見出し画像

DXは経済効果からCO2削減のフェーズへ

こんにちは!グローバルでDXの調査・支援をしている柿崎です!
過去2回の記事で、私が海外のDXのリーダーが集まるイベントに参加していることを書きました。今回は、3年前の2018年3月、ロンドンのイベント(CDO Summit London)に参加した際の体験を書きます。ただ、今回はイベントでDXのリーダーから聞いたことではなく、イベントのために「移動」した体験について書きます。

タクシー業界だけでなく鉄道業界も破壊するUber

イベント前日、私はロンドンのヒースロー空港に到着し、電車でホテルがある市街地へ移動しました。多くの日本人は、日本で空港に到着したら、電車で移動すると思います。日本人の感覚では当り前の移動と言えるでしょう。

翌日のイベント当日は雨で、フロントスタッフにお願いしました。
「タクシーを呼んでもらえますか?」
その瞬間、学生のアルバイトとおぼしきフロントスタッフがまるで私を化石でも見るかのような表情で言った言葉が今でも忘れられません。
「はあ?
昨日どうやって空港から来たの?
「電車です・・・」
「空港からこのホテルまで、Uberだけで電車より安く来れるのに。すぐにUberのアプリをスマホに入れなよ!」

帰国の際はホテルから最寄駅までUberを使いました。ただ、往復の乗車券をすでに購入していたので、最寄駅から空港までは電車で移動せざるを得ませんでした。そして、Uberのドライバー(ちなみに親のBMWを借りてお小遣い稼ぎしている学生とのこと)にダメ押しされました。
「どうしてこのまま空港までUberで行かないの?そんな重い荷物を持っているのに、どうしてわざわざわ乗り換えて高い電車を使うの?」

日本にいると、Uberなどのライドシェアはタクシー業界を破壊していると思われがちですが、実態は鉄道業界をも破壊していたのです。日本で空港から市街地へ電車で移動する常識から考えると衝撃的な体験でした。

DXはテック企業への対抗手段と言われるが・・・

DXの目的は、Uberのようなテック企業に対抗するためです。この波はどの業界にも起きています。これまで規制に守られていた業界も危機感を感じています。日本のタクシー業界が、アメリカで多くのタクシー会社を経営危機に追い込んだウーバーへの警戒心が強くなるのは当然と言えます。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26I1Y_W6A520C1TI1000/

米配車アプリ大手のウーバーテクノロジーズは26日、日本で初めて一般の運転手が客を有料で同乗させる事業を京都府京丹後市で始めた。乗車できるのは一部地域に制限され、運転手や車両は国に登録が必要で、がんじがらめのスタートだ。背景にはタクシー業界の強い抵抗がある。世界で事業を拡大する同社にとって、日本は狭く険しい道となる。

上記は2016年5月26日の記事ですが、タクシー業界の抵抗はその後も続き、今ではこのような記事を見かけることがなくなりました。

テック企業への対抗だけでは業界や社会の課題を解決できない

「DXの目的は、Uberのようなテック企業に対抗するためです。」と先ほど書きました。私もこれまで多くの講演や取材でそのように言ってきました。経済効果から考えると、特に海外のテック企業、いわゆるプラットフォーマーが日本市場を独占することは脅威であり、既存の業界が抵抗するのは当然と言えます。

ライドシェアの目的がCO2削減となればタクシー業界は抵抗できるのか?

これまでテック企業への抵抗は正当化されてきましたが、そう言えない状況になりつつあります。
それは、日本政府が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする環境目標(カーボンニュートラル)を掲げたことです。各省庁は、報告書にしたがって税制改正やルール形成を進めます。自動車のCO2排出量は日本全体の15.9%を占めており、環境負荷の低減を図るためにはライドシェアが当り前になってくることが予想されます。

以下は緊急事態宣言中の2月とある日某所のタクシー乗り場です。この停車しているだけのタクシーが排出しているCO2排出は無駄です。さらに、タクシーがお客さんを送った帰りのタクシーによるCO2排出も無駄です。データの裏付けがなくても、ライドシェアで削減できることは何となく分かるでしょう。
CO2削減が目的になった場合、タクシー業界の抵抗がこれからも正当化されるのでしょうか。

画像1

鉄道業界は対抗する必要がなくなる

以下の記事は、欧米の主要都市で地下鉄やバスなどの利用者が減っている、という2018年11月5日の記事です。その一方で、公共交通機関は一般に二酸化炭素(CO2)排出量削減に貢献するとされ、今後の都市政策に影響を与える可能性がある、とも書かれています。CO2削減が目的になった瞬間、Uberが鉄道業界を破壊するとは言えないことが分かります。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37361710V01C18A1SHA000/

米ニューヨーク市の地下鉄利用者は2年連続で減少し、ロンドンやパリでも減少傾向が出ている。ライドシェアの利用が一因と指摘する声があり、台数規制の動きも出始めた。公共交通機関は一般に二酸化炭素(CO2)排出量削減に貢献するとされ、今後の都市政策に影響を与える可能性がある。

さらに、以下の記事です。目的がテック企業への対抗ではなく、CO2削減になると、業界の垣根を超えた解決方法が生まれます。鉄道業界にとって、輸送業務だけを目的にすると海運業界は競合ですが、CO2削減が目的になった瞬間にお客さんに変わるという例です。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ164LQ0W0A211C2000000/

日本郵船は2021年から、日本製自動車の海外輸送の一部ルートを船と比べて二酸化炭素(CO2)の排出が少ない鉄道に切り替える。中国大陸を横断する列車を使い欧州地域に車を運ぶ。各国でCO2の排出削減徹底が進むなか、対策に積極的な荷主を取り込むため重油エンジンを使う船の活用を減らす。脱炭素の流れが物流のあり方を変え始めている。

本当にロンドンで全てUberを使えば良かったのか?

経済効果ではなくCO2削減を目的にすると、私がロンドンで空港から市街地への移動に鉄道を利用した選択は正しかったと言えます(意図的ではなく、たまたまの結果オーライですが・・・)。
私たち個人個人が消費者としてCO2削減のための選択が求められる時代になりました。
そして、日本の組織にもCO2削減のためのDXが求められる時代になりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?