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母親が減り続ける国・日本で子どもの出生が増えるわけがない

マスコミはなぜいつもいつも少子化や出生減のことばかり取り上げるのだろうと思いますか?それも取り上げ方は、まるで「今が絶望の未来の入り口に立っている」かのような不安を煽る伝え方をする。

それは、出生があがらないことを政府の少子化対策の不備の責任にしたいからです。少子化の問題は別にどうでもよくて、政府を叩ければなんでもいい。結論ありきで取材をしてくるメディアもあります。僕も数多く「少子化」に関する取材を受けてきているが、残念ながらそういう方はいました。

こちらがせっかく多岐にわたる現在の少子化の原因を説明しても、そういう本質的な部分は一切カットされ、政府の少子化対策がズレている部分だけを切り出して編集、放送されたりしたこともあります。紙面や尺の事情もあるのでなかなか難しいのだとは思うが、こちらとしても悩ましい。いつまでも正しい理解が広まらないので。

少子化対策で受けがいいのは、「子ども一人産んだら1000万円支給」とかの金銭インセンティブの話です。「フランスでは~」とか「北欧では~」という出羽守話も受けがいい。新聞や昼間のテレビの視聴者層が高齢者を除けば、主婦だったりそういう人たちだからでしょう。しかし、いくら受けがいいからといって、何の効果もないそんなことを堂々と言うほど僕は厚顔無恥ではない。

一時期フランスの出生率があがったからといって、現在は連続で下がり続けているし、今後も下がります。北欧に至っては、日本並みに低い出生率であることは知られていない。

いつも言っていることですが、政策なんか何をしようが出生は増えません。

子育て支援施策は否定しませんが、上記のような金ばらまいて子どもを金換算するような政策は、出生増には何一つ効果はありません。だって、産んでいる人はそんなものがなくたって平均2人は産んでいるのだから。そして、実際子どもを産んだ夫婦は実感されていると思いますが、案外行政の手当てなり、完全とはいわないまでも、そこそこ充実していることがわかったと思います。これもマスコミは一切いわないが、3人以上の子どもを産んでいる母親の比率は、第二次ベビーブーム期より多い。産んでいる母親は産んでいるのです。

では、なぜ出生数が激減するのかというば、それは、母親が子どもを産む数が減っているのではなく、母親になる絶対人口が減っているからです。問題は、少子化ではなく「少母化」が本質的な原因なんです。

以下の東洋経済の連載記事にも詳しく書きましたのでぜひ熟読していただきたいのですが、算数ができれば誰でもわかる問題です。

今回もヤフコメは336件以上、いろいろ楽しませていただきました。

案の定、この記事に「なんで少母化という言葉を使う。少父化でもあり少親化だろ」等というくだらない指摘が多く寄せられています。

当たり前です。出生に男の数なんて関係ない。極論すれば男の人口が半減したとしても出生数は変わらないからです。男の生涯無子率は2015年でも約4割。遺伝子残せる男は本来一部の強者特権なのです。

夫婦1000組調査した上でいうけど、有配偶の内45%は夫婦いずれかが恋愛強者の夫婦で構成されている。35%の離婚率を勘案すれば、全婚姻の6割は恋愛強者によって作られている。でなくとも未婚男は未婚女と比べて340万人も多い。20-50代に限っても300万人の男余りだ。

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仮に20-50代の未婚男人口が半減してもたいして影響はない。その半減分はたとえ存在していたとしても生涯未婚のままだった可能性は高い。

経済における新自由主義同様、1980年代以降始まった恋愛と結婚の新自由主義時代によってこうなることは運命づけられていた。恋愛力(経済力含む)格差はまず弱者男の切り捨てを生み、切り捨てた事で皮肉にも女にもまた相手がいなくなる。婚活女子が「出会いがない・相手がいない」と愚痴るのはそういうこと。それが今の未婚化への流れです。何も不思議はない。

ところで、この「少母化」の問題を無視し続けるのはマスコミだけではなく政治家もです。特に、日々少子化対策が大事だとかいっている政治家に限って、この問題を取り上げようとしない。

なぜか?政府はそもそも少子化対策なんてする気ゼロだからです。コロナの問題でも浮彫りになったように、あえて言うけど、余命いくばくもない高齢者の命を守るために若者の生活と未来が大いに犠牲にさせられました。若者は票にならないからです。全員とはいわないけど、政治家が気にしてることなんて次の選挙での自分の当選だけ。50年後の日本なんて知ったことではないのでしょう。

以前にも記事にしましたが「人生100年時代なんて地獄」です。高齢者が長生きすればするほど若者は地獄を見ます。別の言い方をすれば「高齢者独裁政治時代」です。


日経にこんな社説がありました。

この社説の「子ども供を産みたいと願う若者らを全力で支えるべき」という基本概念には賛同するが、そもそも少子化はコロナ禍とは関係ない。コロナ以前に平成になってから30年間も若者の経済状況は悪いままだ。

そして、これの最大の間違いは、コロナというパンデミックの危機が終息すれば出生数が増えるという甘い見通しである。

歴史人口学の観点に立てば、疫病や戦争などで出生が急減しても終息後は急増する補償的増加が起きるのが定説だ。スペイン風邪が収まった1920年に日本人の出生は約14%増えた。第2次大戦後は記録的なベビーブームが起き、49年の出生は約270万だった。

申し訳ないが、歴史人口学の視点に立てば、疫病や戦争後に出生が増えるのは、それによって子どもが数多く死んだからです。母親というものは、産んだ子が死んでしまうと出産しようと思うものです。これは、乳幼児死亡率と出生率とが完全に強い負の相関にあることから明らか。

スペイン風邪は主に子どもが死んでしまいました。一方、コロナで死んだ子どもはゼロです。よってコロナ禍後、出生が増えるなんてことは万が一にもありえない。

日本に限らず、アフリカを除く全世界が少子化になります。今後、世界が出生増に向かうことは少なくとも2100年まではない。あるとすれば、今後多死社会化になって、今の高齢者たちが全員死にたえて、人口ピラミッドが補正された段階になれば、やっと出生率はあがるかもしれない。人口転換メカニズムとはそういうものです。

最後に、コロナのように、出生数が減ることを恐れている人には残酷なファクトを提示します。社人研が出している人口推計には、将来の出生数予測がされています。この推計、報道的にはいつも中位推計が採用されているが、作成者の本気の予測は低位推計です。証拠に、1996年の低位推計通り寸分の狂いなく予測はドンピシャに当たっています。

2019年にも推計が出ています。多分この低位推計通りに推移するでしょう。

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いちいちマスコミの報道に反応せず、こういうものだと思って、「子どもは増えない。じゃあ我々はどうすればいいのか」を考えた方が百億倍有益です。勘違いしてる人がヤフコメに大勢いたのであえて書きますが、僕は少母化解決のために女性が無理して結婚して出産する必要があるとは思っていません。無理な結婚や出産は必ず後で後悔します。子を産む人はすでに産んでいるように、結婚する人はもうすでにしています。それでいいんじゃないの?何か問題あります?

結婚?そんなもの滅亡したっていいんじゃないですか?

結婚しないと幸せになれないと思っているすべての人々に読んで頂きたい本です。。よろしくお願いします。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。