【日経世界シェア】成長市場での存在感が日本企業の課題
2019年の世界市場の調査結果が公表
8月13日付の日本経済新聞にて、2019年の世界市場における74品目の「主要商品・サービスシェア調査」が公開されました。本調査は、日経ビジュアルデータとして、2017年から主要市場のトップシェアをどこの国が担っているのかについて、1位から5位のシェアを示してくれています。
本NOTEでも、過去2年にわたって、本調査の結果を使って世界市場における日本企業の立ち位置について考察してきました。
2017年の結果では、日本は米国に次ぐ存在感を持っていることがわかりました。90年代以降、失われた30年と言われつつも、しっかりと時代の変化に対応し、高い市場シェアを維持してきました。
しかし、同じ品目でみたときに2018年では大きく変化がありました。たった1年の間に中国に追い抜かれてしまいます。また、品目毎に対前年比で市場成長率を観たところ、日本企業のシェアが高い品目は縮小傾向にあることが多く、反対に第4位につけている韓国企業は成長している品目でシェアを獲得している傾向にありました。
たったの1年で大きな変化の在った日経世界シェアですが、それでは2019年はどのように変化したのでしょうか。
徐々に地盤沈下が進む日本とドイツ
2019年の結果について、各国が占める順位を得点化したものが下図になります。得点は、各品目で1位を占めている国に5点、2位で4点、3位で3点、4位で2点、5位で1点を付けています。図の結果からは、2018年の結果から引き続き、中国が米国に次いで世界2位の位置に占めていることがわかります。しかも、2018年は180点だったスコアが、186点と伸びています。反対に、日本は168点から162点と減少傾向にあります。
3年での推移で言うと、中国は56点も向上しているのに対し、日本は18点を失っています。日経の調査結果からは、世界で最も存在感を増している国は中国であり、対照的に世界で最もシェアを失っている国は日本と明暗がはっきりと分かれています。
日本と同様に、世界市場でのシェアを落としているのはドイツです。製造業が強みであることの多い日本とドイツは、中国と韓国企業との競争で厳しい状況に立たされています。しかし、金融や情報通信、医療系では、中韓の存在感はまだ強くありません。特に、この分野で競争優位を発揮している米国や英国企業は市場シェアの伸ばしています。
成長市場での存在感が低下している
次に、対前年比での成長率で74品目をみてみましょう。対前年比で5%以上の成長をしている品目を「成長品目」、5%未満で正の値をとる品目を「微成長品目」、0%以下の品目を「低迷品目」として分類しました。
この結果からは、中国が成長品目で高い市場シェアを有しているのに対して、日本は低迷品目でシェアが高いことがわかります。日本企業が安定期や減少期に入った伝統的な品目では高いシェアを維持しているものの、比較的新しく成長余地の大きな品目では競争優位を築けていません。ここから、新しい産業を生み出すことに課題があることが読み取れます。
世界3位の地位を維持できるのかが課題になっている
現在は、日本企業が世界3位の競争優位を維持できていることがわかりました。しかし、この状況をいつまで維持できるのかは不透明なところか大きいです。中国が世界2位として確固たる地位を築いていますが、つい10年ほど前までは、これだけの存在感を出す企業は数えるくらいしかありませんでした。それをおもうと、まだ存在感は薄いものの、インドやインドネシアといった新興国がこれから10年で急浮上してくる可能性もあります。特にインドは、日本のお家芸と言えた二輪市場でシェアを伸ばしています。日本企業の存在感を維持するには、新たに出てくる成長市場にどれだけ投資できるのか、新しい大企業をどれだけ創ることができるのかが重要となるでしょう。