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今月でAnyca終了 個人間カーシェアはどうしたら上手く行くのか?

今回は個人間カーシェアの可能性と将来について、代表的なAnycaのサービス終了の記事を代表的な事例として紹介しつつ、課題と解決策、法律・規制の話も含め深堀りしていきます。

-要約-
Anycaは単価上限と貸し出しの手間によって利益拡大がメガベンチャーの期待通りではなかった。課題はすでに取り組んでいる事例もあり、上手く組み合わせることでブレイクスルーもあるのではないか。


はじめに

Anyca(エニカ)が今月で終了となりました。90万人ものユーザーを集めたものの、期待した規模に到達できなかったとしています。
Anycaは個人間カーシェアリング(以下、個人間カーシェアもしくはCtoCカーシェア)という形態でサービスを展開しておりましたが、個人間カーシェアの抱える課題は以下に集約できます。

個人間カーシェアの抱える課題

  1. オーナーの収益性 ※上限金額制限あり

  2. 個人間ならではのトラブルの多さ

  3. 貸し借りが手間

事業者が運営しているカーシェアもあるなかで、何を目的に個人間カーシェアを選択しているのでしょうか。

個人間カーシェアのモチベーション

■オーナー観点
・固定費の足しにしたい
・個人所有の車の稼働率を上げて、エコにしたい
■ユーザー観点
・様々なクルマに乗れる
・お得
■事業者観点(Anyca等のマッチング会社)
・車両費用等の固定費を削減したい
・既存アセットを活用して拡大速度を上げたい
・個人所有の車の稼働率を上げて、エコにしたい

このように3者とも様々なメリットがあります。では課題の方が勝ってしまったのでしょうか?他国では個人間カーシェアが実際に広く普及している例もあります。

参考資料:カーシェアリングの動向整理
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/assets/internet_committee_230330_08.pdf

個人間カーシェアの課題とその対策状況


ここから一つ一つの課題とその対策について見ていきましょう。

課題1.オーナーの収益性 ※上限金額制限あり

これは日本ならではの課題です。個人間カーシェアは法的にはカーシェアではなく、「共同使用契約」という契約を個人間で結び、使わせてあげている形を取っています。
実は日本ではレンタカーやカーシェアを有償で貸し出しする事業を営むには、レンタカー事業者免許・カーシェア事業者免許※が必要です。その免許無しには、事業として利益を出してはいけない決まりです。(※個人でもレンタカー事業者免許は10万円弱で取得可能。)
そのため、事業者免許がない方が個人間でお金を沢山貰い収益を出すことは認められておらず、個人間カーシェアでは、各車の維持費を算出し、それを上限として1回・時間当たりの単価の上限を決めています。

課題はその上限金額が維持費ベースなので安い事です。
一回貸し出す毎に数千円貰うために連絡のやり取りと、実際のカギの受け渡しやその際の時間拘束があると、ボランティアに近いものがあります。
そのため、一部脱法的に維持費が高い外車を安く仕入れて、貸し出すなどのスキームで何台も投資的な運用をされている方以外はモチベーションが続きづらいのが現実です。

解決策1.単価向上

基本的にはもう少し個人でも単価を上げられるよう規制緩和すべきと考えていますが、現行法ならレンタカー事業免許を取得するしかありません。
ただし、個人で事業免許取得するのは手間も費用(10万円)もかかります。

もし私が個人間カーシェア事業へ参入するならば、「個人の車を既存カーシェア事業者に一度買い取って貰い、貸してもらう契約を結ぶ」方式を考えます。オーナーカーにし過ぎる事が問題でもあるので、所有権をカーシェア事業者にし、そのうち、一定度合をオーナーが使う日・時間として、それ以外はすべてカーシェアとしてカーシェア会社が運用します。
家などではリースバックという仕組みで、所有権を売却したあとに借りて住み続けるなどありますが、こちらは近所にあるカーシェアにオーナーと呼ぶ人がいて、その人は多く使えるとかそういう仕組みです。

高級車であれば、もう少し共同管理・保有もありえます。
現に一口オーナー制とも言うべき高級車・クラシックカーのrendez-vous社があります。ただしこちらはレンタカー会社買取とかの方式ではなく、まさに共同所有です。

出典:RENDEZ-VOUS社HPより

課題2.個人間ならではのトラブルの多さ

個人間で高額で動いて傷つくリスクのあるものを貸し借りするため、傷チェックにおけるトラブルは頻発していたことでしょう。また乗り逃げ・勝手に売却等の大きな事件も発生しています。
これはAI的なもので傷や状態の管理を完璧に行えなければ、間に人が入って管理するしかありません。

解決策2.トラブル解消

実際に間に人が入った例があります。オーナー・ユーザー以外の第三者による確認・貸渡対応としてIDOM(旧ガリバー)のGO2GOが店舗に車両を預けて貸し借りを行うもでるを採用していおりました。ただしこちらは、ある時からシステムメンテナンスを理由に継続されていません。

出典:GO2GO HPより

預けるとオーナーが自由に使えなくなり、傷チェックのトラブルは回避できても、手間もコストもかかり、事業者のカーシェアの方がいいとなるのかもしれません。

課題3.貸し借りが手間

個人間カーシェアはカギを人に手渡しするのが通常です。予約してくれた人とやりとりをし、時間と場所を調整の上、車とカギを貸し出します。非常に手間です。

解決策3.貸し借りを無人・非対面化

これはすでに対策されていますが、コスト増です。Anycaでも無人貸出機器AnycaKEYが導入済 ※月額1650円
こちらは弊社のカタレン自社車両でも導入し運用しているものと同一で、トヨタグループの東海理化と言う会社が開発したもので、信頼性も非常に高いシステムです。
もっとアナログに不動産の内見の時のようにキーボックスがどこかに掛かっている事もありますが、カギごと持って行かれる可能性もあり、利用が終わったユーザーを無効にする事もできません。
その点、デジタルキーであれば、遠隔でキーを無効にもできますし、そもそもカギを渡さないので、セキュリティ上も安心です。

出典:Anyca HPより

このようにいくつかの対策が考えられ、組み合わせる事でまだ個人間カーシェアの未来はあると考えます。

未来のカタレンチームメンバーへ

カタレンはシェアリングだけでは解決できない、シェアリングの負の部分・社会課題を解決しつつ、我々ユーザーとしても便利になるサービスを目指しています。
新しい体験を作る上で重要になるのが、日々仮説検証を繰り返して、より良いサービスを作り込むメンバーの皆さんです。
ご興味頂けましたら、我々がどんな世界を目指しているのか、私が何者なのか、是非こちらの記事もお読みください。

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