見出し画像

自治体がやるべきは婚活パーティーではない

「異次元の少子化対策」について今年年頭からずっと的外れだと言い続けてきているが、ようやく潮目が変わってきた印象がある。各自治体が、「少子化は子育て支援ではどうにもならない。婚姻数の減少が問題なのだ」という本質な部分に気付いてきているからである。

とはいえ、課題の認識はそれでいいのだが、その課題の解決の方向がズレている。地方の婚姻数が減少を食い止めるために婚活パーティーをしましょうでは根本的な解決にはならないのだ。

地方において「結婚したいのにできない」不本意未婚が増えているのは、「出会いがないから」だと短絡的に考えてはいけない。なぜ出会いがないかというと、そもそも若者が次々と都会へ流出してしまうからだろう。特に、地方で婚姻減の件は女性の流出が激しい。

なぜ女性を含め若者が流出するのか?それはそこに魅力的な仕事がないからである。婚姻減少の問題は、根本的には若者の人口流出の問題であり、流出してしまうのは地元の産業構造の問題なのである。

そこから目を背けて「婚活パーティーしましょう」とかやっても本当は効果はない。

見も蓋もない話をするが、民間のものでも婚活パーティーとかにやってくるのはロクなもんじゃない。結婚相談所に駆け込んでくるのも「最後の砦」としてやっくるので、いかに優秀な仲人であってもどうにもならないパターンも多い。

婚姻増をはかるには、結婚したいけどできないままある一定の年齢を超えてしまった人たちを救済するより、結婚するかどうか実感はないけど、「なんかこの人となら一緒にやれそうな気がする」と錯覚してしまう若い年齢帯に対するお膳立てが必要なのだ。

何度も言うが、日本に起きているのは晩婚化ではなく、結婚を後ろ倒しにしたがゆえの結果的非婚なのである。晩婚化なら後ろにズレても総婚姻数は減らないはずである。30歳くらいまでに結婚しておかないと、少なくとも結婚対象相手と出会っていないと、結婚しないのである。

1980年代までの皆婚時代の女性はほぼ半分が25歳までに結婚していた。1985年の初婚の中央値年齢が24.6歳である。だから、当時はクリスマスケーキなどと言われたのである。中央値が25歳を超えたのは1990年だが、2020年にはそれが28.5歳になってしまっている。それでも、結婚している女性のうち半分は29歳になる前に結婚している。しかし、それは総婚姻数が激減したからだ。結婚する女性の半分は今でも29沙才前で結婚している。
婚姻数が減っているのは、本来もっと結婚できていたはずの26-27歳あたりの懇意数が減ったため。その年齢までの間に出会いやお膳立てがないからである。

逆にいえば、樹木希林さんのいう「結婚は若いうちにしなきゃダメなの。分別がついたらできなくなるんだから」という名言の通り、25歳くらいまでに出会って恋愛脳でバグっていないと、30歳すぎたらいろいろ考えすぎてできなくなるってもんだと思う。

地方から若者が流出するといっても100%出ていくわけではない。せいぜい多くても3割程度。7割は残るのである。そして、その中には決していやいや残っているわではなく、地元が好きで残って仕事を頑張っている若者がいる。

地方がやるべきお膳立ては、そういう高卒などでも地元で就職した20代前半の若者に対するお膳立てだろう。かつて、それは企業がお節介をしていた。今はセクハラになるかに企業はできない。しかし、カタチを変えれば実現できる方向もある。

アイデアはこうだ。要するに、自治体による若者シェアハウスの運営である。

地方の自治体が、高卒以上の20代の独身男女だけ限定ではいれるシェアハウスを用意する。もちろんヤリモクの既婚者は入れない。家賃など昔の独身寮なみの安さにしてほしい。しかもオンボロアパートではなく、少しおしゃれな空間がほしい。プライベートな個室は完備しながらも、そこでは基本的にダイニング・リピンクは共有で、自炊をすることを条件とする。食材も提供する。入居男女はかならず、朝食や夕食時に顔を合わせ、協力して料理をし、語らう時間とする。

婚活パーティーのような短時間の接触では、恋愛弱者は恋にならない。なぜ、昭和の職場結婚があれだけ多かったというと、毎日顔をつきあわせて、一緒に仕事をする戦友でもあったからだ。人間は単純接触効果で、接触時間が長ければ長いほど好意が醸成される。あばたもえくぼになる。

シェアハウスの管理人には結婚相談所と提携して、やりての仲人おばさんをアテンドする。直接的にマッチングをさせようとするのではなく、マッチングの舞台を日常としてお膳立てして、そこにいる者同士で脳をバグらせればいいという話だ。そのためにも毎週なんらかのイベント企画が必要である。恋愛弱者はほぼ受け身体質だから。イベントがあって受け身でも参加せざるを得ないようにしないと何も始まらない。

シェアハウスのいいところは、日常生活での付き合いになるので、会社じゃないけれど、かつての職場縁のようなコミュニティが形成されることだ。

マッチングしたらとっと出てってもらう。が、もしそこで結婚までたどりついたカップルには、自治体から持参金を提供する。支給金ではない。持参金である。江戸時代にはふつうにあった結婚における敷金のようなものである。結婚しても離婚したら返してもらう。離婚しない限り一生返さなくていい。

そのうち第一子が生まれたりすれば、それこそ子育て支援と連動させればいい。何より、既にシェアハウスで一緒に暮らしたという実績があるので、「結婚したら違った」というのも少なくなるだろう。

また、本人が結婚できなくても、居住者同士のキューピット役を果たした十何には報奨金を出してもいい。そういう役回りの人間が必ず出てくるから。そしてそういう人は、本人はモテないけど、ものすごく活躍するから。

いわば自治体によるテラスハウスである。うまく運営できないなら私がコンサルしてもいい。どこか興味を持つ自治体があれば連絡してちょうだい。

公務員とかそんな適当な物件がないとかすぐ言い出しそうだが、完成されたものを最初から作るのではなく、未完成からはじめるでいい。たとえば「空き家や古民家をみんなの手でリノベーションして、少しずつ作って住むシェアハウス」という考え方でもいい。むしろ作っている間にカップルが誕生する。





いいなと思ったら応援しよう!

荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。