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忠誠から差別化の時代へ

1月30日、大手自動車部品メーカー曙ブレーキが事業再生ADRを使って再建を目指すと発表した。

トヨタがみずからを移動の総合サービス会社と再定義したように、完成車メーカーは自動化や電動化の流れの中、大きく戦略を変えている。

完成車メーカーが次世代領域のパートナーとして選ぶ顔ぶれは、IT企業や先端技術に強いコンチネンタルやボッシュといった大手外資部品メーカーである。一方、国内の既存サプライヤーはガソリン車の枠組みにとどまり勝ち。曙ブレーキADR申請の背景には、日経が報道した「既存のサプライヤーと完成車メーカーとのすきま風」がある。

完成車メーカーの開発を支える直接ティアワンから末端部品メーカーに至るまで、「縦のすり合わせ」は、かつて自動車製造の神髄であり、国内自動車産業の強みだった。したがって、これまでの部品メーカーは、完成車メーカーを頂点とする系列の中で、過剰なまでの適合をし、忠誠を誓って生きてきた。

しかし、この戦略は完成車メーカーの戦略が変わったいま、非常に危うい。車の作り方が「縦のすり合わせ」からドライなモジュラー型に変化したため、縦の忠誠よりも真の差別化が求められる時代になったのである。

実はこの現象は、日本の会社社会にもあてはまる。伝統的に日本のホワイトカラーは、就職ならぬ「就社」をし、終身雇用という暗黙の了解のもと、組織へ忠誠を誓って仕事人生を生きてきた。会社に固有の文化をどん欲に吸収し、忖度に長け、過剰なまでに適合した猛者が出世する図式はどの大企業にも当てはまったのではないか?

ところが、これからはどうか?終身雇用は神話となりつつあり、大企業からの転職も珍しくない。会社はある日外資系になるかもしれないし、トップは外から招へいされた「プロ経営者」に変わるかもしれない。すなわち、会社への過剰適合は、個人の生き方として時代遅れになりつつある。

では、何がキャリアの指針になるのか?ちょうど部品メーカーに求められるように、忠誠よりも差別化が求められる。実際、技術に自信のあるサプライヤーであれば、完成車メーカーは「下請け」ではなく「対等なパートナー」としてエコシステムに迎え入れる時代である。同様に、腕に自信のあるホワイトカラーは会社と対等に渡り合い、外からも求められる人材となるだろう。

今後は、技術の特色を出せるか否かを軸に、国内部品メーカーの淘汰が進むだろう。相似形で、ホワイトカラーのキャリア観を大きく更新する時期に来ていると思う。

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