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キャッシュレス時代の価格戦略を考える


マーケティングにおいて、Price(価格)は重要なテーマ

 私は、大学時代は数学を勉強していて、会社に入った後に、マーケティングを勉強しました。そして、その時の、一つの感想は、「マーケティング用語」って、カッコいいでした。
 すれまでの数学の「最大値」「極小値」「発展解」などの言葉と違い、「3C」「4P」「SWOT」などのマーケティング、ビジネス用語にワクワクしたのを覚えています。
 さて、今日はその中の4Pについて、考えたいと思います。4Pとは、以下の4つの単語のPの頭文字で、マーケティングで、この4項目は重要な検討項目です。

  1. Product(製品)

    • 提供する商品やサービスそのもの

    • 考えるべきポイント:

      • 品質は適切か

      • デザインは魅力的か

      • 機能は十分か

      • パッケージングは適切か

      • ブランドイメージは良いか

  2. Price(価格)

    • 商品やサービスの値段設定

    • 考えるべきポイント:

      • 原価と利益のバランス

      • 競合他社との比較

      • 顧客が支払える金額か

      • 値引きの余地はあるか

      • 支払い方法の選択肢

  3. Place(流通)

    • 商品やサービスを届ける場所や方法

    • 考えるべきポイント:

      • 販売チャネルの選択(店舗、オンライン等)

      • 在庫管理の方法

      • 配送方法と期間

      • 販売地域の選定

      • アクセスのしやすさ

  4. Promotion(プロモーション)

    • 商品やサービスの宣伝・販売促進

    • 考えるべきポイント:

      • 広告方法(TV、SNS、チラシ等)

      • セールスプロモーションの内容

      • PR活動の計画

      • 口コミ戦略

      • ターゲット層への効果的な訴求方法

そして、今回は、このPrice、それも「顧客が支払える金額か」について、以下の記事で考えてみたいと思います。

観光客向けの2重価格って、どう考えたらよいのか?

 この記事では、姫路城が、混雑抑制のために、観光客の価格を高くする、「2重価格」を設定しようとしている記事です。

 これは、まさに4PのPriceの問題です。まぁ、普通のマーケティングでは、お客様が買う気持ちの中で、どこまで高くできるかを考えたりします。ここでは、ややその逆の問題で、どこまで高くすれば、ある程度お客様の買いたい気持ちが減り、しかし別なお客様は買いたいと思う、そのような価格を考えたいということでしょう。

ところで、「観光客」の支払い方は?

 ここで、問題になってくるのは、今までの4PのPriceは、実際に「キャッシュ」を使うことを前提にしています。
 観光客、特に訪日の外国の観光客は、キャッシュを使うでしょうか?多くの観光客は、クレジットカードに代表されるキャッシュレス決済をすることが多いのではないでしょうか。
 実際、私も観光地では、キャッシュレスです。この記事「姫路城が二重価格を検討 英国は13倍差でも観光客納得」の中で、ニューヨークのメトロポリタン美術館の例が出ています。メトロポリタン美術館は、4400円と記述されていますが、ちょうど、過日に私が入場したときのクレジットカードの明細があります。私は、メトロポリタン美術館にキャッシュレスで入場したのです。

メトロポリタン美術館の入場金額

これは、2人分の明細なので、現地通貨では60ドル、日本円換算で9,186円の明細です。実際、私は、この金額で悩むことなく、メトロポリタン美術館に入場しました。確かに、これをキャッシュで60ドルを支払うのであれば、高いと思ったかもしれません。このように、人は、「キャッシュ」と「キャッシュレス」で、価格に対する印象が違う、または価格を気にする、しないの違いがあるのではないでしょうか?

 これを姫路城のテーマである、観光地で観光客の2重価格を考える場合に応用してみましょう。おそらく、姫路城は、今までの「キャッシュ」前提の金額設定で考えているのではないでしょうか?この「姫路城が二重価格を検討 英国は13倍差でも観光客納得」の中では、2重価格設定を、2倍から3倍の、2000円から3000円にすることを検討しているようですが、「キャッシュ・レス」だと、それが高いと観光客が考えるかは、やや疑問が残りますね。

ちなみ2重価格の告知場所も重要

 ちなみに、メトロポリタン美術館の場合は、入場料はチケットブースに表示があるのですが、それはチケット購入直前で、その価格を直前で見た方が、チケット購入列から離脱する方は、私が並んでいる時にはありませんでした。理由は、明確で、チケットブースにすでに5~10分並んでおり、もう少しで、入場可能になるといった瞬間には、価格の安さ・高さよりも、早く美術館に入場したいという気持ちが上回るからではないでしょうか?

 つまり、観光地の入場料を、2重価格にして、混雑を抑制しようとする場合には、その価格を観光地に来る前に、伝える必要がありそうです。

ニューヨークの地下鉄は、すでにICカードもいらなかった

 このキャッシュレスの流れは、本当に急速に広まっていますよね。このメトロポリタン美術館に行くときに、当然ニューヨーク市内の地下鉄に乗ったのですが、ニューヨークの地下鉄、もうSUICAなどのICカードが不要になっています。自分のクレジットカードで、そのまま乗れるのです。

 実は、ニューヨークの地下鉄も高価で有名です。

実際、私のクレジットの明細を証拠として掲載しておきましょう。私の時には、円安が進んでいるので、440円です。

ニューヨークの地下鉄料金のクレジットカード明細

2.9$を、クレジットカードで支払う時には、何も考えていませんでした。以前だったら、切符売り場の機械前で、どのチケット買おうかと、価格と自分の移動回数を考えて、考えたものですが。

キャッシュレス時代のPrice戦略は、興味深いテーマ

 多くのマーケターは、Price、価格を考える時に、その支払い方の違い、つまり、「キャッシュ」と「キャッシュレス」で、金額から受け取る印象が違うことは、あまり考えていませんでした。しかし、これだけ「キャッシュレス」が浸透すると、キャッシュレス時代の、Price戦略を、研究しないといけないのでしょうね。
 

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本間 充 マーケティングサイエンスラボ所長/アビームコンサルティング顧問
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