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若者潰しに定評のある日本社会は躍進する21世紀世代を活かせるか?

21世紀世代が活躍する東京五輪

東京五輪では、10代・21代前半の選手の活躍が目覚ましい。象徴的なのは、日本史上最年少の金メダリストとなったスケートボードの西矢 椛選手だ。スケートボードという競技自体、20歳を超えると中堅・ベテランとなる世代交代の激しい種目ではある。だが、西谷選手の金メダルと銅メダルを受賞した16歳の中山 楓奈選手の活躍は、十代の若者の潜在能力の高さを痛感させられた。卓球の混合ダブルスで金メダルを受賞した伊藤 美誠選手も2000年生まれの若干21歳だ。

思い返すと、スポーツの場以外でも10代の活躍を目にする機会がい増えている。将棋の世界では、藤井 聡太 王位・棋聖が卓越した成果を出している。ビジネスの世界でも、上場企業のユーグレナでCFO(最高未来責任者)として高校生の小沢 杏子氏が就任している。

傑出する若者はいるものの・・・

このように、華々しい活躍をして脚光を集める若者がいるものの、社会全体としてみたときに日本の若者が置かれた現状は楽観視するには厳しいところがある。若年層の死因1位が「自殺」である先進国は日本の身であり、深刻な事態に置かれている。若年層の貧困も、先進国では最低水準だ。

このような現状を打開しようと、若者が夢を持てず、自殺によって将来を閉ざしてしまう社会を変えるために活動している企業や団体もある。

例えば、ラーメン壮グループの創業者である西岡 津世志氏は「子供に夢を持てる世界をプレゼントしたい」という熱い思いから、事業活動を行っている。そのため、ラーメン壮グループの『夢を語れ(Yume Wo Katare)』はラーメン屋ではなく、誰もが当たり前に夢を語ることができる社会の実現を事業内容としている。

また、大阪を中心に貧困にあえぐ若者の支援を行っている認定NPO法人 DxP では、​今井 紀明理事長は「大人と子どもの間にいる10代は、いまあるセーフティネットから抜け落ちやすい存在」だと問題提起し、身動きも取れず行き詰まる彼らをひとりにしないために、オフラインとオンラインの取り組みでサポートを行っている。

五輪などの世界の大舞台で活躍する若者が出てきている一方で、日本全体でみると若者は最も同年代の自殺率が高く、貧困にあえぐ家庭で育った経験を持つ同年代の人数が多い社会に生きている。社会学者の古市 憲寿氏が著書『絶望の国の幸福な若者たち』で語ったように、多くの若者が「将来の希望」を持つことができない社会で、身内で集まって小さな幸せを壊さないように慎ましやかに生きる「村々する日常」の中で生きている。

「ウミガメ」と「静かな変革者」で若者は将来の希望を持つ

世界の大舞台で活躍する一部の傑出した若者だけではなく、社会として若者が明るい未来を描くにはどうすべきだろうか。今回の東京五輪は、このことに対しても私たちに2つのヒントを与えてくれている。1つは堀米 雄斗選手のパターンであり、もう1つは中山 楓奈選手のパターンだ。

堀米 雄斗選手は、6歳のときに父の影響でスケートボードをはじめ、10代前半には国内トップ選手となり、小学生の頃から海外大会への参加をしていた。2016年に高校を卒業した後、活動拠点を米国・ロサンゼルスに移し、2017年には世界最高峰のプロツアーのスペイン・バルセロナ大会で日本人初の3位に入賞している。その後もロサンゼルスを拠点としてプロリーグで優勝を重ねている。今回の東京五輪では、見事にスケートボード男子ストリートで金メダルを獲得した。日本で下地を作り、海外で一気に成長を遂げるパターンは、テニスの錦織選手や大阪選手も同様だ。

このように、国内で下地を作り、海外で力をつけて国際競争力のある人材に成長することを、中国では「海亀(Haigui)」と呼ぶ。主に数年間の海外留学を経て中国本土に戻ってきた中国人を指し、彼らが中国の急成長を支えた。

シンガポールを拠点として、スタートアップ投資を行う加藤 順彦氏は「若者よ、アジアのウミガメとなれ」と提唱する。「将来の希望」もないが、急に生活に困るほどでもない日本社会で、小さく縮こまって自分の可能性を潰すのではなく、急成長を遂げるアジアに飛び出すことで飛躍的な成長を遂げ、将来の希望をつかみ取ることが薦められている。

もう1つのパターンは、スケートボード女子ストリートで銅メダルを獲得した中山 楓奈選手だ。富山県富山市在住であり、2014年に「富山スケートパーク」ができたことが切っ掛けで9歳からスケートボードを始めた。ムラサキスポーツのプロチームに所属し、スポンサーもついているが、基本的な活動の拠点は日本であり、富山市内の普通の高校に通っている。海外大会に出るための英語も、英会話教室に通って勉強しているなど、エピソードだけをみると驚くほど普通の地方都市に住む高校生だ。

社会学では、このような特別なバックグラウンドや特殊な経験がなくても、社会変革の主体者となる「静かな変革者(Quiet Mavericks)」が確認されることがある。社会学者でロンドン大学UCL校のトゥーッカ・トイボネン名誉准教授は、このような「静かな変革者」の存在を、東日本大震災の被災者ボランティアの若者の中から発見している。

「静かな変革者」には、5つの特徴があると言われている。第1に、独自の考え方や社会的ビジョンをはっきりと語る。第2に、独自の方法を用いて社会問題に取り組む。第3に、現状に立ち向かうため、複雑な戦略を編み出す。第4に、世界に広まっている考え方を取り入れる。第5に、「日本的価値観」と「グローバルな価値観」を融合させる

私たちの日常生活のいたるところに、「静かな変革者」のポテンシャルを秘めた若者は存在する。大人たちは、そのような若者を支援し、出る杭が潰されることがないように守る必要があるだろう。

富山市の女子高生が五輪で銅メダルをとれたように、高校生の持つポテンシャルは非常に高いものがある。首都圏ではなく地方であっても、さまざまな挑戦が可能であるし、社会変革の実現は可能だ。

例えば、コロナ禍で課外活動や文化祭などの学校行事が軒並みキャンセルとなる中で、大分市では高校生の有志が学校の垣根を越えて団体『United for Next』を作り、自分たちの手で学外で学校祭を行おうと挑戦している。2020年にはオンラインで実施し、2021年もコロナ禍でも実施可能な新しい学校祭の実現に挑戦している。

若者が希望を持てず、自殺を選ぶ国である現状から、私たちは目を背けてはいけない。若者が夢を持ち、希望に向かって努力する姿を応援することで、どこまでも成長することができるのだと、東京五輪で活躍するアスリートが教えてくれている。このことを五輪レガシーとして、東京五輪後の新しい日本を作っていきたい。

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