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ノーベル賞小説家の視点を取り入れてみると、子連れ近所時間が10倍楽しくなった

「遠くに行きたいけど、子ども二人連れては難しそうだな…」
そんな事を考えながら4歳と2歳の子どもを育てるワーキングマザー、ミノ(@mino3megu3)です。

我が家はいつもの週末は家から2キロ圏内20分圏内で過ごしていることが多いです。そして、いつも「ラクだけど、退屈だ」という心の声に蓋をするようにしています。いまだけ、いまだけ、と。

しかし、ある日、ご近所にいながら自分とは違う世界に生きている人の視点を知る時間「縦の旅行」という考え方に出会い、ラクだけど、退屈な近所をより楽しめるようになりました。今回は小さい子を育てているママが、ご近所遊びをしながら新しい刺激に出会う方法を自身の経験を混ぜながら、お伝えします。

いつもの図書館でいつも通り”時間をつぶす”

ゆっくりと絵本を、並べた後に、選ぶ我が子。

行楽シーズン真っ只中の3連休、私はいつもの週末と変わらず、家から徒歩10分圏内の児童図書館にいました。エネルギーが有り余る子どもたちと、自宅にいると、「家が壊れる」と思うような事態になるため、「本を借りる」という名目のもと、時間を潰しに行きました。

近所の児童図書館は、児童書だけが集められている小さな小さな図書館です。月2回以上は来ているため、特に目新しさを感じることもありません。ただただ、子どもたちが飽きないように会話をしながら、ゆっくりと、ナマケモノのように時間をかけてて手足を動かし、絵本を探すようにしていました。

児童図書館に、黒ずくめの男3人組がやってきた

幼児本エリア

すると、「ウィーン」と自動ドアが空き、20代前半の黒ずくめの男3人が入ってきました。耳や指にはシルバーのイカツイアクセサリーを付けて、ポケットにはタバコが入っていました。

児童図書館の館内にピリッとした空気が流れるのを感じました。ナマケモノムーブで絵本を探していた私も、何かあった時に子どもを守ろうと、ささっと娘に近づきます。

黒ずくめの男たち3人は、そんな私に気づきもせず、ノシノシと館内に入ってきます。そして、幼児エリアでは靴を脱ぎ、なんと、絵本を探し始めました。靴はお行儀よく揃えてあります。

首元のゴッツイシルバーアクセサリーをジャラジャラ言わせながら、腰を曲げて未就学児や、小学校低学年用の本のコーナーを歩いています。

リーダー格のような黒づくめの男が言います
「あいつら、新しい本よこせって、うるせぇんだよ」

一番ふとっちょの黒づくめの男が、すかさず
「へ〜。んで、どんな本がいいんだ、選ぼうぜぃ」

リーダー格の男の薬指には指輪がなかったので、歳の離れた弟のことを言っているのかもしれません。

リーダー格の男は
「なんか今、アイツラに”交通標識系”の絵本とかあったらいいと思うんだよなぁ。」

そう言って、黒ずくめの男性3人は館内に散らばってキャッキャと標識形の絵本を探し始めます。

3人の中で一番小さい黒づくめの男がいいました。
「これどう?」

「いや、もっと絵がほしいんだよね〜」

あれじゃない、ここじゃないなど言いながら10分ほどかけて、無事、”交通標識系”絵本が見つかったようです。

リーダー格の男性が言いました。

「お勉強系の本だけじゃなく遊ぶ系の本も欲しいんだよなぁ。ミッケとか、それ系」

その指示を受けて、2人の男性がまた遊ぶ系の絵本を探し始めます。

「俺っち、本気出して探していい?」

「お、ぐりとぐらあんじゃん〜!」

そんなふうにあーだー、こーだ言いながら、黒づくめの男達は、児童図書館では目立つ真っ黒な服装と、野太い声で会話をしながら、借りたい本を入れる図書館バックに30冊ほどの本を入れました。そして、貸出カウンターで図書カードを出し本を借りて帰っていきました。

黒づくめの男たちが帰ると、ピリッとしたハリのある空気はなくなり、いつもどおりのゆったりとした時間が流れ始めました。

地域を超える「横の旅行」ではなく、同じ通りに住む人を知る時間を

日常的に行っている児童図書館が、非日常のような空間になった時間を振り返りながら、私は「縦の旅行」をしたのかもしれないと思いました。

「縦の旅行」とは、小説家でノーベル文学賞受賞者のカズオ イシグロがインタビューで話していた、「同じ通りに住んでいる人がどういう人かをもっと深く知る時間」のことです。

温泉地や海外など地域を超える「横の旅行」とは対比する言葉になります。

俗に言うリベラルアーツ系、あるいはインテリ系の人々は、実はとても狭い世界の中で暮らしています。東京からパリ、ロサンゼルスなどを飛び回ってあたかも国際的に暮らしていると思いがちですが、実はどこへ行っても自分と似たような人たちとしか会っていないのです。

私は最近妻とよく、地域を超える「横の旅行」ではなく、同じ通りに住んでいる人がどういう人かをもっと深く知る「縦の旅行」が私たちには必要なのではないか、と話しています。自分の近くに住んでいる人でさえ、私とはまったく違う世界に住んでいることがあり、そういう人たちのことこそ知るべきなのです

カズオ・イシグロ (上記記事より引用)

私は、「縦の旅行」という言葉に出会うまで、「旅行」とは遠くに行かないと成立しないと思っていました。

しかし、今回、児童図書館の中での時間を通じて彼らの会話を聞きながら、同じ近所に住んでいながらも、いつもすれ違っているであろう、彼らの視点を学ぶことが出来ました。

彼らと私は年齢や価値観は違うかもしれませんが、子どもが楽しめる、新しいことを学べる本を選びたいという共通点も見つけることができ、小さな仲間が出来たような嬉しさを感じました。

「新しいことを知る」は楽しい、それは近所でもできる

「縦の旅行」という言葉を手に入れたことで、私は「今日は図書館で縦の旅行ができた」と思えるようになりました。図書館で黒づくめの男3人を観察していただけかもしれませんが、まぁ、いいのです。

いつもの公園、図書館、スーパーと代わり映えのない場所でも、興味を持ち意識を向けることで、自分が全く知らない世界を生きている人たちを知ることができる、そんなことに気づける時間になりました。

子どもが小さく、遠くへの移動が簡単ではない今、遠くに行く「横の旅行」ではなく、近くにいる多様な人を知る「縦の旅行」を。

家から2キロ圏内20分圏内で、これからも、新たな旅行スタイルを楽しんでいきたいと思います。


「縦の旅行」をやってみようと思うママパパへ
今回は、児童図書館(安全な場所)にいたので、子どもといっしょに遊びながらも、他の方との会話に意識を向けられれたのだと思います。パパママ達が子どもと一緒に「縦の旅行」をする際には、意識が分散しても大丈夫な場所や時間帯がいいかと思います。

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