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儲けるためには「見知らぬ庶民の苦しみなど知ったことではない」という思考性

経団連のおっさんがうるさい!
毎日のように「消費増税」の話ばかりしている。

日経は経団連に忖度するような大人しい内容で書いているが…

多くの国民が感じているのはこっちの記事の温度感に近いのではないか?

経団連の十倉雅和会長がずっと言い続けていることは、簡単にいえば「法人税はあげない。消費税はあげろ」であり、「俺たちは得するが、お前ら国民は知らん」という話である。
そもそもこの御仁は「消費税19%まであげろ」とずっと言っている人だ。

何も私は共産主義者じゃないし、マルクス主義かぶれの変な学者とか大嫌いで、どこぞの政党みたいに消費税をゼロにしろとまではいわないが、タイミングというものがあるだろうという話である。
30年間可処分所得が増えず、昨今の物価上昇で、むしろ手取りが減っている状況下でかつての中間層がもはや「自分達は中間層ではない」と実感してきている。そうなると消費が低迷する。事実、消費税や物価を考慮すれば、消費支出はコロナ前より下がっている。

そんな中で、消費税をあげろとか言い出して、「このおっさんは何を言ってるんだ」と思うかもしれないが、このおっさんは消費税をあげた方が儲かるからそう言っているのである。海外輸出の際の還付があるから。円安でも儲かるし、金利ゼロも助かる。つまり、今の政策は経団連にしてみれば希望通りなのだ。
要するに「庶民の生活など知ったことではない。俺らが儲かればそれでいい」という理屈だ。

これと似たようなスタンスの経営者は歴史上にたくさんいる。

その中で、経団連のおっさんとは比べようがないほどレベルの違う経営者だが、第一次世界大戦の頃のアメリカに「ウォール街の帝王」と呼ばれた米国5代財閥のひとつであるモルガン家のJPモルガンジュニアの話をしよう。

モルガンジュニアは第一次世界大戦中、イギリスとフランス政府に対する戦費の融資を行っていた。戦争は金がかかるからだ。しかし、融資をした先が負けてしまっては貸し倒れになってしまう。当初、参戦に乗り気ではなかったアメリカ大統領ウィルソンをけしかけたのも彼だという話もある。

思惑通り、アメリカの参戦によってわって連合国側は勝利する。
当初、ウィルソンは講和条約締結にあたってドイツなど敗戦国に多額の賠償金は求めない方針だった。当時、経済学者ケインズも「賠償金を求めてはいけない」と言っている。
しかし、それに真っ向から反対したのはモルガンジュニアで、なぜなら、その賠償金によって戦争中にヨーロッパに貸し付けた資金を回収しようとしたからだ。大統領はそれに押し切られる。それくらい当時のモルガンは力を持っていた。

結果、モルガンジュニアはドイツの賠償金管理会社までやって、きっちり元を回収したわけだが、そのおかげでドイツ国民はとんでもない苦しみを味わうことになり、それがやがてアドルフ・ヒトラーを生み出してしまったとも言えなくもない。

ちなみに、モルガンジュニアは日本にも融資をしている。1923年の関東大震災に際して復興のための融資だ。決して慈善心からではない、あくまで融資ビジネスとしてである。日本政府がこの融資の返済を終えるのは高度成長期までかかった。

ところで、あの有名なタイタニック号の実質的オーナーはモルガン家である。絶対に沈没しない船といわれたタイタニック号がなぜ沈没したのかについては、いろいろと噂話がある。

タイタニックには姉妹船があり、そのもうひとつの船が事故を起こしている。実は、沈没した船はこの事故船であって、本当のタイタニックではない、と。使い物にならない事故船では儲からないので、タイタニックと入れ替えて、あえて沈没させて巨額の保険金をだまし取ろうとしていたのではという噂もある。実際、絶対に沈まないというタイタニックに対して払う保険金としては異常に高かったからだ。要するに保険金詐欺。

当初、タイタニックに乗る予定だったモルガンの父夫婦が直前でそれをキャンセルし、モルガン家に近しい友人たちも一斉に直前キャンセルしている。

真偽は不明だが、まあかの家の「金の亡者」ぶりからすれば「さもありなん」と納得してしまう話だ。

自分らが得をするためには、見知らぬ誰かの命が失われても一向にかまわないのである。自分の今後の利益となる仲間は助けるが。

そんな彼も1929年の世界恐慌で大損害を受けるのだが、その後開かれた米国下院の公聴会で、「あなたは所得税を払っていないのですね」と問われ、堂々と「はい」と脱税を認め、大非難を浴びた。

金儲けをするのは構わないが、金を持っていれば何をしても許されるということではない。

モルガンジュニアは全盛期にこんなことを言っている。

「私の仕事は私の知る限り世界中で一番面白い、どこの国王、教皇、首相になるよりもずっと楽しい。なぜなら、誰も私をそこから追い出せないし、私も信念を曲げる必要が些かも無いからだ」

資本主義の中における独裁者のようなものだ。しかし、それは資本主義が悪いからではない。民主主義の中でもヒトラーのような独裁者は生まれる。それは決して民主主義が悪いからではないように。

経団連の会長くらいなら当然知っていると思うし、釈迦に説法だと思うが、近江商人の「三方よし」をもう一度かみしめてもらいたい。「売り手よし・買い手よし・世間よし」の三番目が商いをやる者の役割と責任なのである。経団連の会長がどれだけ人間的に優れているかなんて知らんが、少なくとも金を多く動かせる者にはそれだけ大きな社会的な責任がある。

こちらの過去記事もあわせてお読みいただきたい。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。