一気に変わってしまうのです。
社内に「リスクの芽を摘むような仕組み」(たとえば、「社員からの声を定期的に集める」とか「有事の際にアラートが出せる機能を設ける」など)があることで、健全な企業風土が構築されやすくなります。何か危険を察知した時、嫌な予感がした時、不都合な真実に直面した時にどのように向き合うかで、リスク回避能力が高い会社とそうでない会社とに大きく二分されます。
内部統制システムを強化したり、企業全体でコンプライアンス意識を高めるための工夫をしていくなど、リスクを回避していくための施策を徹底することはもちろんですが、一度悪いスパイラルにハマってしまうとなかなか抜け出せなかったり、抜け出すための労力が相当かかることを改めて意識しておく必要があります。そうならないような健全な企業風土を作ることが何よりも重要です。
一方で、不祥事を起こさないようにと、ルールや規律を細かく作り、「指示されたことだけやるように」という、社員が自ら考え行動することの機会や権利をはく奪してしまう会社もあるので注意が必要です。
基本的に社員を信頼した上で性善説をベースにリスク管理を行うこと、そして細かいルールや規律で縛らずにリスク回避の仕組みを設けることが重要ではないかと思います。
繰り返しになりますが、「良いスパイラルを生み出し、悪いスパイラルを回避させる」こと。
これが良い会社であり続けるための重要な条件の一つではないでしょうか。
■企業が成長していくための6つの要素
会社が目先の業績を上げることだけに躍起になるのではなく、「社員一人ひとりがやりがいや働きがいを見い出している」「仕事を通じて社会に貢献していることを実感できている」「自分自身も会社も、双方が成長している実感がある」など、社員のモチベーションが高い状態を維持できている会社が良い会社であることは明白ですが、社員を表面的に大切にするだけでは決して良い会社は作れません。
以下のような、企業が成長していくために必要な複数の要素が揃っていて、それがうまく回っている状態が構築されて初めて良い会社になっていくのではないかと思います。
企業が成長していくための要素を6つ挙げてみます。
①業績(高収益なビジネスモデル)・・・「長期にわたって業績が伸びていて、高収益なビジネスモデルがある」
→業績がよくないのに「良い会社」であると言われるケースはあまりありません。短期的に考えると、良い時もあれば悪い時もありますが、長い目で見た時に、基本的には右肩上がりの業績を出せている会社は良い会社と言われる条件の一つです。さらに、どのような事業で、どのようなターゲットに対して、どのような価値を提供するかが明確になっていて、その価値に見合う対価が得られているというような、「高収益なビジネスモデルが確立していて、顧客に対して明確に価値を提供できている」会社は良い会社の条件として外せません。
②変革体質・・・「会社も個人も変化に適応するために自らを変革させている」「イノベーションが生まれやすい仕組みがある」
→常に現状に満足することなく、変化することに対して意欲的な会社は魅力的です。変化に慣れている、または率先して変化を受け入れている会社こそ新しい価値を創造することができ、結果的に継続的に新しいことやチャレンジングなことに取り組めるような仕組みが確立・浸透していきやすいのです。もともとは変化に対応していくことが強い会社であっても、放っておくと自然と「変化を起こさない」道を選んでしまいがちです。業務を極力標準化・マニュアル化し、決められた業務をこなしていく方がラクだからです。変革体質を作り出すだけでなく、維持・発展し続けられる会社が良い会社ではないかと思います。
③長期視点・・・「長期的な視点で経営を行なっている」
→環境の変化に適応していくためにも、長期的な視点を持ち、市場環境やマーケット動向、技術革新や人口動態、世の中のトレンドや消費者のニーズの変化など、大きな流れの中でそれらの動きを見極めながら、会社の戦略や方針を決めていくことが求められます。短期的な業績向上だけに目を向けていくと、いずれ企業は弱体化していきます。長期的な観点で経営戦略を描き、その計画や施策を愚直に実行していかないと大きな成長を遂げることは難しいはずです。長い時間軸で目標を達成していくための意思決定の軸となるものや、会社の価値観を明文化し、社会的な存在意義を深く考えられている会社は、長期に渡って社員の心の拠り所となる指針やポリシーが明確であり、良い会社と言えると思います。
④社員の働きがい・・・「社員を尊重し、能力や強みを十分生かす経営を行なっている」「コミュニケーションが活発に生まれる環境がある」
→社員一人ひとりの能力や強みが生かされた状態で、かつ社員の意志が尊重される環境においては、社員のやる気やモチベーションが引き出され、必然的に満足度が高くなります。ベースには個人と組織の信頼が不可欠ですが、一人ひとりが当事者意識を持った状態で日々の仕事に向き合ってもらうためには、当然コミュニケーションコストや育成コストがかかります。それを惜しまず投下できる会社こそ良い会社ではないかと思います。また、上司や先輩社員に忖度することなく、思ったことや考えていることを自由に発言できるような環境の方が、今の若い世代に選ばれやすい会社であることは間違いありません。信頼関係を築いた上で安心してコミュニケーションを取れる環境があれば、そこから自由に発想したり、新しいアイディアが生まれやすくなります。良いコミュニケーションが発生していることは、良い会社の条件として欠かせないものです。
⑤期待値コントロール・・・「対外的な期待値をコントロールし、会社の存在意義を明確にした上で社会への貢献を行なっている」
→あらゆるステークホルダーに対しての期待値を適切にコントロールすることも重要です。不確実性が高い状況においても、できる限り中長期での目線や方針を話し、市場との合意をとっていく必要があります。また、良い会社は、経営理念やビジョンが明確でそれが組織に浸透している状態を構築していて、さらに、会社が何のために存在しているか、社会に対してどのような価値を提供しているかが明文化されていることが多いです。常に社会に対してどのように伝わるのか、社会に対してどのようなインパクトがあるのかを意識した上で、経営判断を行なっている会社は大きなリスクを回避していくこともできます。
⑥リーダーシップ・・・「固定観念から脱却し、変化や進化を志向する組織を創り上げている」
→不確実性が高い中で、適切なタイミングで意思決定を行い、適切なアクションを実行するというような、強いリーダーシップを発揮できるかどうかは、変化のスピードと振れ幅が大きくなっている今、これまで以上に重要になっています。トップが現状に強烈な危機感を持てるかどうか、必要に応じて経営構造の抜本的な改革ができるかどうか、利害関係者も含めた現場リーダー層をワンチームとして長期戦略立案や実現シナリオ策定ができるかどうかなどがポイントになります。
これらの6つの項目は、全て連動してくるものです。
このような成長に必要な要素が備わっている上で、社員を大切にして人材に積極的に投資を行っていく。そうすると社員から見ても、社外から見ても、あらゆるステークホルダーから見ても「良い会社」へと成長していくことができるのではないかと思います。
「良い会社」の定義は企業単位で自ら作り出す必要があり、固定概念に囚われず、時代に合わせて変えていくものでもあります。労働市場や資本市場で、どのような会社が評価されていくのか、経営者は今一度、とことん考え抜いていく必要があるのかもしれません。