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ヘンカク旅〜「THE TOKYO TOILET」ツアーのもつ意味は?

先日、渋谷で開催された「THE TOKYO TOILET」ツアーに参加した。そのとき偶然にも日経MJの取材も入っていて、記者さんとカメラマンさんとも仲良くなった。記事には、私もずいぶんと写っており、特に2枚目の写真などは、トイレで手を洗う記念写真のようだ。このTOKYO TOILETツアーがもたらす、社会にとっての意味を考えたい。

「THE TOKYO TOILET」ツアー

記事では、「公衆トイレが観光スポットになっている。東京・渋谷で3月、トイレだけを巡るツアーが始まった。観光トイレツーリズムと銘打ち、集客につなげる自治体もある。臭い、暗い、汚いの3Kは過去の話、きれいで開放的な観光地に進化している」と、この日のツアーの背景を説明している。

この日のトイレツアーでは、有名建築家のデザインした個性的なトイレを巡る。次の写真は、隈研吾さんらしく木をふんだんに使ったトイレだ。

次のトイレも面白い。この場所には元々、古い公衆トイレがあった。「公園脇の一等地に公衆トイレなんてもったいない」と話していた場所に、見事なオープンスペースが生まれていた。これがなんと公衆トイレなのである。屋根の下の部分も含め、立派なイベントスペースにしか見えない。その奥に、まるでイベントスペースに付属したトイレがある感じだが、この土地全体が公衆トイレなのである。

地域の変革に関わる「ヘンカク旅」

これまで弊社は京都で、「スロージャーニー」を提供してきている。京都の「脱炭素ライフスタイル」の実践者を訪ね、対話的・共創的な関係性をつくることで、「地域の変革」と、同時に「自己の変革」を探求する旅である。地域も自己も変革する旅という意味で、「ヘンカク旅」と呼んでみたい。今回は、このTOKYO TOILETツアーを「ヘンカク旅」にできないかと思い、参加した。

「ヘンカク旅」のヒントは、映画「Perfect Days」の主人公、役所広司さん演じる平山さんのお仕事でもある、TOKYO TOILET掃除スタッフの「丁寧な仕事」からの学びにあるかもしれない。観光客が訪れることで、掃除スタッフの皆さんの誇りが高まり、街の美化が進むことにつながっているという。さらに、訪問者自身も、ここでの体験を通じて、公共空間をできるだけ綺麗に保ちたいと考える人になるだろう。こういった地域と訪問者の双方に変革が起きることを願っている。

ヘンカク旅の未来

これまでの観光業は、観光客がお金を落としてくれることだけを期待していた。これをあえて観光1.0と呼んでみたいと思う。次の段階が、観光客に関係人口になってもらい、何度も訪問してもらう。そのねらいはリピートでお金を落とすことである。さらなる期待は、移住の可能性ということになる。このように、関係人口、そして移住を期待する流れを観光2.0と呼ぼう。

「ヘンカク旅」は観光3.0をめざし、観光客の振る舞いそのものが地域の社会変革に直結するものをつくりたいと思っている。地域内で社会イノベーションに取り組む人がいたときに、その活動に地域外の人が直接・間接に関わることで、社会変革そのものが進展する、というつながりを生むのが「ヘンカク旅」である。

私自身の定義に過ぎないが、観光業はこのような進化を遂げているのではないだろうか。

  • 観光1.0:観光客がお金を落としてくれることだけを期待

  • 観光2.0:関係人口、そして移住を期待する流れ

  • 観光3.0:観光客の振る舞いそのものが地域の社会変革に直結する

あらゆる価値をお金に換算する発想に固執していては、長期的な価値を生み出す社会をつくることはできない。観光3.0の「ヘンカク旅」を通じて、お金ではなく社会インパクトを生み出す旅が、一人でも多くの人に伝わることを信じて。

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