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コーポレートガバナンスの「頃合い」は難しい

今年耳目を集めた企業不祥事事件の陰には、重いコーポレートガバナンスの課題がある:経験豊富で高名な社外取締役が過半数を占めながら、不祥事の拡大を食い止められなかった。結果、全取締役を対象に、株主が提訴請求に及んでいる。

この企業に限らず、せっかくコーポレートガバナンス・コードに沿って取締役の「形」を整えても、本当に実のある監督体制が取れているかどうかは、まったく別の問題だ。

自信を持ってYesと答えるためには、まず取締役会にふさわしい議題が挙がり、その上で執行側と監督側の間でかみ合った議論ができているかどうかを定期的に自己点検する必要がある。

実際、多様性を重んじて「新鮮な視点」を持ち込める社外取締役を迎えているものの、取締役会での発言と実際の事業との距離が遠すぎて、常に執行側は「貴重なご意見を参考にさせていただきます」で終わってしまうケースを見聞きする。どうしても社外取締役には社内事情に疎くなるハンディがあるが、執行側と監督側の双方で歩み寄る―執行側は社外取締役に必要な社内情報を提供し、社外取締役側は執行アクションに翻訳しやすいアドバイスを心掛ける―努力が欠かせない。

日々の社内事情には距離がある取締役会だが、もしも会社が危機的な状況に陥った場合、CEOを交代させるという劇薬を持つ。昨今、世界の有名企業で、業績低迷を背景にCEO交代ニュースが相次いでいる。執行側と監督側が有益な議論を尽くした上での解任であれば仕方ないが、一般に監督側のアドバイスがまったく受け入れられていなかったり、有益な議論どころかお互いが反目し合ったりする事例も多い。

社外取締役が「CEOのお友達」で占められ、監督の責任を果たせなければ、意味がない。その反対で、執行側と監督側の間に不信が高まり、ついにはCEO解任という究極の手段に至ることも、社内外に大きな混乱をもたらす不幸なケースだ。その間で、信頼と程よい緊張感を保ちながら、監督側が執行側へ有効な影響を及ぼすコーポレートガバナンスが求められている。

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