世界は日本を買いつづけるだろうか?
平日の昼下がり、テニスラケットを買いに、梅田のテニス専門店にいった。店内は混在している。海外の人、とりわけ中国からお客さまが多い。店の人を探すも、全員、接客している。お客さまの中国人は、店員のテニスラケットの説明をスマホで誰かに伝えている
ライブ配信で紹介販売する中国のライブコマースなのか、中国にいる普通の観光客なのか分からないが、なぜ日本にいる中国人のスマホを通じて日本人の販売員の説明を聴き、中国にいる中国人が買うのだろうか?為替レートで割安なこともあるが、それだけではないだろう
1 中国人が知っていた日本の強み
中国人は日本に来て
iPhoneを
日本のiPhoneショップで買った
マクドナルドも
日本のマクドナルドで
食べることに、意味がある
とコロナ禍前に言っていた
日本のマクドナルドは
「洗練」されているので
アメリカのマクドナルドではなく
日本のマクドナルドで食べることに
価値があると
中国の友人がいっていた
セブンイレブンもマクドナルドも
アメリカ発であるが
日本の経営が入ることで
「洗練」されて成長したことを
中国人は知っていた
ナイキも
オニツカタイガーの
アメリカ販売委託契約店から
スタートしていることも
レッドブルも
リポビタンDからヒントを得たということも
中国の多くの人は知っていた
もっと中国人は知っている
サーティーワンアイスクリームも
ミスタードーナツも
マックスファクターもみんな
「Japan Made」であり
日本で「本物」になったということを
それは海外のモノの物真似
では決してなかったことを
今はそうではないことが
増えている
2 日本的なものの正体は「フィルタリング」
日本は、海外から入ってきた
モノ、コト、技術を
日本人の感性によって
磨きあげ
洗練さ、心地よいものへと
進化させてきた
中国で製造したiPhoneなのに
中国人は日本の店で買った
中国の人からすれば
「日本にあること」
「日本で売っていること」
「日本で買うこと」
に意味があった
それはかつて
日本人がブランドの洋服や鞄が
日本の店にもあるのに
わざわざイタリアやフランスや英国に
買いに行っていた行動と似ていた
中国やアジアの人々にとって
日本に置かれている「もの」は
自国と同じ「もの」ではない
と見えた
だから買った
日本の店に、それが
並べられているということは
日本人の価値観という「フィルター」で
選ばれたものだったから
日本人の「フィルタリング」がかかり
ブラッシュアップ、磨きあげられて
店に並べられているのだと
思っていたから
受けとめたから
これらの日本的感性・感覚は
目に見えないもの
だれかに教えられたわけではなく
日本人が日常生活のなかで身につけてきた
ものだった
「デザイン」とか「美的センス」
というような月並みな言葉で
ではなかった
お客さまからどう見えるのか
お客さまにどのようなことをしたら
喜んでいただけるのか
お客さまにいいなと
おもっていただけるのか
心地よいと感じられるのか
というお客さまを想う、想像力が
鋭敏な感性・感覚を磨きあげてきた
相手のことを想う
相手のこころを想う
という想像力が
美術、芸術、芸能だけでなく
生活のなか
モノづくりや商いのなかで
日本的な「フィルタリング」として発揮され
練り上げたもの
磨きあげられたものを
つくりつづけた
海外から日本が評価されてきた
日本的なるものの正体のひとつが
この「フィルタリング」だった
このフィルタリングをつくりあげたのは
海外からのコードをモード化する翻訳能力だった
このコードをモード化して
フィルタリングしてきた力を
日本人は失いつつある
3 それが日本発であることを忘れた日本人
日本的なものが世界に拡がった
世界でビジネスに成功する人や企業の多くが
日本を「通過」していることが多かった
世界から日本に来て
ビジネスのアイディアを得たり
日本的なモノ・コト・サービスを使って
世界で成功している
それは日本で
起業する
会社をつくる
というのではなく
日本に来て見たり聴いたりして
感動したこと
感激したこと
思いついたこと
を軸に世界で事業を始めて
成功しているビジネスが多い
それを日本企業が始めたことを
知らない現在の日本人が増えた
日本人が考えたモノ・コト・サービスが
世界を席巻している
日本に来て
なんて便利なのだ
なんて心地よいのだ
なぜこんなことができるのだと驚いた
そんなことは絶対にできない
と思っていたことが
日本ではできている
世界は
日本人が
お客さまにとって良いこと
便利なことはなんだろう
ということを想像して
つくりあげていくサービスが
日本人に共感をもって
受け入れられている姿を見て
すごいと驚いた
その仕組み、やり方を
自分たちの国に置き換え
よりよいモノ・コトにして
成功している
「中国にモノを送ったら
送りたいところに届くか心配だ」
と今も言っている人がいる
そんなことはない
広大な中国に正確に着く
中国からも日本に
正確にモノが届く
アリババの独身の日のネット通販での
物流も混乱なく行われている
アリババは、日本から学んだ
アリババのサービスと物流・配送システムは
日本の物流・配送ステムに学んだ
どういう情報を提供したら
消費者が買ってくれるのかを学び
それを巨大な中国マーケットで
展開して、成功した
それは「日本に教えてもらう」
というような立ち位置ではなかった
日本に来て感動したこと
感激したことを軸に
日本のビジネス・サービスの本質をつかんで
中国で展開するから
日本人はかなわない
世界から日本に来て
日本製品や日本のサービス
日本の様々な事柄に触れて感激し
それをもとに
自分たちの事業・商売を転換させた
ビジネスマンだけではない
外国人観光客が
日本に来て見て聴いて感じて帰るから
日本由来の商品・サービスを
受け入れる素地ができ、成功している
それが、世界のやり方を
日本企業が学びにいくようになっている
4 「自分は何者か」を見つめ直す
なぜ日本はそうなったのか?
自分たちの出自を見失っている
自分たちはどこからスタートしたのか
を見失っている
会社はどうやって伸びてきたのか
自分が新入社員のときに
お客さまにどのように
育ててもらったのかを忘れて
はじめから、現在があったかのように
勘違いをしている
金があるから成り立つ世界観
になったので、テクニックに走る
だから事業の進むべき方向を見誤った
下積みや価値観が共有できなくなると
会社はダメになる
世界の新しいビジネスに対して
「そんなもの、日本の物真似だ」
「あんなの、かつて日本で検討していた」
などといっているうちに
世界から取り残された
自分たちは何者かを
見つめ直さないと
戻れないのではない
まだ間に合う
気がつけば