声を挙げることは「文句」ではない。システムやサービスをよくするためには、「バグ出し」と「ユーザーの声」のフィードバックが重要です
お疲れさまです、uni'que若宮です。
今日は「ユーザーの声」の重要性について改めて書きたいと思います。
文化庁の補助金に対して声を集めて届けてみた
僕はベンチャー企業経営の傍ら「アート思考」などアートと社会やビジネスの結び目をつくる活動も行っていますが、昨年、コロナ禍で困窮するアート業界に収益と表現機会をつくるべく、ARTS for the Future!(以下AFF)という文化庁の補助金に申請し、ART THINKING WEEKというアートイベントを主催しました。
その顛末は↓にも書いたのですが、
AFFでは、アーティストや現場スタッフに補助金を分配しようとイベントを企画・主催した団体が多く負債を抱えることになってしまいました。
大きな問題点は、以下三点。
①審査期間が一方的に大幅遅延したこと
②募集要項が曖昧であり、よくわからない理由での不採択が多発したこと
③事務局の質疑対応にばらつきや不透明さが多かったこと
AFFの補助対象のアートイベントは比較的大きな規模であったため、出演者・会場スタッフ含め多くの人が関わります。審査結果が遅れたり、イベントの実施後に「不採択」という結果がくれば団体が負債を被るか、あるいは出演料をカットするなど個人のアーティストが苦しむことになるか、どちらかです。
弊社では幸いなことにイベント実施後に「採択」がでたので(12月に実績報告をしたのに未だに返答はなく補助金の金額は確定していないのですが…)、自社で集めた450万円の協賛金を負債団体に無償分配しました。
そうした中で各団体からの声を聞き、やはりこれは制度的な問題があるな…、という想いを強くしました。納得のいく理由なく不採択にされたり、手引や事務局の案内どおりに申請しているのに不採択や減額にされたり、あとからFAQでしれっとルールが追加されたり(領収書の芸名の扱いなど)、他の補助金に比べても制度にかなり問題が多かったように思います。
「補助金はあくまで補助なんだから不採択でも仕方ないでしょ」とか「そもそも補助金がなくても事業が回るようにすべきでしょ」という声もあると思いますが、今回の補助金は振興のための補助というよりコロナ禍への困窮の支援がメインです。業界として集客や出演の機会自体が減っていて、いつもどおりの収支が望めないからこそ予算取りされた補助金です。
もちろん、税金ですし予算には限りがあります。すべての団体を補助金で救うことはできません。しかしだからこそ、納得性がありちゃんと活用できるような制度設計が必要です。こういってはあれですが、2021年のAFFは「コロナ禍で大変なみんなを補助しますよ」と手を差し伸べてくれたところまではありがたかったのですが、いつまで経っても結果が出ず、あるいは事後的に「やっぱり払わない」と言われたりで、結果として補助金があることで芸術団体の負債を増やしてしまったようすら思えます。
これは本当にもったいないことです。せっかく税金を使いながら救われる団体以上に負債団体をつくったのでは逆効果です。
自社でもこの状況を身を以て経験し、このままではいけない、と署名を集めたところ1,400近い署名が集まりました。
集めた声をもとに要望書を作成し、
まずはAFFについて昨年発言をされていた藤末健三議員に提出。議員を通じて文化庁に届けていただけることになりました。(こうした活動は初めてだったので、要望の挙げ方やロビイングについては日本ブロックチェーン境界の樋田 桂一さんに色々教えていただきました)
「ユーザーの声」でサービスやシステムは変わる
こうしたアクションを起こしてみて改めて感じたことは、「声を届けることの重要性」です。
議員に要望を伝え、意見交換する中で、当たり前ですが文化庁のみなさんに悪意はなく、補助金に関して悩みながら制度設計されていること、また議員としても政策を考えていく上で、利用者からの生の声をむしろ求めていることがわかりました。
これはよく考えれば当たり前のことで、僕自身、事業者としていつも感じていることです。自社はITベンチャーなので特にそういうマインドが強いと思いますが、インターネットサービスの場合、サービスやシステムは常に改善し続けるべきもので、ここまで行けば100点ということはありません。
だからこそ、「ユーザーの声」はとても貴重な経営資源です。もちろん、できるだけ商用開始までに社内でデバッグやテストはするのですが、すべてのケースを100%想定することはできませんから、どうしても実際に使ってもらって初めて見つかるバグというのはあります。だからしょうがない、という意味ではなく、ユーザーや提供者を取り巻く状況や環境も変化しますから、原理的にサービスやシステムは完璧ということはないのであり、だからこそユーザーのみなさんからフィードバックを受けつつ改善していくことが大切なのです。
同じように考えれば、文化庁の補助金もコロナ禍という先例のない状況で大急ぎで制度設計をされたものであり、その短期間でも電子申請にしたことや全額補助に踏み切ったことなどすばらしいチャレンジもたくさんあります。とはいえ、初めての設計であればサービスやシステムにバグや想定しなかった不具合が生じるのはほとんど不可避だとも言えます。
繰り返しますが、だからこそサービスやシステムを改善していく上で「ユーザーの声」は宝物なのです。
僕は実はこれまで政治には疎く、署名活動のようなことですら政治的な行為には距離をとってきたようなところがあります。しかし、今回の経験で僕は「利用者がちゃんと声を挙げる」ということはとても大事なことだと改めて確信をいたしました。いくら国の機関といえど完璧にシステムやサービスを設計することはできません。だとすれば、それを改善していくには「ユーザーの声」しかないからです。
また、今回署名活動を含め声を挙げていて「文句を言うな」というような声をいただいたりもしました。しかしこれは「文句」ではなく、改善のためのアクションにほかなりません。
未来の改善に向けて声をフィードバックしよう
もう少し言えば、声を挙げるにしてもただ「使いづらい」「ここがダメ」とダメ出しをするだけに留まらず、もっとこういう風にしてほしい、と次なる改善に向けて声をあげることが重要だと思っています。
文化庁AFFについていえば、2/15に2022年の予算から「ARTS for the Future!2」の募集要項が公開されました。
昨年のように、終わってから困った!というだけでなく、フィードバックとして事前に伝えることが大事だと考え、これに対しても要望を出すことにしました。
そこで昨年AFFの申請を多数手がけ、積極的に情報を発信されていた文化芸術専門の行政書士やこさんにお声掛けし、
一緒に要望を取りまとめて山田太郎議員にお伝えしました。
↓
わざわざ写真入りでこういうことを書いているのは「見てみて、おれ議員さんに会うてきたでえ」とドヤ顔をしたいためではありません。
サービスやシステムを改善したければユーザーとしてちゃんと声を届けることが大事だし、提供者側もそれをとても求めている。「代議士」である議員の皆さんは真摯に声を集めればちゃんと聞いて動いてくれるんですよ、というのを方法論として知っていただきたいからです。(そしてもう一つには、署名にご賛同いただき声を託してくださった方たちに対し、こうした形で声を届けましたよ、というご報告でもあります)
(両議員からは
・AFF2での条件をもっと柔軟にする
・文化芸術活動の継続支援事業のように個人を支援する制度を再開する
・文化庁から明確に不明点について回答を得る
ために働きかけていただけるとのことです。特に今回は「随時募集」になったのもあり、募集開始前の働きかけが重要だとおもっています)
本件に限らず、たとえばジェンダーギャップのことや選択的夫婦別姓などについてもそうですが、国の制度などに声をあげると「不満」とか「文句」と捉えられがちなところがある気がします。しかし、繰り返しますがサービスやシステムには必ず「バグ」や「不具合」があります。であれば、「バグ出し」やフィードバクをすることは当然であり、それはサービスやシステムの改善に必須のものです。
コロナ禍で「不要不急」ともいわれた文化芸術にちゃんと予算をつけ、補助金を実施した文化庁の想いは尊敬・尊重すべきものです。しかしだからこそその想いが無駄にならないように、その想いに答えればこそ、一緒に改善しようとする気持ちがが必要だと思うのです。(思い入れのあるサービスやお店だからこそ、フィードバックをするようなものです)
若手を含めた職員全員の団結力を心底感じたのは20年。新型コロナウイルスの感染拡大で日本社会、いや世界が危機に直面した時だった。同年2月以降、あらゆる文化イベントが中止や延期・規模の縮小を余儀なくされ、文化芸術が「不要不急」とも見なされる。この未知の感染症によって「自粛」を呼びかけざるを得なかったのは、長官として痛恨の思いしかない。職員みな同じ気持ちである。
こうした声がきちんと改善につながるためには両者ともに前向きである必要があります。
まず、提供者側は、ユーザーの声を集めることを努力し、真摯に聞く姿勢を持っていなければいけません。
そしてユーザー側も、ただストレス解消のために不満やクレームをぶつけるのではいけません。また、ユーザーとして声を届ける際に重要なのは「自分だけを優遇してくれ」というのではなく、システムの改善につながるための俯瞰した意見です。今回の件も自社だけの要望ではなく、署名や他団体の声を集めたことが(数だけではなく中立性として)大事なポイントでした。
両者がそれを諦めた時、サービスやシステムは硬直化し、形骸化した負の遺産になってしまうのではないでしょうか。バグを未来にそのままに残さないために、みんなで適切にユーザーの声を届け、フィードバックしていきませんか。
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