ぶれないECB、この先の注目点は?
この数週間の経済指標がほぼECBの予想通りであり、ラガルド総裁や他のメンバーの発言が断固としたものになっていることも勘案すると、ECBが6月の理事会会合で中銀預金金利を25bp引き下げることはほぼ既定路線。既に織り込み済みであるがゆえ、大きな高揚感はない可能性が大きいが、今後をどう読むかは注目したい。
経済活動が勢いを取り戻している上、妥結賃金の伸びが第1四半期に再加速している状況でなぜ利下げを実施しなければならないか、というと理由は3つ。第一に、基調的なインフレ率の指標は2%に向けて低下し続けていること、第二に、ECBは自己モデルへの信頼を取り戻しており、四半期ごとの予測分析力に自信を持っていること(それによりディスインフレの進行を信じている度合いが強まっている)、第三に市場の期待がすでに6月の金利引き下げを十分に織り込んでしまっていること、があるためである。
7月の会合はどうなるか。ECBはおそらく6月会合にて、真に経済指標次第であるとするアプローチに近づき、あらかじめ決められた道筋はない、というメッセージを繰り返すことになるのではないか、と想像する。ECBは重視する経済指標のトライアングル(賃金、企業利益、生産性)やインフレ見通しの評価等を総合して、今後の政策を決めていくという点を透明性高く示している。足元の経済指標よりも基本予測を重視することで過剰なボラティリティのリスクも低下することになる。
結局、暗黙のメッセージとして7月利下げの可能性は低い、ということではなかろうか。6月の利下げ以降、次の会合までに追加されるデータはごくわずかで、インフレ統計は6月の速報値と改定値の発表があるに過ぎないため、決定する要素にかける、ということになるためだ。ゆっくりとした利下げ局面(これから2年間、3回ずつの25bp利下げイメージ)に入ることを確認することになる。
こうした利下げサイクルが予想より迅速なものになるリスクとしては、基調的なインフレ圧力の減速が早まること、一方、利下げサイクルが予想より緩やかになるリスクとしては、ECBが重視するトライアングル三指標のうち、どれか一つが緩和されない場合、ということになろう。
ラガルド氏は難しいかじ取りの際にも揺るがない。うまくマーケットとの対話もしてきた。この先がどうか、にも引き続き注目である。
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