イタリア危機とECBの大誤算
イタリア情勢を受けて寄稿させて頂きました。ポイントは以下の通りです:
・客観的に見るとEUの「手先」であるイタリア大統領が選挙で選ばれた政治家の意思を反故にしたように見え、後味の悪さが残る。
・しかも、反故にしたからと言って、再選挙の結果として親EU政権が生まれる保障は全くない。むしろ、今の世論調査では「同盟」が議席を伸ばす恐れ。より厄介である。
・金融市場の観点からはECBが大誤算に直面した可能性が高い。ECBは6~7月にAPP(いわゆるQE)の年内終了を示唆し、9月に正式アナウンスする腹積もりだった。終了が9月か12月という争点はあったが、「年内終了」は概ね決まった話であった。しかし、この予定が大幅に狂う可能性が出てきている。
・一部報道では再選挙は最速で9月9日。しかし9月理事会は9月13日である。この日の並びではAPP終了宣言を出すのは無理だろう。6月、7月に先走って終了させるか、もしくは、来年まで延長させるかというシナリオが考えられる。イタリア金利の現状をみれば、前者は絶望的に可能性が低い。現在ECBの買い入れの20%弱がイタリア国債である。
・昨年6月末のECB年次総会でドラギECB総裁が「デフレ圧力はリフレ圧力に置き換わった」と言い放って以降、ユーロ/ドルはそれまで2年以上続いていた「1.05~1.15」のレンジをブレイクし「1.15~1.25」のレンジにシフトアップした。仮に今回の騒動で「APPの年内終了すらおぼつかない」という想定に移れば、ユーロ/ドル相場は再び「1.05~1.15」に引き戻される恐れがあろう。ユーロ/ドルの1.10割れを視野に入れるのであればユーロ/円相場も安定的に120円を割り込む世界に戻ることになる。
・円滑に進められてきたECBの正常化プロセスだが、最後の最後でイタリアという難敵に捕まってしまった格好である。
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