邦人渡航 出入国制限緩和の動き
政府はビジネス目的の渡航の緩和について、ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドからの入国者の緩和措置を取る方向性に動き出していますが、邦人の渡航に関してもベトナムへのビジネス渡航をチャーター便を利用した試行の位置づけで再開し、COVID-19感染拡大対策として出発前(=日本国内)でPCR検査を実施する方針です。
現在のところ海外渡航は自粛中との理解ですが、COVID-19感染拡大に伴い一時帰国していた多くのインドネシア在留邦人はすでに現地に戻り始めており、入国の際に必要なPCR検査証明書の発行を求めて連日の如くトラベルクリニックである私のところに来院されます。海外渡航が政府容認のもとに再開されるようになればその勢いは加速することが予想され、さらなる検査体制の充実化が望まれることになるかと思います。政府は「出入国者のみを検査するPCRセンター」の設置を検討しているようですが、ようやく自治体や医師会などで「ドライブスルー」や「ウォークスルー」によるPCR検査施設の設置が始まったばかりなのに、渡航者用の施設をどこに設置するのでしょうか?実際には私のところにも厚生労働省や日本渡航医学会から、一日にできるPCR検査数についてアンケート調査が来ましたが、入国の際には英文検査証明書が必要であるのと、他の感染症予防のために渡航ワクチンも積極的に勧めていただきたいので、ある程度は渡航医学を専門とする施設に限定していただきたいと思います。
日本貿易振興機構(ジェトロ)のまとめでは、ベトナムには2018年12月時点で1800社を超える日系企業が進出しており、日本政府観光局の統計で同年の日本からベトナムへの1日平均の訪問者数は約2300人でした。また今回のCOVID-19のパンデミックにおいても、ベトナムでの感染者は300名弱に抑えられ死亡者は一人もいません。感染者とその周囲の環境を徹底的に隔離し、充実した検査体制を整えているベトナム政府の対策が功を奏していると思われます。私は2007~2009年まで在ベトナム日本大使館での勤務経験がありますが、2003年のSARSや私が在任中であった2007年の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の国内発生の際にも国家が一丸となって制圧に取り組む姿勢は目を見張るものがありました。
未だ国内の感染状況が落ち着かない状況の最中にインバウンド・アウトバウンドの推進を図るのは賛否両論があるかと思いますが、世界的な経済活動再開のはじめの一歩としてベトナムを選択したことは無難な判断だったのではないかと考えます。