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旅行者としてのエコ消費

出張で飛行機に乗りホテルに泊まる機会も少なくない仕事なので、それ自体が「エコ」ではない、と言われてしまえばその通りの生活を送っている。そういう中でいくつか、エコ消費の観点で、旅行者として心がけていたり旅に関する企業の取り組みとしていいな、と思うものをあげてみたい。

鉄道を利用する・早く安くエコに

高速鉄道網がかなり整備された欧州では、「飛び恥」という言葉もあるように、飛行機をなるべく使わず、エネルギー効率のよい鉄道を使おう、という運動も出てきているようだ。話題となった16歳の環境アクティビスト、グレタ・トゥーンベリ氏なども、この運動に関わっているとのこと。

そういう流れに呼応してか、もともと欧州の高速バスネットワークを運営しているFLiXBUSが、鉄道版のLCCともいえるFLiXTRAINの運行をドイツを中心に始めている。

機会があったのでベルリンからケルンまで乗ってみたのだが、客車は中古で古めかしいものの、座席にUSB付きのコンセントを新設し、無料のWiFiが使えるようになっている。写真の右下、黒いケーブルが刺さっているのがUSB電源だ。

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ただ、機関車だけは新しいもののようで、スピードはかなり速く、ドイツの高速鉄道ICEが3時間台で走るところを4時間台で結んでいることは、ちょっと驚きだった。しかも、料金も安い。まだ運行開始後数か月のタイミングだったが、車内は満席。単にエコであるだけでなく、利用者の利便性をしっかり確保しているところが、FLiXが支持を受ける理由なのだと思う。

また、ICEやTGVなどの欧州の高速鉄道も、フライトのチケットと同じで需要が高いときには高価だが空いている時間帯にはとても安くなり、自分のニーズに合わせた利用がしやすい。この点は、どう乗ってもあまり値段が変わらない日本の新幹線とは大きく違うところ。この点が解決されたら、「4時間の壁」と言われる、新幹線よりも航空機の利用が好まれる所要時間の壁も、もう少し長い時間(距離)まで拡大できるのではないか、安い分納得し我慢できる時間が延びるのではないかと一ユーザーとしては思う。料金設定に弾力性を持たせ需要を平準化させて、空席率の高い列車を少なくすることができるなら、エコの観点でも望ましいことではないだろうか。

ホテルの備品をなるべく使わない・使わせない

連泊する場合、エコカードをベッドに載せるなどして意思表示しなければベッドリネンを交換しないホテルは、日本でもすっかり普通になって珍しくなくなった。ただ、歯ブラシやカミソリなどといった備品が普通に備えられているホテルは、ビジネスホテルのレベルでもまだまだ多い。これが欧州のビジネスホテルだと、歯磨き用のコップが置いてあり、備え付けのボトルに入ったハンドソープやシャンプーとタオル類があるだけで他には何もない、というのが普通になっている。バスルームには「何かお忘れでしたらフロントにお申し付けください」と書いてあって、必要がある人は歯ブラシなどをもらうことが出来る。

私も、歯ブラシなどは持参するので、ホテルに備え付けてあってもそういう備品類を使うことは通常はないし、不必要にそうしたものをもらって帰ることもしない。シャンプーやソープなどは使うけれど、ソープが固形の石けんだったらまず使い切れないし、チェックアウト後は捨てられることも多いだろうから、洗濯する下着のシャツなどでくるんで次の宿泊先で使ったりしている。そうすれば、水分を含んだ石けんでも旅行中の持ち運びに面倒がない。

また、タオルも、小ぶりなウォッシュタオルと、フェイスタオルのみを使って、バスタオルを使わないことも多い。風呂やシャワーを出る前に、身体をウオッシュタオルで拭いておけば、髪が短い場合などは、フェイスタオル1枚で十分全身を乾かすことが出来る。

トイレットペーパーを最後まで使う

自宅ではともかく、オフィスや商業施設、ホテルなどのトイレで、ペーパーを最後まで使い切る経験をされることは少ないのではないだろうか。これは、一定以下の残量になったら交換されてしまうことが普通で、しかも、ペーパー切れがないように頻繁に補充と交換がされている。結果としてどうなるかというと、バックヤードには、使い残しのトイレットペーパーが山のようにあり、従業員用のトイレでもなかなか使い切れない。中には廃棄処分されているものも少なくないのではないだろか。そういう光景を目にしたこともある。

この点で、東横インやスーパーホテルなどが、ペーパーの使い切りを始めていることにはとても好感をもっている。東横インで見かけるのは、2つあるペーパーホルダーのうち、ひとつは包み紙を取らないままでペーパーがセットされているのでこちらの方は包み紙を取らないと使えない。使いかけのペーパがなくなる前に新しいペーパーが中途半端に使われることがないよう工夫がされていて、これも好ましい行動を促すうまいやり方だと思う。もちろん、これでペーパーの購入量が減るならホテルの経営にとってもプラスになるのだから、意地悪く考えるならエコのふりをしたコスト削減、という見方も出来るだろう。

私の場合は、残り少なくなったペーパーは、ホルダーから外してベッドサイドにでも置いておき、それをティッシュの代わりに使ったりすることもある。そうしておくと、ルームメイドさんが持っていくこともまずないし、空いたホルダーには、もちろん部屋の清掃の時にペーパーをセットしてくれるので、足りなくなることはない。これで廃棄に回るペーパーの量を少し減らせているかな、と思うが、どうだろうか。

余談ながら、写真はケニアのホテルのトイレなのだが、ペーパーホルダーのないホテルのトイレは初めてだった(ケニアのホテルがみんなそうである、ということではない)。左側のロールが少なくなっているので、翌日にはペーパーが1個追加しておかれていた。

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悩ましい紙製のチケット・旅行書類など

これが一番悩ましいところだが、まだ今のところ、完全に紙から脱し切れていない。国内線のフライト程度ならチケットレスで乗ってしまうのだけれど、国際線の、しかも乗り継ぎなどといった旅程の場合、遅延で乗り継げず振替フライトの交渉をするといったトラブルは普通に起きる。そういう場合はカウンターの係員とやり取りをする必要があるのだが、この時にスマホの画面に表示させて、というのは、案外やりにくい。一定時間経過すると画面が消えてしまい再度パスコードを入れて表示させるとか、電池の残量を気にしなければならないとか、それでなくてもトラブル解決のために使わなければならない注意力・集中力が分散することはストレスだ。

また、上にも書いた通り、デジタル物は電源がないとダメだし、ちょっとテープを貼るといった融通が利かないことも、なかなか紙にとって代われない理由だと思う。それにも関わらず、リモワが手荷物タグをディスプレイに表示させるスーツケースを数年前から発売していて、これはとても意欲的な取り組みだ。

いい商品だと思ってはいるのだけれど、まだ実用の段階にはないかな、と感じる。手荷物タグには、経由地と行先・荷物の所有者を表示する標準のものに加えて、優先取り扱いや、ショートコネクション、取扱注意、重量物注意など、補助的に付けられるさまざまなタグがあり、これを電子タグで満たせるかといえば現状はまだ十分ではない、という段階だろう。発売から数年たつが、利用できるのがルフトハンザだけなのが変わらないのも、そういった事情の反映かもしれない。とはいえ、まだまだ課題が多い段階ながら、リモワが実際の商品にこの機能を組み込んでいることは、市場が出来るのを待つのではなく、市場を自ら作っていく取り組みとしてすばらしい。

少しづつ解決されていくとは思うものの、まだまだ紙の強さ・利便性が必要なのがこの領域。一方で、フライトのeチケット控えなどは、本当に重要な情報は1,2枚で済むのに、何も考えずに印刷すると5枚以上になってしまったりする。一気に紙をなくすというよりも、より少ない枚数で済ませられるような工夫を、まずしていくことが必要ではないかと思う。

何のためのエコか、を常に考える

いくつか旅とエコ消費について書いたが、突き詰めていくと、何のためのエコなのか、という問いに行きつく。単純に資源の消費を減らしたり二酸化炭素の排出を減らすことが目的ということなら、極端なことを言えば人間としての活動を停止することがもっともエコ、ということになりかねない。

また、心情的にはエコに思えても、大きな視点から見ると本当にエコ=環境保護につながっているのか、疑問を呈されているものもある。こうした点も、エコの問題を難しくしていると思う。

もちろん可能な限り環境負荷の低減を図ることは当然としても、資源を消費し、二酸化炭素を出してもなお、それを上回る価値を生み出せているのか。難しい問いではあるけれど、まずはそれを意識し、出来ることから取り組んでいくところがスタートだと思っているし、一旅行者として、それを考え続けていきたい。

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