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『地球OS書き換えプロジェクト』に参加して感じた、未来へつながる3つのこと

お疲れさまです。uni'que若宮です。

今週土日と、東邦レオの吉川社長にお誘いいただき、『地球OS書き換えプロジェクト』というのに参加してきました。

『地球OS書き換えプロジェクト』は、隈研吾さんのハーバードビジネスレビューでの「今こそ地球のOSを書き換えよ」という課題提起に東邦レオの吉川稔さんが反応し、そこにパノラマティクスの齋藤精一さんが参加、という、流れだけきいても何だそれ絶対面白いだろっていうあれです。

今回の実証プロジェクトでは東京の大手町と北海道の東川町、大阪の中津、香川県三豊市の父母ヶ浜の四拠点を10日間にわたり接続し、「情報」「ウェルネス」「食」「働き方」「観光」などについて拠点を横断して語り合うというプログラムが行われ、僕はこの中で「食」「働き方」「観光」のセッションに参加しました。(隈さん斎藤さん吉川さんや林信行さんの他、先週金曜には小室哲哉さんや、日本を代表するシェフのハル山下さん、インテリアデザインの重鎮・森本恭通さんなど豪華なゲストがよくわからず巻き込まれるというゴーカかつカオスなプログラムでしたw)


「ロングテーブル」がつなぐもの

このプロジェクトのシンボリックな仕掛けとして「ロングテーブル」というのがあります。よくあの大富豪のお屋敷みたいなとこにあるやつですね。お父様と娘がすごい遠い位置にいてそれむしろ会話しづらくねえ?みたいな。あるいは舞踏会とかの夕飯時に来賓みんなで囲むやつ、それがロングテーブル。これをですね、エリアのちがう4拠点でバーチャルに結ぶという仕掛けです。

↓こんな感じです。(気づいたら僕ちゃんと写真撮ってなかったので、4拠点すべてに参加された猛者、アリッサさんのtweetを拝借)

伝わりますでしょうか?

隈事務所がこのためにつくった木材を組合わせたテーブル(屋根にもなる)を各4拠点でZoomでつなぎ、Zoomの画面の向こうにもテーブルがずーっと続いているような感じにつないである。

丸の内のテーブル(1m x 8mくらい?)の両側を挟むようにスクリーンが置かれ、右奥には北海道の東川、左をみれば父母が浜、みたいな感じになっているわけです。で、各拠点で誰かが話すたび右を向いたり左を向いたりしながら話を聞く。最初はどっち見たらいいのか定まらずちょっと落ち着かない感じもあるのですが、これが予想以上に面白い体験で、画面越しにテーブルや屋根がつながっているだけなのにそれだけで不思議なほど空間に一体感がある

また、今回4拠点だったので両側だけだと接続先が足りず、時々もうひと拠点とZoomの画面を切り替えたりするのですが、これもちょっと不思議な体験でした。

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やってることは単にZoomで各拠点のスポットライトを切り替えてるだけなのですが、隣の席が時々ぱちんっと切り替わって別の空間につながるんですね。LaQueっていうパズルトイみたいなのがあるのですが、ちょうどそんな感じでぱちんぱちんとつなぎ直されて、空間が伸縮したり変化する感じがある。

この「フィクショナルに接続されたひとつの空間」の感じが面白くて、いつもの一人ひとりが画面に向かっているZoom会議だと味わえない「空間-間の相互還流」そして「そこに居る」という感じがありました。

以前、オフィスはこれから「編み物」になるんじゃないか、という話を書いたのですが、まさにそんな体感というか。

空間的距離を超えてつながりつつ、その空間のカタチが柔軟に変化する。「編み物としての建築」の条件に

1)編み目が必要である
2)伸び縮みする
3)ほどいて編み直せる

という3点をあげていたのですが、本当にそんな感覚がありましたし、それが「ロングテーブル」という仕掛け一つで実現されていたのがほんと発明かも!とおもいました。


「仕事」と「生活」のRe:接続

実は先月くらいに「よかったらおいでー」的に吉川さんに誘われただけだったので単に聴講者のつもりで土日参加したのですが、流れで急遽「働き方」のセッションに登壇側になり古田秘馬さん、三菱地所の井上成さんと一緒にトークすることに。プログラム開始の10分前に出て!と言われたので、まったく心の準備ができてなくて焦ったのですが、トークはとても楽しかったです。

古田秘馬さんがそもそもめちゃくちゃ面白い大人なのですが、働き方も相当に面白い。

この三豊市父母が浜とかもそうですが、秘馬さんは面白そうな場所をみつけると、まずそこに拠点をつくってしまうらしいんですね。で、今も3拠点とか4拠点とかで活動されている。そんな秘馬さんの話には「新しい働き方のOS」のヒントがたくさんありました。

参加者の中からは「移動しながら働くって楽しいけどけっこうしんどい」「五感を含めて情報量が多すぎて追いつかない感じもある」とか「都会のオフィスみたいに集中できなくて仕事が進まない(笑)」というような話も出ていました。

うちの会社もそうですが、「複業」や「リモート」って慣れていないと一見効率が落ちる感じがするんですよね。体質改善時の好転反応とかタックマンモデルみたいなもので、新しい環境とか条件と馴染むにはある種のトランスフォームが必要なので、そこで一時的にパフォーマンスがさがったり不安が出る。でもその体に慣れていくとそのOSでのパフォーマンスの出し方がわかってくる。

また、秘馬さんとのお話では「暇」や「余白」っていうことも話題にあがって、いわゆる効率的な仕事の時間ではない「一見非生産的に思える時間」の大切さについてもすごく共鳴しました。

そして仕事における「暇」とか「余白」のヒントって「生活(くらす)」との関係にあるという気がするんですよね。

最終日の総括のディスカッションで、ロングテーブルつないでると「丸の内が一番つまらなそう」という話が出たのですが(笑)、丸の内から他の拠点みてるとめっちゃ楽しそうなんです。クラフトビール飲んでるし美味しいみかんとか赤福食べてるし、凍えて屋根おさえてるし、夕日が沈んでいくし。丸の内の会場の「3 x 3 Lab」もキッチンがあったり普通のオフィスとはけっこうちがうリラックス空間ではあるんですが、でもやっぱり変化が少ない。そこに「生活」の感じがあんまりない。

僕はこれからは、「生活(くらす)」ということと「仕事(はたらく)」ということがどんどん近くなってくると思っています。オフィスが今回のロングテーブルのような仕組みによってケアハウスとか、学校とか、誰かの自宅や縁側とつながっていく。「はたらく」と「くらす」が相互還流してくる、そういう可能性にわくわくします。

あと最近よく、未来を決める場所や未来を考える場所に「未来の主役」である子供たちがいない、という話をすることがあります。このロングテーブルの仕組みを使えば、世代をも超えて「生活」と「仕事」を接続することも可能です。変な大人と子供が出会ったり、大人が変な子供に触発されたりして、「仕事」がもっともっと面白くなっていく気がします(そんなんじゃ仕事にならなくない?と思うかもしれませんが、それは多分「今のOS」で考えているだからだとおもいます)


ブリコラージュ・ネットワーク

もう一つ印象深かったことに、「COP2」というお話がありました。何かっていうと、「紙コップ2つ」っていうことです。

ってだけいうと何にもわかんないとおもうのですが、↓の写真でみえますかね…

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拡大すると、こんな感じ。

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何かというと、Zoom用のカメラを紙コップ2つで嵩上げしてるっていうだけなのですが、斎藤さんが最後の総括で触れられていてそれがとても印象に残りました。

これ、プログラムの開始当初はなくて、接続されている中でどこからともなく「ちょっとカメラ低いね、こうしたらどうだろう?」と自然発生的に生まれてきて、各拠点にそれが伝播し、その会場ごとに現場にあるコップでつくられたんだそうです。

斎藤さんもおっしゃっていたのですが、このソリューションの生まれ方がすごい面白いと思いました。なにが面白いって、規格化・標準化みたいな普遍性と場所ごとのローカルな個別性が共存していることです。通常、デジタルの情報は、コピーペーストされ、まったく同じものが量産されていくところにメリットがあるわけですが、一方でそうしてつくられたユニバーサルやグローバルってどこか抽象的で無味乾燥なものになってしまう。でも、紙コップのソリューションは各拠点でそれぞれちがうわけです。アイディアというかコンセプトは共有されつつ、ソリューションやエグゼキューションは個々にローカルにその場で組まれる、こういうあり方がこれからのソサイエティにとって一つのモデルになるのではと。

また、これは最近改めて考え直している「ブリコラージュ」的なあり方とも通じている気がします。

各地の風土や文化の中でそれぞれにちがった神話が生まれるように、そして、にもかかわらずそれらがある種の普遍性を備えているように、「道具材料と一種の対話を交わし、いま与えられている問題にたいして」「ありあわせの材料を用いてブリコラージュを行う」、そうした「器用人」的な態度で課題に向かうこと。そしてルールや標準化の前に「ありあわせ」の創造を楽しむこと。

COP2のエピソードは、そうしたソリューションのあり方の可能性を示唆してくれた気がします。


組織は「システム」から「ティシュー」になる?

また、今回のプロジェクトの組織のあり方も面白かったです。基本的には中心となる吉川さんの呼びかけによくわからないままに集まってきた大人が、吉川さんの「むちゃぶり」に右往左往しながらプロジェクトが進行していく、という感じでした(笑)。

それは計画性や予め定められた「一つのビジョン」のようなものを持ちません。むしろその時その場の「むちゃぶり」に反応しながら変化していく。こういう組織のあり方自体にもOSアップデートの可能性が秘められていると感じました。

先ほど引用した「ブリコラージュ」の記事にも載せていますが、僕はこうした組織を「機械的組織」と「身体的組織」のちがいとして考えています。

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そして、組織においても「計画」よりは触発的に変化する「余白」や「動的な塑性」が大事だと思っています。

普通、「仕事」において「組織」というとルールが定められた「システムとしての組織」を想像します。『世界のおわりとハードボイルド・ワンダーランド』でも「組織」には「システム」とルビが振られていましたよね。

でもこれとは別に「細胞組織」や「生体組織」としての「組織」のあり方もあると思うのです。英語辞書を引くと「cellular tissue」とか「biological tissue」とか「tissue」なんですよね。「ティッシュ」の「tissue」なのですが、「織りあげられるもの」っていう感じで、「システム」的な上下関係や縦割りではなく、それぞれがあつまって折り重なっていく

斎藤さんが最後に、

「OS」というと標準化された大きなルールをつくるのをイメージしてしまうけど、COP2のようにアプリケーションができて、そこに事後的に共通した基盤が生まれてくるような感じ

みたいなことをおっしゃっていたのですが、次のOSはもしかしたら「オペレーティング・システム」という「システム」的なあり方からも逸脱していくことなのかもしれません。

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「食」のテーマではハル山下さんがコロナ禍で苦境が続いている飲食店の横のつながりと生産者も含めたつながりをつくり、コロナを乗り越えその先の新しい形へとアップデートしていこうと「日本飲食未来の会」をつくられたお話を伺いました。

「観光」というテーマでは、古田秘馬さんから、「これまでの観光は過去をみせて人を呼んでいる。しかしいま、特に過去の遺産がなくてもこれからなにか面白いこと始めていこうとしている場に人が集まり始めている。これからの観光は未来をみせることが大事」という名言もありました。


まちや文化、生き方の「未来」。少しだけの参加でしたが建築やベンチャーやアート界隈をふらふらしている身としていろんな刺激をもらい、「はたらく」や「ソリューション」や「組織」の「未来」につながる可能性をたくさん感じた『地球OS書き換えプロジェクト』でした。これからの展開も楽しみです。

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