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誤表記が許容される寛大な時代に、乾杯!

先週、ビールファンの間で結構盛り上った話題がこれ!

サッポロビールとファミリーマートが共同開発した商品「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」において商品デザインの一部に誤表記があったため発売が一時中止になった。この商品は1月12日から数量限定で発売される予定だったところ、商品デザイン内で本来「LAGER」と記すべきところを、スペルミスで「LAGAR」としていたことが発覚したためという。

この件が発表されると同時にSNSで、

「もったいない!何とか販売できないの?」
「ちゃんと説明して売れば、味は問題ないので良いのではないか」
「いっそのこと間違いを逆手にとって、#EじゃなくてもAじゃないか(Eじゃなくてもええじゃないか)」

とダジャレで切り返す案もでてきて、もう本当に色んな意見が飛び交っていた。

その中で私が注目したのは、意見の大多数が「廃棄しないで販売した方が良い」という内容だった点である。ビールは缶に詰めたら再利用できないため、販売しないということは、すなわち廃棄の運命をたどる訳である。


そんな私もSNSに、
「間違いをネタに販売できなかったのかなぁ。もったいない。。。うちだったら間違いなくネタにして笑いに変換してたな。笑」
と投稿し、多くの方が好意的なコメントを返してくれた。

そんな世の中の声に押されて、「発売中止」が「中止」される、つまりは予定通り発売されることになったのである。

これはサッポロビール、ファミリーマートの英断である。大手が一度下した判断を数日で覆すことはなかなかない。今の時代、SNSで誰でも世界に向けて発信できる時代だからこその現象だと感じた。

もちろんミスはあってはならないし、そうならない努力や仕組みは追求していかなければならない。ただ、私達もビールメーカーだし、サッポロビールよりも小規模なので生産工程に人の手が関与することも多く、ミスはどうしても起きてしまうのはよく理解できる。ただ、ミスが起きてしまったらそれを何とか販売できないものか?と知恵を集めて検討に検討を重ねるということが大事であると思う。特に、世間は食品ロス削減に向けて年々意識が高まっているという状況も大きい。

ミスを犯してしまった後は、その内容が消費者や流通の方に大きな迷惑をかける類のものなのかを判断し、大したミスでなければその内容をきちんと消費者や関係者に説明して販売する、という選択肢が十分にあるということを社内や関係者で握っておくことがまずは大事である。でも更に大事なことは消費者が「それくらいのミスは良いんじゃない?」と許容する感覚のミスかどうかである。これは時代背景や国の文化などにも大きく影響を受けるので難しい問題である。今回の事例は「それくらいのミスは良いんじゃない?」と現在の日本の消費者が感じるレベルの内容であり、それをSNSで多くの消費者が発信して、メーカーや小売店の意思決定者の耳に届き、意思決定を覆したことは、今の時代ならではの産物だと感じた。

今回の件は、多くの廃棄ビールを救っただけでなく、メーカーや小売店の利益にもつながり、そして直接この仕事に携わっていた担当者の大きな心の傷も救え、更に今回のことを知ってこのビールを飲むのを楽しみにしている消費者も数多くいるであろうから、本当に多くの方をハッピーにした素晴らしい事例であると思う。もちろん、今回の件をネガティブに捉えて反対意見をお持ちの方もいるとは思うが、そこは誰も実害がないのだからそっと目をつむって許容してあげてほしいと思う。

最後に、もう一言だけ追加で言わせてほしい。どうせ一度は廃棄を覚悟したビールなのだから、発売再決定については、消費者に何か還元策があったらもっと良かったのにな~と思った次第。

例えば、
「購入者の中から100名様を開拓使麦酒・救済感謝ツアーにご招待!」
「購入者の方が名前を申請してくれたら、寄付者銘板(神社などにある、寄付した人の名前が刻まれている銘板)のように、ホームページにもれなく感謝の名前掲載!」
等々。

これはサービス精神旺盛な私たちだから考えてしまうことかもしれません。それを他のメーカーや小売店に期待するのは…ちょっと違うか。笑

でも、ビールが救われたことは素直に嬉しい!私も買って飲んでみようと思う。
「罪を憎んでビールを憎まず!」
ミスを許してくれた寛大な消費者の皆さんに、乾杯!