3月短観から見た23年度業績見通し
企業は景気をどう見ている?日銀短観を深読み - 日本経済新聞 (nikkei.com)
3月短観における23年度の収益計画によれば、売上高は増収計画となりましたが、経常利益については減益に転じる計画となりました(資料1)。
ただ、23年度下期の経常利益計画は非製造業が減益幅を広げる一方、製造業は増益に転じる計画となっていることには注意が必要でしょう。
これは、23年度下期には景気循環的に上向く見方が製造業の増益計画の後ろ盾になっている可能性があります。
こうした中、売上高計画が高い伸び率となったのが、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが期待される「宿泊・飲食サービス」や「対個人サービス」となりました(資料2)。
また、中国経済の回復や移動や接触を伴う経済活動正常化等による人手不足等により企業の設備投資需要が拡大していることが影響する「はん用機械」の増収も期待される結果となりました。
なお、「その他輸送用機械」の増収は部品不足緩和、「金属製品」の増収は価格転嫁が期待されている可能性があります。
一方、経常利益計画から今期増益計画が期待される業種を見ると、新型コロナに対する指定感染症の見直しや全国旅行支援策、インバウンド増加等よる経済正常化期待の恩恵を受けることが期待されるサービス関連産業に加えて、原材料コスト低下の恩恵を受ける「紙・パルプ」、「その他輸送用機械」をはじめとした中国経済の回復や半導体不足解消期待を受けた加工業種等が指摘できます(資料3)。
なお、大企業製造業における事業計画の前提となる23年度想定為替レートはドル円で132.1円/㌦、ユーロ円で137.7円/€となりました(資料4)。
特に、輸出関連の製造業が130円/㌦台と円安気味の想定をしていることに注目すべきでしょう。
今後はこれまでの金融引き締めの影響が顕在化し、インフレ率の減速や雇用環境の悪化、更には各国の政治動向等に伴うリスクオフを通じて、各国中銀がこれまでよりも金融引き締めに後ろ向きな姿勢を示すかもしれません。
そうなれば、為替レートの水準が更に円高方向に進む可能性もありますので、今年度の為替レートを円安気味に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が下方修正される可能性があることには注意が必要でしょう。