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「MBTI診断」の不足要素をプロティアンキャリア理論から説明しよう

心理テスト「MBTI」が若者世代に流行っている。こちら2024.6.8日経記事

自己診断なので「当たっている気がする」のは当たり前だ。自分で答えた自己イメージを、より豊富な情報量により、再説明しているわけだから。

若者ほど人気が高いのは、「人物像を説明するための知識・情報の量」が少ないから、と僕は理解している。MBTIの人物像説明を通じて、人を表現するための語彙の学習ができる。それ自体は良いことだ。「ストレングスファインダー」などの診断ツールはみんなそう。

今回とりあげるのは、その使い方についての注意点。MBTIのような「自己イメージの理解、言語化」は、キャリア構築に必要な要素の半分以下でしかない、という話をする

「アイデンティティ」と「アダプタビリティ」

「プロティアン・キャリア理論」は、アメリカで1970年代に提唱され、日本では2019年から法政の田中研之輔教授が現代的アレンジを発表。環境変化の大きなタイミングに合う理論だ。この中心にあるのが「アイデンティティ」(自分自身)、「アダプタビリティ」(環境適応)、の2概念:

「アイデンティティ」=自己認識・・・ 価値観、興味、目標、長所短所、などについての自己理解。自分らしさの核。

「アダプタビリティ」=適応力
・・・ 変化する環境や新しい状況に適応する能力。学習能力、柔軟性、ストレス回復力(レジリエンス)、人的ネットワーク構築力など。環境の変化に柔軟に対応し、自らのキャリアを主体的に形成していく力。

アイデンティティはスタートラインとなり、アダプタビリティが成功を持続させる。

タイトルの「MBTIに欠落する要素」の1つめは、後者の「アダプタビリティ」だ。MBTIは、「アイデンティティの一部」は言語化してくれるだろう。しかし「アダプタビリティ=適応力」抜きには、何もなしえない。

「相互作用」

さらに現実のキャリアは、これら 2 要素が相互に作用し合うことで構築される。

  1. 「アイデンティティ→アダプタビリティ」への作用: 自分の目的があるから、実現のためにチャレンジできる

  2. 「アダプタビリティ→アイデンティティ」への作用: チャレンジし、新たな経験を得て、新しい自分を発見する(アイデンティティの更新)

  3. この無限ループ

つまり、MBTIも相互作用が起きてからが真のスタート。

第一の自己理解: MBTIでも自己理解の本でも何でもいいから、自分のやりたいこと、を言語化してみる。

第二の自己理解: やってみて、どうなったか? その結果(=たいてい失敗)を受けとめて、そこからどう適応していくか?
 

本当の自己理解とは、行動&適応の後からはじまる。

自己分析ツールは、自己理解の出発点として有用。しかし真の成長は、実際の行動に移し、その結果を振り返り、言語化するプロセスの中にある。そこで、診断が教えてくれる「強み」を様々な状況で活用することだ。

結論:行動しよう。その結果を振り返りながら、自分のアイデンティティを言語化していこう。言語化の際に、MBTIでの表現・語彙は役に立つと思う。MBTIを使うならその目的で使うといいと思う。

・・・

この話は、社会学の「主体と環境との相互作用」とも共通する。田中教授のルーツである社会学で重要な概念。個人の変化は社会構造を変え、社会構造が個人を変化させる。社会とはそんな相互作用の産物だ。

・・・

こうして自分と環境との相互作用の中でキャリアを積んでいく中で、「キャリア資本」が蓄積されていく。キャリアを「資本」として分解する発想が、同理論のもう一つの大きな特徴となる(後で少し書きたい)

(トップ画像は「構築されたもの」という選定理由←とってつけた)

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八田益之(「大人のトライアスロン」日経ビジネス電子版連載中)
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