日本の国債格付けを考える

日本の国債の格付けはいまどの程度か、即答できる人はそうはいないと思う。なぜって、格付けは日本に住んでいる多くの人の毎日の生活にとってそれ程影響しなかった、から。しかし、格付けは高いほうがいいに決まっている。格付けが高いということは、GDPや債務残高など定量分析の評点が高く、かつ、国民生活に秩序があり、政治も安定しているなど定性分析の評点も高い、という結果だから、だ。なお、格付けとは、3~5年先の債務償還の確からしさ、を示す象徴的なもの、である。

日本の現行格付けは、ムーディーズがA1、S&PがA+u(uはunsolicitedの表示で、発行体またはその代理人以外の依頼に基づき付与したものという意味)、フィッチがA、R&IがAA+、JCRがAAA、である。格付けだけでなく、今後の格付けの方向性を示すアウトルック(見通し)も付与されているが、S&Pがポジティブを付けている以外はすべて安定的。

財政再建をすべきかどうかは、各人各様の意見があるものの、すでにある日本の財政再建に関する目標が今年も達成できないことはわかっていることである。この10月には10%までの消費増税が法律で決まっているが、これさえも、先送りだとか、いややるんだとか、どっちつかずの話が出て来る有様。債務償還に対する政府のコミットメントがあり、その意思が確認できることは、上記であげた定性分析の重要な一角をなすため、消費増税先送りや財政再建の目標達成ならず、は日本国債格下げ懸念につながりやすい。

しかし、なかなかのテクニックのもと、政治的な決断がどうであれ、格下げによって、金融市場が荒れるような事態にはなりそうにない。前述したように、アウトルックは安定的かポジティブ。格下げ方向で警鐘を鳴らすにせよ、それぞれ、ネガティブか安定的に、なるだけ。また、格付けそのものも一番低いフィッチの格付けでさえ、シングルA格の真ん中の水準であり、一つ下がってもまだシングルAゾーン。

日本国債の格付けが仮に下がってBBBクラスまでいけば、日本国債の発行コストが高くなり、それによって、日本国の財政にも圧迫があることは間違いない。それが政治的な判断によらず、格下げになったりしないとなれば、“まぁ問題ない”という評価かもしれない。しかし、本来は、財政再建がうまくいかなければ、格下げにより、リスクが増えていることを知ることが重要である。そうした機能が働かないのは、本当に“まぁ問題ない”で済むのか。先送りしたコストは想定以上に高まってしまわないか、ますます目配りが必要になってくる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?