企業は何を外注する?中核・非中核の境界線は、見直しが必要
日本企業からの非中核業務アウトソース先として、ベトナムの存在感が増しているという。伝統的なBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は経理や総務などの末端オペレーションをコスト重視で外注するものだが、近年は単純作業のみならず専門的に踏み込んだ業務も「非中核」と位置付けられればアウトソースの対象になり得る。
私の属するコンサルティング業界が受け皿になり、最近はコスト低減のみならず、クオリティーに依拠した外注判断が多い。例えば、アウトソース先が税務の各国規制対応など常に最新の知識を持つことを担保できれば、業務品質も外注したほうが高くなり得るという意識が、グローバル企業を中心に浸透してきていると感じる。
一方で、企業にとって何を中核事業やオペレーションと位置付け、それ以外を非中核とするかという判断は、実は一筋縄ではいかない。環境や自社の戦略の変化によって、柔軟に見直していくことが求められる。
アウトソーシングと言う言葉がカタカナ語として海外から入ってきたためか、日本企業は何でも抱え込みがちで、自前主義が強い―すなわち、中核事業の絞り込みが不得手という自己暗示がある。しかし、実は日本企業は大胆に「外だし」をしてきたと結論できることもできる。
特に日本が伝統的に強い「ものづくり」企業の場合、製造以外は極端に言えば「非中核」と見なされた結果、営業やマーケティング、海外進出などを「餅は餅屋」と商社に大きく任せた歴史がある。その結果、総合商社は日本特有のセクターとして発展を遂げた。
ITについても同様のことが言える。最近お話を伺う機会があった外資系テクノロジー会社の幹部は、「日本はSI文化」と評した。IT分野でもゼネコンのようなインテグレータに一任し、リスクも取ってほしいのが日本企業だという。国産SI会社が日本で強くなった背景である。
しかし、今日、製造業にとっても営業やマーケティングが製造の「おまけ」ではないことはもちろん、ITからデジタルといった分野は、全社変革の推進力となる。これらの分野を外に丸投げすることは、決して会社のためにならないだろう。
歴史的な経緯と専門知識の偏在から是々非々で外部パートナーと協働することは必要だ。同時に、何を中核・非中核と位置付けるかという基準を明らかにし、経営陣が共通認識を持ち、常に更新することが求められる。