欧州の決意―サステナブルファイナンス分野でのプレゼンスは譲らない!―
貿易摩擦を懸念しつつも国境炭素税導入は合意し、23年から企業に報告義務も課す。それだけではない。他にも目白押しで、以下にいくつか紹介したい。
欧州銀行監督機構、欧州保険・企業年金監督機構、欧州証券市場監督機構は、グリーンウオッシング(グリーンボンドのふりをした債券やローンなど)に関する証拠収集の実施を発表した。サステナビリティ関連の金融商品の需要が拡大し規制制度が急速に変化する中で生じた動きである。グリーンウオッシングの主な特徴、要因、リスクをより理解するために情報を収集するとのことであるが、一段突っ込んだグリーンウオッシング防止策がとられる。
また、欧州委員会のサステナブルファイナンスプラットフォームPSFは、EUタクソノミーの気候関連以外の四つの環境目的について補完的な報告書を公表した。2022年3月に公表された技術的スクリーニング基準の草案を補うもので、農業や化学製品製造などについて、基準を完成あるいは更新した。理想論を掲げるのではなく、実現を促す活動(enabling activities)を示すフレームワークメソドロジーが鍵。もっとも、当初はこの環境目的以外についての基準は、2023年1月から適用開始であったところ、スケジュールが大幅に遅れていることは否めない。
さらに、欧州理事会は欧州議会が企業サステナビリティ報告指令CSRDを11月中旬に採択したことを受け、最終的なゴーサインを出した。CSRDの公式採択により、適用対象となるEU企業/非EU企業の範囲は後退し、サステナビリティ報告をより詳細に行う義務が生じることになる。また外部から保証を得る必要性も加わる。加盟国はCSRDを1年半以内に国内法制化する必要があること、初段階の開示は2025年を目指すなど、義務化を基本とした制度設計が講じられる予定。
欧州委員会がグリーンローン(特に家計・中小企業向け)について、2023年中を期限として、欧州銀行監督局EBAに助言を求めていることもある。たとえばEUタクソノミーとの整合性のモニタリングの特徴やプロセスの義務付けなど、について検討すると見られるが最終的には新たな規制・法的措置が含まれる見通し。
こうした様々な動きやイニシアチブが動くのは、インフラ抑制法案を出したバイデン政権がグリーンエネルギー関連事業の補助金を出したことに対抗して、EUが補助金規制見直しに動いていることにも表れている。米国が補助金で自国の気候変動だけを優遇することには牽制をしつつ、制度設計は欧州が先にやってしまおうとしているように見えなくもない。