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「手応え」を与えるサンドイッチ・フィードバックとは

良いフィードバックをもらえるととても嬉しい気持ちになり、やる気が湧いてきますが、一方で、フィードバックをもらってなんだか悲しい気持ちになったり、凹んだりすることもあります。

そのような経験があるからこそ、他の人のアイデアにフィードバックするときは「良いフィードバック」になるよう気をつけています。そのなかで「良いフィードバック」に気をつけているなかで、「サンドイッチフィードバック」を自分なりに解釈して用いていることがわかりました。

今日は、相手に「手応え」をしっかり与えるようなフィードバックのあり方について考えてみたいと思います。

「効果的なフィードバック」に集まる注目

フィードバックのやり方の重要性はここ数年注目を集めています。「ダメ出し」という言い方を耳にする機会がどんどん減り、「フィードバック」という言葉に変わってきました。

2017年に発売された『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』(中原淳著)が発売され、話題を呼びました。

本書では「フィードバック」とは耳の痛いことを伝える技術であるとし、シチュエーション別・タイプ別のフィードバックの仕方が描かれています。ぼく自身、この本から得た知識を用いて、フィードバックをしたことがあり、大変な苦労を伴いながら確かな成果がありました。

ダメ出しならぬ「ヨイ出し」の普及

フィードバックを、「耳の痛いことを伝える」いわば「効果的なダメ出しの技術」と捉えるものもあれば、その逆の視点も表れています。

アドラー式勇気づけ子育てを普及する熊野英一氏は、「ダメ出し」と「ヨイ出し」を以下のように区別し、相手を勇気づける技術として「ヨイ出し」に注目します。

ヨイ出し: 長所・持ち味・強みに焦点を当てた対応をすること
ダメ出し: 短所・欠陥・弱みに焦点を当てた対応をすること

他者を勇気づけられる人と、他者の勇気をくじく人(日経DUAL)

サンドイッチフィードバックの落とし穴

この「ダメ出し」と「ヨイ出し」を交互に用いる方法として「サンドイッチフィードバック」と呼ばれる方法があります。

この方法は効果的に用いればうまくいくとぼくは感じています。ただし、世の中で一般的に普及しているのは以下のような流れでしょう。

❶褒める 「いいアイデアだと思うよ」
❷ダメ出しをする 「でもさ、ここがだめだよね」
❸もう一度褒める 「色々言ったけど、いいアイデアだと私は思うから、頑張って直してきてね」

この方法をとると、結局ダメ出しされた印象しか残らず、❶と❸の褒めは、相手を嫌な気持ちにさせないための予防線に過ぎないことがすぐに相手にバレてしまいます。「いいアイデアだと思う」「前提として君のことは信頼している」「がんばってくれてありがとう」といった枕詞がついていれば、そのあと雑なダメ出しをしてもいい、というわけではないと思います。

効果的なサンドイッチフィードバックのあり方

サンドイッチすべきは、「褒め」と「ダメ出し」ではないのです。まず、アイデアへの感謝とアイデアのポテンシャルを言葉にすること、そのうえで課題を提示し、あなたのアイデアを追加すること、さらに、アイデアが追加されポテンシャルが開花した姿を描いてみることの3階層をつくるとよいとぼくは思っています。

感謝とポテンシャル:アイデアへの感謝とアイデアのポテンシャルを言葉にする
課題の提示とアイデアの提案:懸念点や課題を仮説として提示し、アイデアを追加する
未来の姿を描く:アイデアを通じて、ポテンシャルが開花した姿を描いてみる

❶感謝とポテンシャルの提示

まず、アイデアを出してくれたこと、たたき台をつくるための時間と労力をさいてくれたことへの感謝を述べます。そのうえで、そのアイデアが持っているポテンシャルについて、言葉を描き出していきます。

たとえば「アイデアを考えてくれてありがとうございます!たたき台としてすごく高いクオリティでびっくりしました」というように、感謝に加えて素直な感想を述べます。このときに「クオリティが高い」と感じてなかったら言ってはいけません。こういう感想は正直さが重要だとぼくは思っています。

加えて、そのアイデアのポテンシャルを提示します。「このアイデアが実装されたら、XXXにも活用できそうだし、XXXにつながると思いました」と、アイデアが実装されたら現実がどう変わるかを妄想し、言葉にします。

このときのポイントは、相手が提示してくれたアイデアにはどのようなポテンシャルがあるのかを必死で考えることです。あれこれ頭の中で探索し、相手はどのようなねらいをもってこのアイデアを出したのかを、一歩踏みとどまって想像します。

大抵、フィードバックを反射的にすると、「俺が思ってたんと違う」というダメ出しになりがちです。その反射を抑制するために「まず感謝」「まず褒め」という風習が浸透したわけですが、それもパターン化された方便になっているきらいがあります。

フィードバックの前に一歩踏みとどまって、相手の立場に立ち、相手がアイデアを考えてもってくるまでのプロセスを想像します。さらに、もしも自分がそのアイデアの実装に参加するとしたら、実装されたさきでどんな風景が見たいのか、想像してみます。この妄想プロセスをとるだけで、フィードバックの質はぐっと変わるはずです。

❷課題の提示とアイデアの提案

ここからは、そのアイデアを実装する上での課題を提示し、その課題を解消するアイデアを提示してみます。

この時に重要なことは、フィードバックする側の姿勢です。無責任に「こうするといいよ」ではなく、アイデアを出したからにはそのアイデアの実装を一緒にやる覚悟をもってフィードバックをすることです。もしくは相手と合意できるまで対話をし切る覚悟をもつことです。(余談ですが、その責任を負い切ることが大変だから、ぼくは審査員のような仕事が苦手です)

アイデアを一緒にかたちにしようとする姿勢があるかないかで、こちらの身の入り方も変わります。

❶で提示したポテンシャルがもしも是だとしたら、そのアイデアのどういう点に課題があるのかも明らかになっていきます。課題解消のアイデアも追加して、コメントを返します。

❸未来の姿を描く

ここでは❶の反復になりますが、もしもこのアイデアが、❷で提示した課題が解消されて実装されたとき、どんな未来になるか、ワクワクした気持ちを伝えます。それを伝えることで、相手と一緒にワクワクできることを期待します。

フィードバックとは「手応え」のこと

ビジネス用語でのフィードバックは「ダメ出し」の言い換えにしかなっていなかった側面があります。

一方、身体性認知科学では全然別の観点で使われています。それはひらたくいえば「手応え」という意味合いです。

たとえば、最近では触覚フィードバックの技術が注目を集めています。VR空間の中で実際に物を触ったように感じるように、グローブで物を握る手に圧や抵抗をかけます。そうすることで、実在感を演出できるのです。

あるいは、ボクシングのミット打ちの例を出してもいいかもしれません。ボクサーが強いパンチを打てていると感じるためには、ミットを持つ人がいい音を響かせる必要があります。スパン!ズドン!といういい音が響くと、「自分のパンチは切れてるぞ!」という自信と勇気を与えることができます。

このような「手応え」を与えるフィードバックを、アイデアに対して行うとさきほどのような3つの手順になるのではないでしょうか。

よかったら試してみて、このフィードバックの考え方にフィードバックをしてもらいたいと思っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。いただいたサポートは、赤ちゃんの発達や子育てについてのリサーチのための費用に使わせていただきます。