やがて男の5割が生涯無子になる未来
少し前に日経のこの記事で生涯無子率が話題になりましたが、
27%が生涯無子というようり、もっと衝撃的なのが、男の生涯無子率がもうすでに4割近くになっているということの方です。このままいけば、やがて5割の男は生涯子無しで人生を終えるだろう。
それについて、プレジデントの連載で書きました。お読みください。
生涯無子率に関しては、以前noteにも書いてますが、そもそも2017年に上梓した拙著「超ソロ社会」においても、独自に試算したものを出しています。
ざっくりいえば、その時の試算とほぼ変わらず、生涯未婚率+10%が生涯無子率になります。言い換えれば、未婚率があがりすぎているので日本の無子率が高まっているということです。
日本の無子率は世界一だが、その大部分を占めているのは未婚率が高いため。つまり、出生が増えない原因は婚姻減であることがはっきりとわかります。少子化対策で子育て支援のことばっかり政府は言うけど、深刻なのはそっちじゃなくて未婚率の方であると言っているのはそういうこと。
こちらのAERAのインタビューでも答えていますが、結婚した女性は今でも1980年代と同じくらい2人以上り子どもを産んでいる。なんなら、3人以上の子どもを産んでいる比率は1970年代のベビーブーム期より多いくらい。
未婚といっても、毎度いうように、「結婚したくない・する必要性がない・しないと決めた」という選択的非婚に無理やり結婚を強要する必要はない。そういう人たちは独身のまま生活を楽しんでくれればいい。
しかし、問題は「結婚したいのにできない」という不本意未婚の人たちで、20-34歳の若者のうち4割がそれに該当する。
大きな課題は若者の経済的環境の問題ではあるが、それと同時に大きな問題は、かつてのお膳立てにかわる結婚環境の問題でもある。
何度もいうが、婚姻増にはマッチングアプリなんか何の役にも立たない。あんなものは恋愛強者の男がヤリモクで恋愛弱者の女を捕獲するためだけの便利なツールでしかない。もし、この婚姻増加への救世主として、マッチングアプリ業者のくだらないプレゼンによって補助金なんて出すようなら官僚も地に落ちたといわざるを得ない。絶対に意味ないのでやめてほしい。
とはいえ、伝統的お見合いがそのまま復活することはない。地域のお節介おばさんが仲をとりもつなんてこともない。昭和のように、部下の仲人をやることが誉れだった時代には戻れないし、職場のお誘いなんてすぐセクハラ扱いされるので誰もやらない。
しかし、このお膳立てがなければ、自力婚ができない恋愛弱者かつ不本意未婚のままの4割は永遠に結婚できない。それどころか、このままいけばこの不不本意未婚の割合が6-7割に増えるだろう。
「別にそれならそれでいいんじゃない」と割り切れるのは未婚女性の方で、不本意未婚の男子はいつまでもグジグジする割にはちっとも行動しないで、ただただ年齢を重ねて限界結婚年齢の40歳を超えていく。
芸能人や芸人が40歳すぎて初婚できるのは、彼らには一般人にない莫大な資産があるからであって、アンガールズ田中が結婚できたからって、それと自分とは関係ない。
お膳立てを求めるのは恋愛弱者男が多いというのもうなづける。
しかし、女性の方は、望まぬ恋愛をするくらいなら、孤高の独身を選びたいようだ。
婚活の現場でも、女性は「好きになれる相手がいない」と嘆き、男は「こっちが好きになっても誰からも好かれない」と嘆く。結婚相談所に入ったとしてもそれは変わらないだろう。
そして、恋愛弱者は途方に暮れる。
私が、経済的問題をとりあげて、少なくとも若者が若者のうちに結婚できるような景気の底上げや賃金の上昇を実現しても、不本意未婚のすべては救えない。金があっても結婚できない層というのがいるからだ。給料があがっても、景気かよくなっても、そういう人たちは救えない。
ただし、結婚できないのは金の問題だといってる18-34歳の若者男性は24%もいる。この人達が仮に全員金の問題をクリアして結婚できただけでも、不本意未婚の男は半減できる。もちろんこの24%の中にも恋愛弱者中の弱者3割がいるので、実質24%のうちの7割、16%程度は救えるかもしれない。不本意未婚が4割から2割ちょっとに削減できる。
選択的非婚も含めた全体でみれば1割増程度にしかならないが、それでも婚姻数が1割増えただけで、5万組増になる。5万組追加になれば、2021年の婚姻は50万組だから55万組になる。55万組結婚すれば、発生結婚出生数は1.55だから、つぎの年に計算上は85万人子どもが生まれる。これが今の日本の限界とみるのが妥当だろう。
毎年85万人ずつ生まれてくれれば、多少とも少子化は減退できるが、解決はしない。そんなことはわかりきっている話。ただ実現可能な目標としてはここらあたりを設定して、完遂するために何をするかってことにシフトしていかないと、何も変わらない。
要するに、若者の給料をあげて、景気よくして、将来の不安をなくして、婚姻数の1割アップを図るということだ。少なくとも、少子化対策には効果が見込めない子育て支援一辺倒をやるよりよっぽど効果は期待できるだろう。
勘違いしないでほしいのは、やるべきは困窮した若者にバラマキすることではない。バラマキなんて一時しのぎでしかない。そうじゃなく、困窮する若者を作らない経済環境を整えることが政府の仕事。腹をすかせた人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えることである。というか、良い船や道具を提供することか。
金をくれくれ言っている人たちは本当にその金はただでもらえるものではないことを冷静に考えるべきです。政府は配った金は必ず回収する。つまり、今、親たちにバラまかれる金は、自分らの子どもたちに負担としてのしかかってくる。そうなると、自分たちの子ですら、特に息子の場合は「金がないから結婚できない」という状況に追い込まれる可能性もあるということです。