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ジョブ型?メンバーシップ型?模索は続く

JTC(Japanese Traditional Company)の人事制度といえば、職務内容が曖昧な「メンバーシップ型」だろう。その対極に位置付けられる「ジョブ型」の人材マネジメントは、専門性を磨けるメリットが大きく、社会的にも労働流動性を高める効果があるとうたわれている。メンバーシップ型が「人に仕事をくっつける」のに対して、ジョブ型は「仕事に人を当てはめる」とも解釈できる。

しかし、現場の人気はジョブ型の独り勝ちかといえば、そうでもない。雇う側も雇われる側も、ベストな人材マネジメントを求めて模索が続いている。

例えば、メガバンクを顧客とするコンサルタントの同僚によると、銀行の現場では従来型の支店長を頂点とするジェネラリスト養成型から、より専門性を磨くようキャリアパス形成の重心が明らかに変わっている一方で、働く側は必ずしも喜々として従うわけではないという。

個人の希望に応じて部署を異動できるように仕組みを作っても、情報技術に長(た)けた人材が必ずしもIT部署に移ってくれるわけではない。その心は、「いろいろな経験を積みたいのに、システムの人というレッテルを貼られたくない」。その結果、銀行は、専門性のある人材を中途採用に頼ることになるという。

確かに、自分の色をひとつに絞ることは特に若い世代には難しいし、世の中の動向がうつろいやすい時代、リスクにもなりかねない。メンバーシップ型の良さは、会社と働く人の双方で融通が利くという点だろう(反面、乱用につながる恐れはある)。

一方で、メガバンクが中途採用で専門性のある人材を採れるということは、まさしくジョブ型による労働流動性を表している。需要と供給のマッチングが成立すれば、双方に利益があるだろう。

結局、ひとつの組織の中でジェネラリストでも専門職でも選択できるような制度設計、すなわちメンバーシップ型とジョブ型のハイブリッドが究極の人材マネジメントかもしれない。実際、コンサルティング業界においても、ひと昔前はパートナーを頂点とするピラミッドにコンサルタント全員が属していたものだが、今は「データサイエンティスト」などピラミッドに属さない専門職が併存している。

ジェネラリストか専門性か?どちらを選ぶかは、昇進や転職のしやすさを左右するため、個人個人の自己責任と判断が求められる。

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