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リユースは持続可能なのか 伝統工芸の担い手という課題

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

リサイクルというと何を思い浮かべるでしょうか? ペットボトルやアルミ缶の廃品回収など、私たちの生活に密着したものが真っ先に出てきます。最近ではリユースという言葉も頻繁に見かけます。ネットサービスのヤフオクやメルカリなどで使わなくなったものをやり取りしたり、古着や家電などの買い取り販売を行っているお店も多くあります。

さらにはアップサイクルという言葉も出てきています。リサイクルはどちらかというと資源としての再利用をすることで、限りある資源やエネルギーを効率的に利用する観点が強いです。アップサイクルはそれも意識しつつ、新たな付加価値をつけることで新たな商品として世に送り出すことを意味しています。着物を洋服や小物にしたり、インテリアとして別の商品にするような例があります。

よりその取組みを広げた「クリエイティブリユース」という世界も生まれているようです。

リユースの拠点は世界各国で広がっている。「廃材を集め、分類し、陳列する。何かほしいと思ったら、その拠点を訪ね、必要な材料を選んで自分の手で作る。大人も子供も自由に利用でき、ものづくりを楽しんでいる」。そう語るのは岡山県倉敷市で「クリエイティブリユース」の拠点「IDEA R LAB」を運営する大月ヒロ子さんだ。

クリエイティブリユースは直訳すれば「創造的再利用」。企業や家庭から出る廃材を使って新たなモノを作り出すことを指す。単なる再利用と異なるのは、モノの価値を高める取り組みである点だ。使い古したタオルを雑巾に使うなどの再利用は「ダウンサイクル」という。

大月さんは1980年代から国内外のリユース拠点を調査・訪問してきた。米国の子供のための博物館に廃材ショップがあり、誰もが楽しそうに廃材を選び、多種多様で個性豊かなモノを作り出していく様子を見たのがきっかけだ。「クリエイティブリユースは新しい時代を切り開く、ダイナミックで開放的な力に満ちあふれている」と感動を覚えた。

日経電子版

大量消費を支える大量生産は、売れ残りによる廃棄などのロスが多いです。特にファッション業界では大きな課題として認識されており、今ではどこの高級ブランドでもリユースを意識した取り組みがなされています。

グッチを傘下に持つ仏ケリングが協働するのがウガンダのブランド「BUZIGAHILL(ブジガヒル)」だ。先進国で不用になった衣類は南米やアフリカ諸国などに送られているが、多くは利用されず古着の山として放置されている。不法投棄が環境汚染の原因となるほか、地域の伝統的な繊維産業が圧迫され、衰退するなどの問題を引き起こす。

この南北問題への啓発を込め、ブジガヒルは先進国から送られた古着を使ったシャツやパーカーなどを作り、欧米などで販売する。日本でも高島屋がクラウドファンディングで古着を募集し、その古着で作ったブジガヒルの衣類を「報酬」として出資者に送る試みを始めた。10月には高島屋各店でも期間限定で販売する。

日経電子版

上記の記事でも少し指摘されていますが、「伝統的な繊維産業が圧迫され、衰退する」という点はとても気になります。

私はお茶を嗜んでいるため、同年代の男性に比べると着物を着る機会が多いです。着物はリユースを扱っているお店が実店舗でもオンラインでも多く、素晴らしいものがそれこそ破格で手に入る機会も多くあります。男性着物の場合はジャストサイズでないと着られないので(おはしょりがなく丈調整ができないため)、合うものに出会ったときは「これは運命だ!」と思ってついつい手を出してしまいがちです(笑)。

大切に受け継がれてきた着物を受け継ぐというのは尊いことではあるのですが、一方でリユース一辺倒になると伝統工芸としての技を受け継ぐ職人の仕事がなくなってしまう危険性も孕んでいます。

これは着物に限った話ではないのですが、サスティナブルを考える上で貴重資源の有効活用は真っ先に取り組むとして、職人の技を次世代に残すための新品の需要も担保しなくてはいけないでしょう。全体のエコシステムの持続可能性にも目を向けるということです。

私個人としては、気に入った同年代や若い世代の作家さんの作品をできる限り購入することを心がけています。ちょうど同世代の方が代替わりのタイミングを迎えて家業を承継することが多くなってきていることもあり、応援の意味を込めて末永くお付き合いしていきたいなと思っています。


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タイトル画像提供:nonpii / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI

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