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中国SNSを席巻した淄博烧烤。中国インバウンド獲得のヒントがここに

中国の一般の観光客はまだ日本に入国するのが難しい現在ですが、今後来るであろう中国からのインバウンド爆発を集客する方法は予習しておくべきかも。

ということで今日もちょっとマニアな中国での情報を紹介しましょう。中国通のみなさん、ここ最近中国SNSで「淄博烧烤」って言葉がバズっていることをご存知ですか?

■淄博烧烤ってなに!?

「淄博」(zibo)とは山東省の三線都市。戦国時代では「齐国」の首都で、新中国では工業都市として活躍していて現在の人口数は約470万です(地方都市なのに、日本人からすると人口は多いですかね)。地図はこちら↓

そして「烧烤」はBBQのことです。

出典:huxiu.com

庶民的な食べ方で中国全土で流行ってます。特に夏になると、店の中だけでなく路上までテーブルを置いて、串を食べながらビールを飲んで最高のコミュニケーションの場にもなります。中国のネットでも、「一回烧烤にいけば話しあえないことはない。一回がダメなら二回いけば絶対大丈夫」といわれるほどです。

肉や野菜を焼くだけですが、広い中国ではその土地の食材や味付け、人情や個性に影響されて様々な地方スタイルが生まれました。

東北ではチチハルBBQや錦州BBQが有名で、西側には西安BBQ、南には成都BBQや貴州BBQ、海南BBQなど。そして中部には個人的にも気に入っている「老北京炙子烤肉」や徐州BBQなど、それぞれの個性が溢れて非常に面白い食文化だと思います。これを詳しくは需要が有ればまた今度noteで紹介します。

今回激バズっていた淄博BBQは、職人が焼いた9割程度出来上がっている串をそのまま出して、最後の1割は客がテーブルで自ら焼くというスタイル。串でそのまま食べても良いですが、特色としては、小さいグレープのようなものとネギと肉を一緒に巻いて食べるのが主流です。

(画像:Weiboから)

そしてSNS上では大都市の若者が3-4人の友人と淄博の小都市に行き、バーベキューしてビールを飲む、といったものがたくさんアップされていてBBQモチベーションが上がる投稿を目にします。

(画像:Weiboから)

↑実際にまとめられた関連投稿。

どれほど人気になったかと言いますと、連日トレンドジャックをするほど。例をあげれば

(画像:Weiboから)

↑淄博行きの列車は満席で立つしかなく、16時半から店が行列、ほとんどの店が予約不可状態、食材が売り切れる店も続出です、の動画

(画像:Weiboから)

↑肉を焼くスタッフの求人には、平均月収が3500〜6000元の町なのに1.1万元の月収を出してもなかなか雇用確保が難しい(ほどの需要がある)

(画像:Weiboから)

↑左は全員が連日の過労で3日間店休みますとのお知らせ、右にはお肉が売り切れたからまた来てくださいとのお知らせ。

現地の人もちょっと面白かったです。ローカルだけどあまりにも人気でとりあえず観光で来る人に食べてほしいという書き込みをたくさん見かけます。

(画像:Weiboから)

↑淄博市民がこんな一枚に「自分も食べたいだが、こんなに観光客がいるのに、匂いを嗅ぐことで我慢するわ」と。

■地元も政府も笑っちゃうスピード感で神対応

急増の観光客に対し、地元の家具屋も非常に協力的な姿勢を示しました。

(画像:Weiboから)

↑IKEAみたいな中国の家具量販大手では、ゴールデンウィークが終わるまでに、淄博で泊まることで困ってる人に仮眠できる場所を提供するとのお知らせも出ました。

コロナ感染からほぼ完全復活している中国国内では、最近”夜间经济”(夜の経済)や“地摊经济”(露天経済)が注目されています。各地方自治体が積極的に後押ししているとの記事もよく見かけます。

そのなかでも「淄博BBQ」はSNSで超バズりました。お店や関連企業だけでなく、淄博市政府も素早い動きで、”BBQ列車”や”BBQバス”の運行を開始。市内のルートの再計画や収容する店舗の建設なども行っているほか、“淄博烧烤”を商標登録したというから恐れ入ります。

「一日に5万人が淄博駅に到着」「毎日1万本以上の串を焼き、テーブルを500回以上片付ける」「一晩で牛1頭が売れる」など景気の良い数字がたくさん。実際、3月だけで淄博へ観光で訪れた人は480万人を超え、前年比134%増、観光収入も60%増となっているとのデータが出ています。

また、そろそろ来るゴールデンウィークの連休では、最も人気の旅先となっていて、宿予約大手の美団のデータによると4月10日時点ではホテルの予約量はすでにコロナ前の2019年の800%を突破し山東省一位となります。

■地方都市x抖音・小红书 の可能性は無限大か

ボクの体感でも、バズってるトピックはWeiboで見つけるのが日常ではありますが、体験とか旅行、地方でのトレンドなんかは抖音で触れることもかなり増えました。また、旅行や具体的な情景について詳しく見たいときは小红书(RED)といった形で使い分けることが多いです。

(※抖音(douyin)は中国でのtiktok、REDは中国版Instagramのポジション)

そして今回の淄博烧烤もショート動画で一気にバズりました。

(出典:DT財経)抖音での検索数。激ハネする前の50万回も十分すごいのですが、ピークは250万回。。

ChatGPTの登場で検索する機会も激減してきている毎日ですが、何かあったらGoogleやYahooよりも、インスタやYouTubeで検索するのは日本でも進んでいると思います。中国の場合はちょっと前まではWeiboでしたが、最近は抖音や小红书がそのポジションにありますね。

また、今回の「淄博烧烤」についてのバズりも、若年層だけでなくかなり広いターゲット層に刺せている。データによると、関連話題に積極的に参加する利用者の中では、抖音では18~40歳で75%以上、そのうちわけは18~23歳、24~30歳、31~40歳の3つの年齢層で、それぞれの29.74%、23.29%、23.1%。意外にも、40代と50代もそれぞれ8.73%と6.31%が興味を持っています。男女も男性45% : 女性55% とバランスが均等だったとのこと。

ショート動画やREDの情報に触発されて、地方都市に弾丸旅行でバズリ箇所を回る旅行というのが若者中心にトレンドとなりつつあると分析もされています。例に出てたのはかなりエクストリームな週末の淄博旅行のケースで

日曜の朝5時に到着。朝市、塘沽文化創意園、淄博市博物館、海大楼、富力万達広場、バーベキューと道端の屋台小ワンタンを食べ、シェアサイクルを借りまくり、1日2万歩。出発時間の午後11時までスケジュールびっしりこなして戻る。

個人的にはこういう旅行できないタイプなんですが、まぁわかる気もします。これは極端な例かもしれませんが、中国は国が大きすぎるので回らなければいけない都市や場所もたくさんあるから毎週末を大切にしないといけないのかも。

若者の週末旅行についてのコメントでは「街の薫りや雰囲気や生活感も大切」とありました。 "例えば、浙江省の泰州はずっと行ってみたいと思っていました。まず小さな街で、人情味が強く、しかも食べ物が北とはもっと違うので、ぜひ体験したいです "と。

日本の人からは理解できないほど国が大きく多様な人が住んでいて、言語もカルチャーも食生活も違うので中国人が国内旅行するだけでも非日常を体験することが可能というのはコンテンツとして魅力がありますよね。

そして中国の地方都市でできたことはきっと日本の田舎でもできるでしょう。どういったモノがウケるかの研究とテスト、バズらせ方、街全体での受け入れへの協力ができれば“インバウンド爆集客”も夢ではないと思いますよ!

(参考資料)


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中国情報局@北京オフィス
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