新卒社員の「会社を辞めたい」にどう対処すべきか
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新卒社員の「会社を辞めたい」にどう対処すべきか

碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)

入社早々、転職を考える新卒社員

「新卒3年3割」と言われるように、新人の離職は珍しいものでもなくなってきた。とはいえ、新卒社員の早期離職は企業にとって見過ごせない問題だ。しかし、現実には中々、厳しい状況にあるようだ。

ディスコの調査によると、入社1年目の社員が2月時点で「転職を検討」しているのは約4割であり、実際に転職活動中が4.5%いるという。

転職を考えている新入社員の理由は、「収入を上げるため」が40.4%で最も多く、「自分の能力や適性に合わない」と答えた人が約3割と続いている。どちらも、入社前の期待と後の現実とのギャップ(リアリティ・ショック)でよくみられる声だ。

リアリティショックの3つの側面

甲南大学経営学部の尾形教授は、リアリティ・ショックには多面性があると述べている。

① 既存型リアリティ・ショック・・・楽観的な、あるいは非現実的な期待に対して、それに反する厳しい現実が待っていた場合に遭遇する現象
② 肩透かし型リアリティ・ショック・・・自分自身を鍛えてほしいために、厳しい組織現実を期待していた個人が、実際は自己成長を促すような現実ではなかったときに遭遇する現象
③ 専門職型リアリティ・ショック・・・厳しい組織と仕事に対する覚悟があるが、予想以上に過酷な現実が待っていた場合に遭遇する現象
出所:尾形(2008)

既存型リアリティ・ショックを防ぐには、日経の記事にもあったように、インターンシップや入社前の交流会などで事前に多くの情報を与えて、楽観的であったり、非現実的な期待を是正することが有効な手段だ。例えば、「収入を上げるため」というのは、入社1~2年目の若手社員と交流させて、どのような生活ぶりなのかを知ってもらうことで防ぐことができる。

その一方で、厳しい現実を入社前に意識しすぎると、今度は逆に肩透かし型のリアリティ・ショックが生じる危険性もあるので程度が肝心だ。

肩透かし型リアリティ・ショックを防ぐには、人材育成のやり方を見直す必要があるだろう。新入社員の早期離職でよくある悩みの1つが、「仕事を覚えたとたんに辞められる」だ。特に、成長スピードが早かったり、目に見える成果を出す期待の新人ほど、新しい成長機会を見つけて飛び出してしまう。社内公募制や手上げ式研修は、こういった成長意欲の強い従業員の期待値を調整するのに有効だ。

専門職型リアリティ・ショックは、看護学生を対象とした調査で明らかになったリアリティ・ショックだ。看護学生は、その教育課程で仕事が厳しいことは教えられ、楽観的や非現実的な期待を持っていることはほとんどない。厳しい仕事だという覚悟を持って職に就く。しかし、それでも現実の厳しさについていくことができずにリアリティ・ショックを感じてしまう。「話に聞いていたのと、実際にやってみたのでは違う」というタイプのギャップであるため、このギャップを乗り越えるためには職場の同僚や上司からのケアが重要になる。

タイプに応じて対策をとろう

せっかく入社してくれた新卒社員には、会社での生活を楽しんでもらい、充実した社会人人生を歩んで欲しいと思う経営者や人事がほとんどだ。しかし、現実には約4割の新卒社員が「辞めたい」と真逆の反応を示している。

まずは、新卒社員が「なぜ辞めたい」と思うのか、その原因を探る必要があるだろう。そして、その原因がリアリティ・ショックを生みやすい組織の在り方に起因するのであれば、対策を講じる必要がある。入社前に情報を与え、学生の楽観的かつ非現実的な期待を抑える必要があるだろう。また、入社して肩透かしとならないように、入社直後の仕事内容や訓練機会、社内異動の仕組みに手を加える。また、看護師の様にそれでもギャップに苦しむ新入社員のために、上司や同僚が相談相手となって解消していく。

しかし、リアリティ・ショックには良い面もある。それによって、学生気分が抜けて、社会人として地に足のついた考え方を身に着けることができる。リアリティ・ショックを防ぐとともに、リアリティ・ショックに悩む新入社員を乗り越えてもらうための支援も必要だ。職場内のコミュニケーションで解決できるなら良いが、人事の担当者が現場に出て聞き手となることも時には必要となる。

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碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)
大分大学経済学部の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピック:採用や育成等の人材マネジメント、新規事業開発など)※日経電子版キーオピニオンリーダー ※コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。