女性起業家が増えていくには、「資金」と「ケアのインフラ」が、まず先にあること
「私ばっかり・・・なのよ!」
公園でママたちが集まり、日々のストレスを発散しているときに、よく耳にする言葉だ。
土曜日の朝、地元にある小さな公園で、子供を見ていた5人ほどのママたちの声が私の耳に入ってきた。
女性たちは口々に日々の家事や子育てで感じている「私ばっかり○○している!」という不満を口にしては、次々にうなずいている。そして、散々話してスッキリしたのか、手をふって解散。笑顔でベビーカーを押しながら帰路についていた。
女性起業家に投資マネーが増えていく
話は変わるが、世界を見てみると、パンデミックのさなか、起業する人が世界的に増えているという。
そして、日経の調査では、日本の主要VCの半数が、SGDsやフェムテック市場の伸びに期待して、女性起業家への出資を増やすと回答。女性起業家に今後、投資マネーが集まりやすくなる環境が広がるという。
しかし、投資マネー増えたとしても女性起業家が増えていかないと、社会は変わっていかない。
冒頭の「私ばっかり」というコメントにあるように、心理的にも、時間的にも「やらなくてはいけないこと」で頭がいっぱいになりやすい女性たちだからこそ、今回は、女性が挑戦しやすい環境とはどのように実現できるのかについて考えてみた。
女性たちは、女性起業家が少ないことで、不利益を受け続けている
そもそも、なぜ、女性が起業側にいたほうがいいかと言うと、それは社会の様々な場で、女性に不利益をもたらしているからだ。
例えば、シートベルトは男性の体形を元に設計されており、交通事故では女性の方が重傷を負いやすい。
iPhoneのサイズは、女性が片手で持てないサイズであることも多いし、アップルウオッチには人口の半分が経験する生理周期など女性特有の数値の把握が履かれてもいいはずなのに、そのような機能は最初から入っていることはない。
新しいサービスをつくる側にいるのが男性だけだと、どうしても企画段階から女性の視点を取り込むことは難しい。(日本経済新聞朝刊2021年2月8日付)
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO68855410V00C21A2TY5000/
私自身、子育て世代になっての1年を振り返り、社会を“つくる側”に女性がいないことで、遅れているな、不便なままだなと感じることに日々多く直面する。
保育の現場や、支援施設ではまだまだ紙を使った申請プロセスがほとんどであり、習い事の送迎マシーンになっているのも、多くは女性だ。
そして、そんな女性たちで、冒頭出だしたコメントにあるように、「私ばっかりやっているのよ・・」という声が漏れている。
では、どうしたらいいのか?
その一つの答えを、女性初、黒人初、アジア系初の米副大統領となったカマラ・ハリス氏が話していた。彼女は、女性起業家、いやすべての起業家に「資本」だけでなく「ケアのインフラを提供すること」が必要であり、それが新しい資本主義、#インクルーシブ・キャピタリズム を再創造 するために必要だと語っていた。(Forbes Japan 2021年10月号より)
多くの人にとって、育児や介護のケアサービスは事業を築くための懸け橋となる。
米国では、高速インターネットを整備するのみならず、育児・介護サービスの拡充にも取り組んでいるという。
そうすることで、女性たちが自分の時間をしっかり持てること、そして必要あれば資本を手に入れられることで未来をつくる側に回れるようになっていくと語られている。
「資本」と「ケアのインフラ」の両輪での環境整備
環境によって人は、どんどん変化し、出来ることが増えていく。だからこそ、「資本」と「ケアのインフラ」がある環境で、女性起業家の活躍の場を広げていこうとする取り組みは、とても理にかなっていると私自身感じている。
なぜなら、私自身、身近なことでそのような変化を感じることがあったからだ。私は1歳半の息子に、「本が好きな子になってほしい」と、それまで全く絵本を手にしなかったのに、息子に大きな絵本ラックを買った。
すると、息子は「絵本のある環境」を手にしたことで、「絵本を読む習慣」が身についていったのだ。
女性起業家を増やすための施策についても同じような順番であることが大切だ。「起業するために、ケアのインフラを使う」のではなく「ケアのインフラがあるから、起業できる」
日本でも、男性の育休が義務化されたり、ベビーシッター補助制度が広がったりと「ケアのインフラ」は少しずつ広がっている。
このような積み重ねによって、近い将来、「ケアのインフラがあるから、起業できた」そんな会話を、公園にいる女性たちから聞くことができるかもしれない。私自身、そんな未来に向かっていきたいと考えている