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出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークの先にある働き方の選択肢

皆さん、こんにちは。今回は「アフターコロナの働き方」について書かせていただきます。

感染者数の傾向を見ると、まだまだ予断を許さない状況ではあるものの、日々の生活は徐々に日常が戻ってきました。ですが、「新しい生活様式」と言われるように、完全にコロナ前の状態に戻るわけではありません。アフターコロナにおいて、どんな働き方を想像していれば良いのでしょうか。

これからの働き方について考えていきます。

新型コロナウイルス禍で迎えた3年目の春。テレワークは大企業を中心に当たり前となり、私たちの働き方はコロナ前から大きく変わりました。オンライン会議の導入など企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、デジタル人材の争奪は激しくなっています。優れた人材確保のため「ジョブ型雇用」の導入なども相次ぎます。「男性版産休」を含む改正法の施行など、2022年度の働き方改革はどう進化するのでしょうか。

■これからの働き方の選択肢

まん延防止等重点措置が解除され制約が減っていく一方で、せっかく進んだ「働き方」が元に戻るのではないかと危惧する声が上がっています。

リモートワークの普及とともに、

  • 長時間労働の改善が進んだ

  • 副業や兼業など働き方の選択肢が増えた

  • 通勤のストレスから解放された

  • プライベートの時間が増えた

  • 育児や介護など仕事との両立がしやすくなった

など、個人の働き方という観点においてメリットを感じる人が多かったため、これが完全にコロナ前に戻ることを恐れている人は少なくありません。

「勤務日や勤務時間に柔軟性がほしい」「1週間のうち2~3日程度はリモートワークがいい」など、業務内容や社員の属性などによって異なりますが、多くの社員が働き方に「柔軟性」や「バリエーション」を求めています。

 これからさらに普及・定着が予想される働き方は以下の通りです。

  • 出社とリモートワークを組み合わせて働くパターン

  • リモートワークを基本的な働き方とするパターン

  • オフィスや外部のスペースを適宜移動しながら働くパターン

  • オフィス出社を前提としながら、働く時間が多様化する(時差通勤やフレックスタイムの導入など)パターン

どのパターンになるにせよ、多くの会社では、「全社員が一斉に集まって同じ時間に同じ場所で仕事をする」という従来のワークスタイルではなくなる可能性が非常に高いです。

アフターコロナにおいて、オフィス勤務や対面コミュニケーションは復活していきますが、誰もが同じ時間帯に出勤して同じ空間で毎日働くスタイルは、社員の声に耳を傾ければ傾けるほど、もはや成立しなくなるのではないでしょうか。

働く場所はオフィスや自宅だけでなく、サテライトオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペース、ワーケーションなど、バリエーションがますます増加していく傾向にあり、社員が多様な場所で仕事をすることで自分に合ったワークスタイルを構築しやすくなり、自分で主体的にキャリアを作っていくことにもつながっていきます。

一つの働き方に対してメリットデメリットそれぞれありますが、課題点だけに目を向けて、コロナ前の働き方に完全に戻そうとすると社員からの反発も大きく、離職など人材流出につながりかねません。特に、入社した時からリモートワークが基本のワークスタイルであった“リモートネイティブ”世代からすると、オンラインでも十分成立するような会議にわざわざリアルでの参加を強要されるような場面に直面した場合、ただただ不合理であると感じてしまいます。

社員が抱えている状況やニーズに合わせて、また、社員の個性や能力を活かすためにという観点で、それぞれが働きやすい働き方を模索し、選択し、そして実践していくための大きな転換期を迎えているのです。


■サイバーエージェントの事例

当社でも、完全にアフターコロナの働き方を確立させているわけではなく、模索中の状態が続いています。現在の働き方について簡単にご紹介しますが、以下の4つがポイントになります。

①リモデイ(週3日出社・週2日リモート)
→「週に2日はリモートの日」と定め、“リモデイ”という名前で運用しています。基本的には火曜日と木曜日をリモデイとし、部署毎にカスタマイズができるようにしています。部署特有の事情や、密を避けて他の部署と出社日が重複しないようにしたいなど、それぞれの事情を考慮して自由にリモデイを設定することができます。また、申請制でフルリモートを選択している人もいます。

②フリーアドレス化
→フリーアドレスの導入を進めており、毎日出社する度に固定の座席ではなく、オフィス内のカフェや食堂、リラクゼーションスペースなどを含め、どこに座って仕事をしても良いことになっています。オフィスの省スペース化はもちろん、自分のデスクを持たないことで身の回りの整理整頓が進み、社員一人ひとりのセキュリティ意識の向上にもつながっています。

③リモートボックスの設置
→こちらの社内の様子を見ていただくと分かるように、オフィス内のあらゆる場所に「リモートボックス」が設置されています。その数なんと300台以上。これは、リモートワークのメリットは大いに実感しつつ、ただ個別事情によって、「自宅では仕事にならない」「出社したとしても図書館のように集中できる場所がほしい」「オフィスでも周囲を気にせずオンラインで会議するスペースがほしい」といった声をもとに導入したものです。

④コラボレーションを生み出すオフィス設計
→リモートボックスがこれだけ社内にずらっと並んでいると、「一人で集中」したり「オンライン会議」をするといった用途で使用する人が一気に増えましたが、すぐ近くにちょっとした休憩や他の社員と雑談ができるようにカフェスペースの増設も進めました。“集中”と“休憩”をうまく組み合わせて生産性を高めることが目的です。
また、固定席ではないミーティングスペースを豊富に設置することで、社員それぞれが目的に合わせて自由に仕事をする場所を選択することができるようにしています。社員同士が偶然出会う機会を創出したり、コラボレーションを生み出すきっかけになるようなオフィス設計を意識することが重要です。

これらは現時点での働き方ですが、この先、さらに状況を見ながら新たな働き方の選択肢を増やしていくこともあると思います。

オフィス戦略はどうするのか。社内コミュニケーションがもっと活性化するにはどうすれば良いのか。
働く場所や時間問わず、あらゆる環境下で社員がさらに連携を深めながら業績に直結するパフォーマンスを上げていくにはどうすれば良いのか。

まだまだ考えていかなければならないことが山積みです。


■ハイブリッド型の働き方はどう進化するのか

多くの企業はテレワークと出社を組み合わせる「ハイブリッド」型の働き方を進める方針です。各社が工夫をこらすのが、オフィスのあり方。オンライン会議をしやすいように個室を導入したり、オフィスの混雑度を検知するシステムを導入したり。仮想オフィスで雑談できる仕組みを取り入れる新興企業も出ています。22年度はどんな特徴的なオフィスが登場するのでしょうか。

これからの働き方において、具体的にどんなことが進化するのでしょうか。いくつかポイントを挙げてみます。

①オフィスの在り方が進化
→リモートワークが進むことで、従来のオフィスの在り方は大きな変革を迫られています。「オフィス縮小」の動きが加速している企業もある一方で、「出社することの意味」を再定義している企業も出てきています。オフィスの価値を「共創」や「コラボレーション」、「イノベーション」の場として捉えている企業もいます。「集中できる場」としての活用、「偶発的なコミュニケーションを生む場」、「社員のエンゲージメントを高める場」としての活用をしている企業もいるでしょう。
それぞれの企業に合ったオフィスの在り方を考え、コンセプトを明確にした上で、社員に対してどんな働き方を推奨していくのか、しっかりと説明していく必要があるのだと思います。

②マネジメントの在り方やコミュニケーションの在り方が進化
→従来型のマネジメントスタイルは、ハイブリット型の働き方には適しておらず、自律的な人材育成の必要性が叫ばれています。リスキリングのための人事施策や制度が加速していることからも分かるように、デジタルリテラシーが低いと仕事の生産性の低下に直結してしまいます。
働く場所が多様化することで、社員同士のコミュニケーションに障害が生じたり、やりにくさを感じることは少なくありませんが、ITツールの活用やデジタルワークプレイスの整備など、各社のデジタル活用がさらに進んでいくことで、場所や時間の制約を超えて作業効率を高めることが可能になります。

③ワークスタイルに対する価値観が進化
→「働く」ということに対して、「やりがい」や「働きがい」、仕事の「効率性」や「生産性」、「創造性」や「独自性」などを追求していく傾向はますます強まっていくと思います。
働く場所に関係なく、日常生活のあらゆるシーンの中でシームレスに仕事をこなしていくようなスタイルや、仕事とプライベート(家事/育児/介護/趣味/副業など)の両立をさらに効率よく求めるスタイル、デジタル技術を活用して自分ならではのアイディアを発信したり実際に形にしたりするようなワークスタイルも増えていくことでしょう。

■“ハイブリッドワーク”の定義は広がっていく

ハイブリッドワークといっても、“オフィス”と“自宅”という、「場所」のハイブリッドとして定義されていることが多いですが、“本業”と“副業”といった「キャリア」のハイブリッドもあります。あるいは、リスキリングなどが加速することで、“営業職”と“クリエイター職”というような「職種」の垣根を超えて二刀流で働くようなハイブリッドもあります。

会社の雇用制度も“ジョブ型”か“メンバーシップ型”か、とよく言われますが、それぞれの良いところを取り入れたハイブリッド型の雇用制度に形を変えつつある企業も増えています。

こちらの記事にあるように、週3日出社というハイブリッドワークを導入しているグーグルのような企業でも、さらにオフィス環境などに投資をしていくという判断をしています。

つまり、これからの働き方を考える時に、「リモートワーク」か「オフィスに出社」か、またはその「ハイブリット」型かという論点だけでなく、その先の「オフィスの在り方」や「コミュニケーションの在り方」、そして「ワークスタイルに対する個人の価値観」の進化に伴い、これまで以上に働き方の選択肢がもっともっと求められていくはずです。

コロナ前は「オフィスに出社する」ことが当たり前で、皆同じ働き方をしていた状態(働き方はほぼ一択の状態)から、今は「複数の選択肢の中からそれぞれの企業や個人に合う働き方を選択する」という状態に変化しました。
今後は、それがさらに進化し、「二つの選択肢から一つを選ぶ」のではなく、「選択肢①と②を組み合わせる」「選択肢②と④を組み合わせて①は完全になくす」「社員や部署によって選択肢をカスタマイズする」というような、様々なバリエーションを持たせることが必要なのかもしれません。

既に「ハイブリッドワーク」を選択している企業でも、まだ確定したスタイルではなく、その最適なあり方を模索している状態です。出社とリモートワークの組み合わせも様々なパターンがあり、業種や職種などによってその比重も異なります。

●出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッドワーク
●リモートワークを前提としながら、各自が働く場所を決めるというハイブリッドワーク
●オフィスに出社する形を前提としながら、オンライン会議をメインにするハイブリッドワーク
●オフィスの役割を再定義して働き方を再設計する(目的に応じて場所を変える)ハイブリッドワーク


など、トレンドを追うのではなく、企業の経営戦略や事業状況、企業風土や社員の声などを踏まえて、それぞれの会社にとって最適なハイブリッドワークの形を見つけていく必要があるのだと思います。
そして、その形はコロナの長期化や、働き手の意志や価値観の変化を受けて、想像以上に選択肢が広がり続けていくのではないでしょうか。

今こそ、それぞれの企業がそれぞれのハイブリッドワークの最適な形を模索し、オリジナリティを存分に発揮していくタイミングだと思います。



#日経COMEMO #NIKKEI

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