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STEAM教育を受けるべきは、デジタル教科書の導入について議論する大人たちなのかもしれない

はじめまして。
「産業界のデジタルトランスフォーメーションをAIと人の協調により実現する」株式会社ABEJAの岡田と申します。
この度、日経COMEMOのキーオピニオンリーダーとして参画させていただくことになりました。これからよろしくお願いいたします。


4月となり新年度がスタートしました。
今の新入生、新社会人の皆さんは、いわゆるデジタルネイティブ世代。
職業柄、私は、DX 時代における企業の在り方 、人間の在り方を考える機会が多くあります。
初めての投稿となる今回は、これからの人材づくりに関連してくるトピックとして、「デジタル教科書」をテーマにしたいと思います。


エピソード

私がコンピュータ に出会ったのは、10歳の時でした。
小学校にコンピュータ室というものができ、はじめてコンピュータに 触れ 衝撃を受けました。「なんだこれは。すごいものがある!」

一方で、私が住んでいた当時の名古屋には、小学生に対するITやデジタル・コンピュータに関する教育機会はほぼなく 、コンピュータに興味があっても、 学校教育を通じて技術を会得するのが難しいというのが実態でした。 しかし、「いつかこのコンピュータというものが当たり前のものになる」という直感を信じて、自分で試行錯誤しながらプログラミングの技術と知識を身につけました。当時 の同級生から相当変わっている奴と思われていたに違いありません。

90年代以降、スマホやタブレットの登場で、コンピュータはデジタル教育の支柱であり、より一般的なツールとなり、かつては「Nerd(変わり者)」 扱いだった、私のようなプログラミングを学んでいた人間を見る目が180度変わりました。


教科書のデジタル化

昨今では、小学校の教科書が改訂される24年度から、紙とデジタルの併用で本格導入されるといわれています。
しかし、視力が悪化する、肥満率が上がる、教育データの管理方法などのルールが統一されない、経済格差をどうするかなど課題の枚挙にいとまはありません。

デジタル教科書への全面移行に懸念を抱く学校が9割近くにも上るというデータもあります。

今回気になって過去の記事を検索したところ、2016年4月には20年度に導入を目指すとの記事もありました。

教科書のみに限らず、DXにおいては何事も、不具合が起きないか、という視点で議論が進められがちですが、デジタルだろうがアナログであろうが、不具合が生じることは起こりえます。

例えば、教育現場で起きている議論を社会や企業に置き換えてみると 、コンピュータは不具合を起こす可能性があるので、紙とペンで仕事を進める方針を決定した企業があったとすれば、皆さん、どう思うでしょうか?
現代では、デジタルがコアなインフラとなっており、デジタルを受け入れながらどのように活用をしていくべきかを考えるフェーズに入っています。

本質的な課題に向き合うべきで、そこにデジタルバイアスをかけてはいけないのです。


STEAM教育における大人の役割

特定の学問領域 であったコンピュータサイエンス は、デジタル表現やコンピュータというツールの普及に伴い社会にみるみる浸透していきました。 
こういった変化を受けて、国内外の多くの教育機関では、STEAM※教育と呼ばれる教育の概念が注目され推進されています。 

この度の投稿のテーマであるデジタル教科書の議論を受けて感じるのは、STEAM教育を受けるべきは実は子供たちではなく、デジタル教科書の導入について議論する大人たちなのかもしれないということです。

「デジタル教科書」を扱う子供たちは、生まれた頃からインターネットが身近にある「デジタルネイティブ」世代ですから、教育のツールである教科書がアナログからデジタルに変わっても順応できるでしょうし、スムーズに移行できなければ、米国やシンガポールをはじめとするデジタル教育の先進国に益々遅れをとってしまい 、子供たちがその代償を社会に出た後に払うことになります。

デジタルに対する固定観念や思い込みをなくし 、リベラルアーツに基づいて時代に即した本質的な課題にしっかりと向き合い、科学・技術・数学を使ってそういった課題を分析・解放することが求められています。

「デジタル教科書」の議論も然りですが、大人たちが見本となって、現代の子供たちにしっかりと背中を見せていきたいものです。



※STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた教育概念


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