【読書メモ】「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話」
備忘録として。一応、為替の専門家であると同時に欧州の専門家としてもやらせて頂いている身からすると作者の「バルファキス」というのは脊髄反射的に「超問題児」であるという想い出が強烈に残っています。そのラフなファッションとユーロ圏との対立を煽るような言動である種「ヤバい人」認定されていたのが2011~2015年だったと記憶します。とりわけ極左連合(SYRIZA)が政権を握り、国際金融市場を大混乱に陥れた2015年上半期、バルファキスは財務大臣だったわけですが、ユーログループを中座するなどの奇行が散々報じられ、まさに変人という目で見られていました。
その当時の彼を知っている向きからすると「普通の人だったのだ」と思わせるだけで価値ある1冊でありました。正直、途中に出てくる「借金なんか別に返さなくても良い」みたいな論調は「そういう国も確かにあるけど、ギリシャは違うだろ・・・」と思わざるを得ませんが、それを差し引いても経済・金融の一般教養を学ぶ図書としては十二分に面白いものだと思います。娘に語る体裁なので途中、やや冗長に感じる部分もありますが、それはそういう本だと割り切れば良いのだと思います。
この手の「語りかける」系の本はややもすると手抜きで寒い本が多いですが、しっかりとした知性に裏打ちされた著作であり、いつかこのような本が書ければ良いなと思わされました。